レノファが負けていた理由と勝った理由
勝ちがなかったレノファですが、前節ようやく勝利をもぎ取ることができました。
今まで勝てなかった原因と今回勝てた原因、そして今後の戦略を探ってみます。
はじめに
絶対に勝ってくれてありがとうございます。。。。
では、ここから分析の中身に入ります。
まずはレノファの立ち位置を確認しましょう。
レノファの戦績
3勝2分7敗。
8/18現在の順位は、22チーム中の20位。
ようやく下位からの脱出が見えかけてきたところでしょうか。
11節 8.12(水) 新潟 ●1-2
なかなか後味の悪い試合ではありました。
特に試合後のTwitterは少し荒んでいましたね、、、、
「レノファのゲームモデルから考察する失点の原因」
この章で新潟戦に触れたいと思います。
12節 8.17(日) 大宮 ○1-0
今までがあってのこの勝利。
このために応援を続けていたと言っても過言ではありません。
観ていてとてもおもしろかったし感動しました。
選手・スタッフ、レノファに関わるみなさん、ありがとうございました!
この試合にはなぜ勝てたのでしょうか。
「レノファのゲームモデルから考察する失点の原因」
この章でこのことについて詳細に触れたいと思います。
その前に新潟戦までのおさらいをしましょう。
なぜ勝てなかったのか。
勝てないのは決定力不足なのか
霜田監督が試合後に「決めきるとこで決めきれなかった」と言っているのをよく見ると思いますが、これは間違いないと思います。
以下は、自分が出したxGと呼ばれるチャンスの創出量を示す指標です。
愛媛戦のものですが、xGとしてはほぼ互角なのにレノファは0-3で敗戦しました。実際にチャンスは創出できていたということです。
しかし、「決めるとこで決めきれなかった」。
football-labが出しているCBT(Chance Building Point = チャンス創出率)も貼らせていただきます。(新潟戦までのサマリー)
(大きい数字の右下にリーグでの順位が書いてあります)
攻撃回数・シュート・チャンス構築率はJ2リーグ約10位です。しかしながら、シュート成功率は15位と低迷しています。
これが表しているのも、「決めるとこで決めきれない」ということ。
さて、小見出しに「勝てないのは決定力不足」かと書きました。今挙げたデータを見ると、これは正しいことのように思えます。
しかし、今挙げたデータから分かるのは、
得点できないのは決定力不足
であるということだけです。
逆に、得点の香りのする攻撃自体はできているとも言えます。
では決定力を伸ばせばいいのかというと、これはそう簡単ではありません。いろんな戦術を仕込むことはできますが、決定力を伸ばすよう仕込むことはなかなか難しいものです。
じゃあどうしようもない
というわけでもありません。
勝つためにはもう一つ重要なことがあります。
そう、失点しないことです。
レノファの失点
失点しないことはとても重要なことです。
今までの失点について考えていきましょう。
実は先ほどに挙げた、football-labの画像には続きがあります。
(新潟戦までのサマリー)
先ほど挙げたのは上の段です。
この章で紹介したいのは下段です。(小さいですが、、、)
被攻撃回数は14位(上位の方が回数が少ない)、被シュート・被チャンス構築率・被ゴールは20位以下です。
これから言えるのは、
・攻撃される回数がそもそも多い
・攻撃された場合、失点につながる率が比較的高い
レノファのサッカーに即して言えば、
・相手の攻撃につながる形でボールを失う回数が多い
・ハイプレスを剥がされ、擬似カウンターをくらう率が高い
(レノファの前からのプレスをかわされ、後ろの枚数が少ない間に、一気に攻められる)
ということがこのデータに表れていると考えられます。
続いて、具体的に失点のパターンをみてみましょう。これもまたfootball-labのものです。
(新潟戦までのサマリー)
コーナーキックからの失点が多いような気がしていましたがそんなこともないようですね。セットプレーからの失点の割合は他のチームとあまり変わりません。(数は多いですが)
このデータから言えるのは、
・失点数が多い(それはそう)
・ドリブル(青)からの失点が比較的多い
ということでしょうか。
ドリブルから失点されるということからは、擬似カウンターか普通のカウンターをくらっていることによるものだろうと考えられます。ドリブルから攻められるという状況はレノファの守備の人数が少なくなっているから起こるからです。
なぜこのようになってしまうのでしょうか。
レノファのゲームモデルから考察する失点の原因
さて、今までの議論から
