インフレとデフレとMMT、または間接的財政ファイナンス

皆さまこんにちは、こぐまです。
実はTwitterでは「くま語」でツイートしておりまして、危うく実生活でも「…くま」と語尾にくまを付けてしまいそうなほど定番化していますので、今後はくま語でnoteも書かせて頂きますくま。
さて、「日本は長引くデフレが…」とか「日本銀行は2%の物価上昇率を目指して…」とか新聞含むメディアで目にすること多いくまよね。物価が下落するのがデフレ、物価が上昇するのがインフレ、それはみんな知ってると思う。デフレは悪で、適度なインフレこそ目指すべき大地?なんで物価が上昇することが良いことなの?なんとなく分かってるようで、理由を聞かれると答えづらかったりするんじゃないだろうかくま。今日はそれについて考えてみたいと思うくま。ちなみに今回の題名は、エリック・ロメール監督「木と市長と文化会館、または七つの偶然」っぽく仕上げましたが何の意味もございませんくま、単に語感が良かった。

インフレとデフレ

まずインフレとデフレをそれぞれ3つにパターン分けしてみるくま。
インフレの要因を見ると:
①輸入物価上昇
②需給ギャップ(需要超過)
③貨幣の信用毀損
対するデフレの要因は:
④輸入物価下落
⑤需給ギャップ(供給過剰)
⑥技術革新や生産移転

①と④が為替レートと絡めて議論されるやつくまね。②と⑤は経済学の教科書に載ってそうなやつ。そして③は新聞やその他メディアなんかでハイパーインフレに繋がるってストーリーで語られるやつ。そして⑥は今日みんなと一緒に考えてみたいテーマくま。じゃあ、インフレからデフレへ、①から順番に見ていこうくま。

①インフレにより円の貨幣価値が下がると円安になると言われるけど、為替レートは物価や購買力だけで決まるわけではないくまね。実際には逆で、円安による輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力が生じるわけくま。
円安誘導によるリフレでもって物価上昇率のターゲットを目指すみたいな話があるけど、それは僕たち国民にとって良いことなのだろうか?物価上がるだけで生活が豊かにならないならそれは否くまよね。

②国内における需要超過により需要曲線が右上方へシフトすることで財の価格が上昇する。教科書に載ってるやつよね。この場合、均衡取引量は増加するので経済は拡大しているといえるくまね。これは良いインフレと言えそうだくま。

③貨幣の裏付けとなっている国家の信用が毀損することによって貨幣価値が減価する。これは途上国でしばしば見られるハイパーインフレに繋がる可能性が高いくま。

日本においては今のところ③の可能性は低いと言ってよいと思う。有名どころで言うと藤巻氏などは、この③の危険性について以前より強く主張されているくま。③がどの程度のリスク要因かはまた別の機会に考えてみたいと思うくま。
望ましいインフレは当然②で、この場合は相応の賃金上昇が伴っているはずくま。所謂リフレ派が目指しているのはコレくまね。
日銀が続けている金融緩和策は②を目指しているにも関わらず有効需要を十分に創出できていない可能性がある。政府も含めて円高を牽制することにより①の緩やかな円安誘導を通じた多少の物価上昇はあるかもしれないけど、有効需要の創出は限定的なんじゃなかろうかくま。

次にデフレを見てみるくま。
④日本の20年来のデフレが円高あるいは輸入物価の下落によるものだと思う人いるくまか。為替レートが継続的に円高に進んではないよね。ドル円なんてハイレベルで見ると80-120円のレンジみたいなもんでしょ。それに輸入物価が下がり続けているというのも肌感覚としてないくま。

⑤たしかに有効需要が伸び悩んではいるものの、需給ギャップでデフレが進行したというのもしっくりはこないくま。消費者の嗜好変化や、消費旺盛なセクターの移り変わりは確かにあったけど、みんなが物を買わない、消費しない、といった20年間ではなかったと思う。となるとしっくりくるのは⑥なんくまね。

