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アメリカのオンライン授業③ オンライン講座との違い

3月初め、オンライン授業への移行に向けて、米国各地の大学も教職員も動き出したなか、強調されたのが、『これはオンライン講座ではない』ということでした。これは、突然、オンラインへの移行を求められた教職員や学生の負担を減らすための、とても大切な心得として繰り返されました。

日本でも、世界各国の名門大学の授業が受けられるオンライン講座が注目を集めましたが、コロナ禍で行われているオンライン授業は、こういったオンライン講座とは何が違うのでしょうか。

リモート・ラーニング

今回、米国大学で導入されたオンライン授業は、オンライン講座(オンライン・コース)と区別するため、一般的に、リモート・ラーニングと表現されています。

リモート・ラーニングとは、遠隔から学ぶこと、を意味します。教える側は、リモート・ティーチング(遠隔から教えること)ですが、ここでは、より一般的に使われているオンライン・ラーニングという表現を使っていきます。

リモート・ラーニングとオンライン講座の違い①

では、オンライン講座とリモート・ラーニングは何が違うのでしょうか。

まずは、リモート・ラーニングが、『コロナ禍における緊急事態への対処』として行われているオンライン授業だということです。

オンライン講座のなかには、大学で行われている講義風景を撮影して提供しているものもあります。でも、一般的には、オンライン講座は、映像制作スタッフやコース・デザイナーのもと、専用のスタジオや照明を利用して、台本のもと収録を行うなど、何ヶ月もかけて制作されます。

今回のオンライン授業への移行は、たった2週間弱で、全てのカリキュラムを、オンラインに移行することが求められました。

しかも、教職員自身、外出制限、在宅勤務への変更、子どもの学校が閉鎖になるなど、様々な変化を余儀なくされるなかで、トレーニングを受けて、カリキュラムを組み直し、自宅で授業をおこなう環境を作らないといけない、という状況でした。

そのため、コロナ禍でのオンライン授業への移行は、あくまでも緊急事態への対応として、オンライン講座のような質を、学生も教職員も求めてはならない、という合意のもとに進められました。

リモート・ラーニングとオンライン講座の違い②

オンライン講座とリモート・ラーニングのもう一つの違いは、オンライン講座は、収録された講義とオンラインでの課題を中心に進められるのに対し、リモート・ラーニングでは、学生と教授のリアルタイムでのディスカッションが行われることが多いということです。

前回の記事でも触れましたが、ディスカッション重視の米国大学において、第一線で活躍する教授陣と、学生がリアルタイムでディスカッションをおこなえるということは、大学の存在意義に関わる、とても大事なことなのです。

教職員と学生の負担を減らす工夫

リモート・ラーニングは、緊急事態への対応として、オンライン講座としての完璧な質を求めるのではなく、リアルタイムの要素を取り入れた、実験的な取り組みです。

日本でも、短期間でオンライン授業に移行しないといけない中、オンライン講座のノウハウを学んだり、必要な機材を揃えないといけないというプレッシャーを感じる先生方も多いと思います。

しかし、非常時にも関わらず、オンライン講座を理想とした準備をはじめると、教職員にも学生にも大きな負担がかかります。みんながオンライン講座とリモート・ラーニングの違いを認識することで、そういった心理的、体力的、経済的な負担を減らすことは、コロナ 禍では、とても重要になってくると思います。


次回からは、具体的に、リモート・ラーニングの考え方、カリキュラムの組み方、そしてオンライン・ツールの使い方などについて、お話ししていきたいと思います。


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