レノファはハイプレス(前からのプレッシャー)をかけるがそれを剥がされることが多い
すなわち、
擬似カウンターをくらうような攻撃をされることが多い
攻撃されやすい形でボールを失うことが多い
ということが考えられます。
この2点について考えてみます。
擬似カウンターを受けること
レノファはハイプレスを行うことをチームとして行っています。
ハイプレスを行うことで、高い位置でボールを奪ったり、相手に雑なロングボールだけを蹴らせたりするように仕向けます。
ただハイプレスには短所もあります。
相手にプレスを剥がされて前進された時、自チームの守備人数が少なくなっているために、カウンターのような素早い攻撃をくらうことがあるのです。
これが擬似カウンターです。
さて、ここでレノファのハイプレスについて考えてみます。
ハイプレスからの得点は何回かありましたし、ハイプレスをして相手にロングボールを蹴らしてボール奪取するシーンも多くありました。
レノファはハイプレスの目的をしっかりと果たせていると思います。
ハイプレスの短所に関してはどうでしょうか。
プレスを剥がされ相手に前進されることがとても多かったとおもいます。もちろんレノファはいつもハイプレスをしているので、攻められる=ハイプレスを剥がされるということになるのですが、前進されてしまうということが問題です。
ハイプレスを剥がされる(=ボールを奪えない・ロングボールを蹴らさせることができない)ことがあっても、対策を取ればミドルゾーンで相手の前進を防ぐとこはできるはずです。
レノファのハイプレスについて、よくあるいい状況と、よくある悪い状況に分けて具体的に考えていきます。
レノファの目指すいいハイプレス
おそらくレノファは以下のようにハイプレスをしたいのでしょう。
レノファは守備時、相手のビルドアップに合わせて442に変化することやそのまま4231の時もありますが、基本的には1人のFWが、相手のボールホルダーに対しカバーシャドウしながら(パスコース切りながら)プレスをかけます。そして同時に、全ての相手選手に対しマンマークをします。このマンマークに関して、構造的な決まり事があるわけではなく近い人が相手にマークにつくようにしているようです。
このような状況では相手はキーパーに下げるかロングボールを蹴るしかありません。
ロングボールを蹴られたとしても、レノファの最終ラインには、相手3人に対し4人のレノファの選手がいるので、ボールを回収したり前進を防ぐことができます。
剥がされ前進される時のレノファのハイプレス
キーパーに下げられた後やカバーシャドウができていない時などに起こりがちな、レノファのhighリスクhighリターンのhighプレスです。ボールを奪う・相手にプレッシャーをかけることを最優先にして中盤の選手が相手CB等にマークにつきに行く場面は何度か見受けられました。
青のLSBがフリーになりました
こんな雰囲気で前進されることが多かったです。
実際には違う形で前進されていましたが、わかりやすくするためこのようなシーンを用いました。
ハイプレスをかけようとするあまり、リスクとリターンの可能性を増やしながら1つ前の相手選手のマークにいくことで後ろにフリーの相手選手を作ったりその相手選手のマークが遅れたりして前進されてしまいます。
これが新潟戦までの多くの失点の原因です。
相手のビルドアップがうまいため、ハイプレスの配置やタイミングを少しずらしてしまうだけで前進されていました。
大宮戦で前進されなかったのは、レノファのハイプレスの形が良かったこと、そして大宮のビルドアップがおぼつかなかったことです。
ただ、大宮戦で勝てたのはこれが大きな理由とは言えません。なぜなら大宮はミドルプレスをかける5バックであったので、そもそもしっかりとビルドアップして攻撃することが主な目的ではなく、カウンターとショートカウンターを狙っていたからです。
レノファの特徴であるハイプレスについて、いいところ悪いところを考えてみました。
より短所の影響を小さし長所の影響を大きくするためには、ハイプレスをよりよく戦術的に改善していったり、ゲームモデルとしてのプレスのやり方をさらに仕込んでいくことが大切でしょう。
さて、次はハイプレス以外のところについて考えてみます。
守備というより攻撃の話になります。
攻撃されやすい形でボールを失うこと
レノファはハイプレスでボールを奪いにいっているので、当然奪った時の攻撃は早く行われるようになっています。中盤でボールを奪った際には、縦に素早くIuryなどに当てて攻撃を展開します。
もちろんハイプレスで奪ったボールはショートカウンターで素早く攻撃するのが最善の方法なのでどんどん縦に行ってもいいと思います。