⑥はイノベーションとグローバリゼーションによってもたらされたデフレ、構造的デフレとも言われる、これが最もしっくりくる。中国を含む新興国の経済発展、人・情報・物の移動が活発になり、サプライチェーンが効率化を求めて長く長くなった結果、より良い財やサービスが低価格で提供されることになったくま。これは、確かに物価水準は下がっているんだけど、国民の効用水準を増加させてるので悪いことではないくまね。

インフレ・デフレそれ自体に善悪はなく、それがどういったタイプか、またその時経済が拡大し賃金が上昇しているか否かが重要なんくまな。
たとえ需給ギャップによりインフレが進行していたとしても経済が拡大していればそれはハッピーくま。各国中銀のインフレターゲットはこの状態を理想としてるくま。インフレが望ましいというよりも、適度なインフレをもたらす程度の健全な需要超過が経済成長にとって望ましい、ということになるんだくま。

ターゲット水準のインフレが達成されたとしても、それが通貨安・輸入物価上昇によるもので、国内の経済活動が拡大していなければ国民の生活は苦しくなるだけだくま。なんもいいことはない。
じゃあ、直近の日本の状況はどうなんだろう。国税庁の民間給与実態統計調査によると日本の賃金上昇率は過去10年平均だと前年比0.3%程度、平成29・30年度の直近2年は2.0%超えを達成してるくま。

賃金が上昇してる限りにおいては前述⑥のデフレは必ずしも悪い状況ではない。物価が多少下落していても、有効需要は消失しておらず、人々の経済活動が不健康な状態であるわけではないからくま。

リフレ的金融緩和政策の弊害

一方で、有効需要の創出という効果が出ない中での金融緩和継続は新たな問題を生む。それは資産価格の高騰くま。

これってまさにトマ・ピケティが21世紀の資本で指摘したポイントで、経済成長率を賃金上昇率に読み替えると分かりやすい。

長期的に見て資本収益率が5%程度、賃金上昇率が1-2%程度とのことなので、資本家はより一層裕福になり格差は拡大の一途を辿ることになる。まさに今ぼくらが見ている現実の世界そのまんまだくま。
これが現実、ぼくはこれを『暴力的な資本主義』と呼んでいるくま。

こぐまは市場資本主義の中心である金融市場で働いているし、資本主義を否定する気はさらさらないんだけど、今の金融政策は格差を助長しているにすぎないと強く感じるくま。デフレ自体が問題なのではなく、注目すべきは賃金上昇率なんだからインフレターゲットも絶対に必要とまでは思わないんだくまね。

ETF買入れや過度な金融緩和は格差を助長するのみならず、ゾンビ企業の発生や新陳代謝の阻害といったかたちで、資本市場における自浄作用に悪影響を与えてしまうんじゃなかろうかくま。

現代の市場資本主義は格差を拡大させる性質を持っているので、その対処は税制や財政政策で行う必要がある。ETF買いにあんなにお金使うんだったら労働市場の活性化やセイフティネット整備に使って欲しいくま。まあ、たしかに中央銀行のマンデートではないけども。

プライマリーバランス均衡の呪い

MMT(現代貨幣理論)の話をする前に、プライマリーバランス(基礎的財政収支)についておさらいしてみようくま。プライマリーバランス均衡とは、国の会計において既存債務に係る元利払い以外の支出と、公債発行を除いた収入が均衡していることを指すくま。つまり、年間の財政支出が税収など年間の国庫収入で賄えている状態くまね。

日本においてはやたらとプライマリーバランス均衡が重要視されているように見えるくま。その理由を整理してみよう。

・ 政府債務残高(累積財政赤字)の規模がGDP対比大きい
・ 財政赤字を解消するには、インフレあるいは歳入増(税収)が必要
・ 過度なインフレは望ましくない
・ 過度な増税は景気拡大に冷や水なので好ましくない
・ とはいえ、高齢化と人口減は不可避ため、税収のベース増は望めない
・ 結果、支出を抑え財政赤字を徐々に減らさないと財政破綻する

とまあ、こんな感じじゃなかろうか。財政赤字を減らすためにはプライマリーバランス黒字を続ける必要がある。日本の政府債務残高は約1300兆円(純債務残高約860兆円)、対GDP比約240%、おおぅ、それなりの額くま。

