教える技術ヘッダ

「習作」の意味

2017年2月21日

(火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています)

絵画や作曲で、練習のために作品を作ることを「習作」と呼びます。小説でも習作はあるようです。

習作はあくまでも本番の作品を作る前の練習ですので、プライベートなものとして表に出ることはあまりないのですが、有名な作家であれば、習作も公開されます。絵画の企画展示ではときどきその作家の習作が展示されることがあります。そこには作家の努力の痕跡が見えてきて興味深いものがあります。

本番の作品を作るためには「モチーフ」や「テーマ」とそのオリジナリティが重要となります。しかし習作では作家のスキルを伸ばすための練習なので、モチーフやテーマは重要ではありません。むしろ平凡でありふれた材料を取り上げて、それをいかに「作品」として仕立てるかというところが重要なところになってきます。

そうすると「研究」にも習作はあるのだろうかということに考えが広がります。研究の習作ってなんだろうか。そんなものがあるのだろうか。

研究の習作というものがあるのだろうか、と書きましたが、あっていいと思うのです。

おそらく卒業論文は習作として位置づけられるのかなと思います。もちろん卒論のテーマやモチーフは大切です。本人がどうしてもこのテーマを追求したいという思いを持っているということが大切です。

とはいえ、全体として眺めて見ると、そういうケースはむしろ少数派です。半数以上は、なんとなくテーマを決めたり、先輩がやっていたテーマを引き継いだり、思いつきや思い込みでテーマを決めたりしているのです。

それは「習作」としてみれば悪いことではないのです。テーマは重要ではなく、それを作品として仕立てるというスキルの習得に重心があるからです。ありふれたテーマをとりあげ、それを研究的視点で眺め、調べ、データを集め、議論をして、結論を得る。その一連のプロセスの中で、研究ということを体験していくのです。最終的に得られる成果は、研究という視点を獲得することです。

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