4-お勧めの本

【本】中村文子、ボブ・パイク『研修デザインハンドブック』:研修を具体的に設計する。

木曜日はお勧めの本を紹介しています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。今回はこの本を取り上げます。

中村文子、ボブ・パイク『研修デザインハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター, 2018)

同じ著者たちによる以下の本は2017年の8月のnote記事で取り上げました。

中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター, 2017)

今回の『研修デザインハンドブック』は、前著をより詳細にして、具体例を入れることで、ステップを踏んで研修デザインができるようにしたものです。随所に書き込み式のワークシートも入っていますので、書きながら自分の研修を設計することができます。

設計のフレームワークとしてはボブ・パイクの「90/20/8の法則」を一貫して採用しています。この本のように研修を設計・実施すれば、まず合格点の研修を作ることができるでしょう。その意味で、研修はまずこのレベルを満たすべきという基準になる本といえます。古典的なインストラクショナルデザインにのっとったハンドブックとしてお勧めします。

おまけとして、前著『講師・インストラクターハンドブック』の紹介を以下に載せておきます。

■要約

研修や授業を行う、講師、インストラクター、トレーナー、教師のために、楽しく、ためになるような研修・授業を設計し、実施するための具体的なスキルとテクニックを提供する。10人から1000人規模のどんな研修やセミナーでも使うことができる。

■ポイント

すでに講師として活躍している人であれば、実行していることも多いかもしれないが、自分のセミナー、研修、授業を1から見直してみるためにも、この本を通読する価値がある。

たとえば、研修の中で参加者同士の対話が必要であることは、89ページから解説がある。またパイク得意の「90/20/8の法則」については93ページから紹介されている。

研修・授業のコンテンツの組み立てを考えるには、「KSAフレームワーク」が有用だ(102ページ)。これは内容を、Knowledge/Skill/Attitude(知識、スキル、態度)に分けてその最適な教え方を考えるもの。知識を教えるには人の記憶の仕組みについて知っておく必要があるし、スキルを教えるにはその練習方法が大切、また、態度を教えるためには感情に働きかける必要がある。

研修でよく取られる方法は、理論から入るものだけれども、そうでない方法をレパートリーとして身につけておくことが大切。たとえば「EATフレームワーク」(121ページ)。これは、Experience/Awareness/Theory(経験→気づき→理論)の順番で導入して行くものだ。まずそれぞれの経験から入っていけば、わかりやすいし、身近な問題として考えさせることができる。

参加者に適度なストレスをかけることは、成果を得るために必要なことだ(218ページ)。それには、時間的なプレッシャー、役割を与えること、チームに対する責任を感じてもらう、競争的要素を取り入れるなどの方法がある。こうした考えも、参加者をアクティブにするための工夫として身につけておきたい。

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