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(023) 大学はオンライン授業への切り替えができるかどうかを試される

新型コロナへの対策として、早稲田大学は授業開始を少なくとも2週間遅らせることを決めました。アメリカではオンライン授業に切り替える大学も出ています。

日本では名古屋商科大学で、授業開始を遅らせることなく、学部・大学院ともにオンラインでの「双方向ライブ形式」で実施するとのことです。

なお、こうしたオンライン授業については、2001年から文科省が、大学・大学院における「メディア授業」として位置づけています。つまり、正規の授業です。メディア授業は、テレビ会議などによる「同時双方向型」とインターネット配信による「オンデマンド型」があります。

文科省資料「大学における多様なメディアを高度に利用した授業について」

こうしたメディア授業によって、通学制の学士課程では124単位中の60単位までが認められます。また、通学制の修士課程では30単位中のすべてが認められています。

今回のコロナ禍によって、学生が教室に集まる対面での授業がやりにくい状況になりました。この状況下で、素早くオンライン授業に切り替えることができるかどうかが大学にとってのチャレンジになりそうです。

対面授業のオンラインへの移行ということについて現実的に考えてみました。

・レクチャー中心の授業をオンライン化する

レクチャー中心の授業では、100人以上の受講生を持つ大規模クラスになることもしばしばです。この場合はリアルタイムでやるのは難しく、またその必要性も小さいので、レクチャーをビデオ収録したものを配信するという形になるでしょう。そのあとに、オンラインディスカッションと質疑応答の機会をもうけます(これはメディア授業として認定されるために必須です)。必要であれば小テストや小レポートなどの課題を出します。

ディスカッションや課題提出には、所属大学でLMS (Learning Management System) が用意されていれば、それを使います。もしなければ担当教員がGoogle ClassroomやMoodleなどの公開されているLMSを利用することになります。この場合、学生情報の登録やそのセキュリティ維持などで負担がかかるでしょう。

レクチャーの収録は、大学でスタジオが用意されていればそれを使うことになるでしょう。けれども、今や個人のパソコンで収録が可能です。私が愛用しているのは、TechSmith社のカムタジアです。特に気に入っているところは、パソコンのスクリーン(スライドを映しておく)と自分の顔が同時に収録できるところです。また購入金額も3万円程度と安価です。なおTechSmith社から宣伝料はもらっていません。

こうしたアプリで収録したビデオをYoutubeにアップロードして「限定公開」モードにしておきます。限定公開モードでは、そのURLを知っている人のみが視聴できますので、受講生にそのURLを知らせることで視聴してもらいます。

カムタジアで収録したレクチャービデオを1つ載せておきます。2014年に作成したものです。出来あがりはこんな感じになるという例としてご覧ください。

・実験や実習、グループワークの授業をオンライン化する

実験や実習の授業をオンライン化するのは、レクチャー中心の授業よりも難しくなりますけれども、チャレンジしがいのあるものとなるでしょう。実験機材が必要なものは、教員がデモンストレーションして、それを収録しておくことになります。もちろんリアルタイムでデモンストレーションできるのであれば、それをzoomなどで配信することもできます。

デモンストレーションを配信する場合、固定カメラでは収録が効果的にできないことが考えられますので、ビデオ収録する人を助手として雇う必要が出てきます。

グループワークが必要な場合は、zoomではブレイクアウトルームという機能を使います。これは参加者全員を少人数のグループに分割するものです。グループ内の参加者と議論やワークを行ったあとで、ホストの教員は全体のミーティングに戻すことができます。これを繰り返してグループワークを行うといいでしょう。

いずれにしても、こうした授業のオンライン化では、授業担当教員以外にアシスタントが必要なことは明白です。オンライン授業の進行についてアシスタントと事前に進め方の打ち合わせをしておくことが必要です。

・ゼミをオンライン化する

少人数によるゼミは、zoomの一択となるでしょう。教員や発表者はあらかじめ資料を参加者に配付してからオンラインミーティングを開始します。資料配付のプラットホームには大学のLMSやGoogle Classroomなどのサービスを使うのがいいでしょう。

ゼミをzoomで行うというのは、多くの大学教員にとって初めての体験になるでしょう。慣れるまで数回かかかるかもしれませんけれども、いずれ誰にとっても馴染みのあるものになります。そして、オンライン化されたゼミには、対面で行うゼミの雰囲気や臨場感などが失われる一方で、効果的な側面もあることを確認するでしょう。たとえば、参加者一人一人の顔がよく見えることや、それによって自分の意見をきちんと述べる力になること、すべてが収録されることで再確認や復習ができることなどです。

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