しかし、カウンターをすべきではない相手の守備が整いつつある状況で縦に急ぎ、ボールを奪われるシーンが数多くあります。しかもこの時、前線の選手はみな上がっているので、レノファの2列目(中盤のライン)まで容易に前進されてしまいます。この状況から攻め込まれることは多くあり、相手にCKを与えることも多かったです。
レノファが縦に急ぐのはめちゃくちゃもったいない。
レノファは、相手の守備ラインの手前や間に選手を配置して前進していくとこがうまいチームだと私は思っています。
これについては、武石コーチがYouTubeで話してくれていますのでぜひ見てみてください。
今は松本にいる前選手なんかは、勝手に偽サイドバック(サイドバックがANC(ヤンさんの位置)にポジションを取ること)をしたりしてましたが、これはライン手前・間・奥を取るというレノファのゲームモデルを理解しているからことできたことでしょう。
ただ、うまい配置を取れることを最大限に活かすには、ボールを奪ってから時間が必要です。もちろんカウンターの時にライン間を取ることを意識することも大切ですがこれ素晴らしいパスやトラップの技術がないとゴールまでたどり着くことは実現しにくいです。
したがって、レノファはもうちょっと落ち着いて攻撃(前進)を展開していけばいいのではないかと私は思います。
新潟戦までは縦に急ぐとこが多く、いまいちな戦術的な目標の見えない攻撃が多かったです。
さて、お気づきの方もいるかもしれませんが前節に関して、
大宮戦に勝てた最大の理由は、ラインを意識した配置をとりながら攻撃をすることができたから
と言えるでしょう。
大宮がハイプレスをかけてこなかったので、ゆっくりとしたレノファのペースに持ち込むことができ、このような攻撃を行いやすかったのだと思います。ラインの手前と奥に選手が適切に配置され、適切なパスを常に選んでいた印象を受けました。
試合後のジョージや霜田さんにもちょっと見られた涙は、ただ連敗から抜け出すことができたというわけではなく、自分たちの目指すサッカーを実現して勝つことができたという今までの努力に対する思いも込められていたのではないでしょうか。
私の考える今後のレノファの姿
今紹介したハイプレスと素早い攻撃は、レノファらしさを表現しています。
ハイプレス・ショートカウンターから実際に多くの得点をしていますし、霜田さんは今後も続けていくことでしょう。
(特に関係ないですがfootball-labから状況別得点の画像を貼っておきます)
(新潟戦までのサマリー)
しかし述べてきたように、ハイプレス・ショートカウンターに起因する失点も多くあります。この失点を減らすために、私の考える、改善すると良いであろうレノファのサッカーは以下の2通りです。
1.ハイプレスの改善
カバーシャドウができていない時は無謀にプレスを行わずにミドルプレスに移行するなど、今よりも簡単に剥がされない・前進させなくすることが重要です。これに関しては、監督がやり方を変えたりもっと丁寧に選手に落とし込んだりするなど、様々な方法で改善していくとこができると思います。(これはすでにレノファもずっと取り組んでいるとは思います)
2.ボールを保持する時間帯を増やす
大宮戦では実現できていたと思いますが、攻め急ぎすぎないことです。
もちろんレノファの守備の仕方からすると素早い攻撃をすることが必要な場面も多いですが、素早く攻撃する時とじっくり攻撃していく時の違いを今後チーム全体でもっと明確に共有していくことが大切なのではないでしょうか。
最後に
これはあくまで私の意見であり、因果が詰められてないとこもあります。
レノファには、霜田監督はじめ、武石コーチなど優秀な戦術家がいますし、選手の理解も深いはずです。
私が今述べたことよりも、もっと深いところまで考えているはずです。
今後レノファがどのようになっていくのかはわかりませんが、楽しみにしておきたいと思います。皆さんもぜひ、今後のレノファのハイプレス・攻撃のやり方について観てもらえるとさらにレノファの面白さがわかるのではないでしょうか。(まあ結局どんな内容であれ、勝つ試合が一番面白いんですけどね笑)
明日は群馬です。
絶対に落とせない試合です。
今のレノファには必要ないかもしれませんが、とてもいいなと感じたので吉永さんの言葉を紹介させていただきます。
これからも応援頑張っていきましょう!!!!
最後までお読みいただきありがとうございました。
敬称略
一部の画像・データ等にfootball-labのものを使用させていただいております。
小五郎のTwitter
https://twitter.com/Kogorofootball
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