ただし、公会計は僕らの家計簿とは違う。借金が増える⇒首が回らなくなる⇒破産とはならない。単純に家計と同じように見えてはいけない。

「財政均衡すべき」が柱となって、消費増税や拡張的財政政策の自粛などの方向に進み、結果的にインフレ率が低下、景気が足踏み状態に…といったリスクが顕在化しているが、果たして前提となっている財政均衡は是なのか、それを考える必要があるくまね。そこに一石を投じたのがMMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)くま。

MMTと間接的財政ファイナンス

MMT(現代貨幣理論)はざっくり言うと、
・ 政府は貨幣発行権を有しているため、借入れを伴わずとも支出が可能
・ 貯蓄が政府赤字を賄うのではなく、政府の赤字が民間部門の貯蓄を創造
・ 自国通貨建て債務残高拡大は問題ではない
・ マネーサプライ増加によるインフレのみ注意すればよい 
みたいな感じくま。ようは、貨幣発行権を有する政府は財政均衡に執着することなく、財政政策をいくらでもすれば良い。ただし、マネーサプライ増加による過度なインフレは望ましくないため、インフレ率をベンチマークにして政策を実行すれば良いといった内容くま。これには賛否両論あって、簡単にまとめると、自国通貨建て債務が資本市場でサポートされる米国や日本といった一部の先進国では有効かもしれないけど、例えば発展途上国でこれをやるとそれこそ前述③の貨幣の信用毀損が起こり、行き着く先はハイパーインフレになるって指摘はもっともくまな。

個人的にはMMT自体は否定しないくま。均衡財政に過度に固執することなく、貨幣供給によって需要拡大を目指すこと自体はできるならやったらいいと思うくま。(できる国は限られてはいるけども)

ただ、現在日米欧で行われている金融政策がMMTによってサポートされるかというとそれは違うと思うくま。そもそもMMTは、
・ ケインズ派の流れを汲んでおり財政政策の有効性を主張している
・ 一方で、裁量的金融政策の有効性については触れられていない
であり、基本路線は財政政策の有効性を重視するケインズ派の政策理論なんだくま。今みたいに、中央銀行がBS膨らましていくらでも国債買い入れてもいんだよ、は単に間接的財政ファイナンスであって、MMT的政策運営がなされてるわけではない、ここら辺に一部誤解があるような論説を目にするくまよね。財政赤字や均衡財政を過度に気にすることなく、財政政策によって有効需要を創出できるならどんどんやりなさい、ただしハイパーインフレは怖いのでマネーサプライとインフレ率には注意してね、というのがMMTのポイントであって、資産買入れと過剰な流動性供給によって単に資産価格が上がっている状態は決して良いと言えないんだくま。

MMTにおいて重要なのは、中央銀行がどんだけ流動性供給するかではなく、政府・議会がどれだけ効果的な財政政策を行うかということくま。
中央銀行はあくまで金融政策ツールでもって財政政策をサポートするってことなんだと思うくま。

今日のまとめ、伝えたかったこと

今日のnoteは以前ツイートした内容に加筆・修正したもので、元ツイートも自分の頭の中を整理するためのものでしたくま。まあ内容は大したことないんだけど、伝えたかったことは「デフレは悪」「デフレは不況の元凶」みたいなイメージが固定化されてると思うけど、本当にそうなのか、なぜそう言われるのか、一度考えてみたら?ってことなんだくま。

人間は何度も触れた価値観や論説を正しいと理解する、これはそうゆう風にできてるんだくま。こうゆうことは世の中にたくさんあって、意識して考えないと正解に辿りつけなかったり、間違った答えを正解だと思ったりしてしまう。普段当たり前だと思ってしまっていることに疑問をもって、理由を考えてみる、これがリテラシーを高める第一歩なんだと思うくま。今後もnoteやTwitterを通じて、みんなで考えることを拡げていけたらいいなと思ってますくま。引き続き宜しくお願いいたします。

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