(029) アドラー心理学の「勇気づける」とはどういう行動か。
noteのサークルで「ちはる塾サークル」というのをやっています。現在、メンバー39人で、週1回のZoomミーティング(Zoom飲み)をやっています。このミーティングでは毎回メンバーからテーマを募って、それについて語り合っています。
先日のミーティングのテーマは「勇気づけ」でした。アドラー心理学の中でも、勇気づけ (encouragement) は重要な概念でもあり、また魅力的なキーワードです。でも、実際のところ勇気づけというのはどういう行動なのでしょうか。励ますというのとも違うし、「あなたはあなたのままでいい」というのとも違う。
「勇気」や「勇気づける」とはどういうことなのでしょうか。
・アドラー心理学の「勇気/勇気づける」の定義
アドラー心理学は、心理学としては、とてもわかりやすい言葉で語られています。そのため常識的にも了解しやすいものです。しかし、その用語については、他の科学と同じように厳密な定義がされています。その定義を見てみると、私たちが常識的な文脈で理解しているのとはちょっと違うことがわかるでしょう。
「勇気 courage」と「勇気づける encourage」ということについては次のように定義されています。
Courage is here understood as the willingness to act in line with community feeling (social interest) in any situation. It is fundamental to successful adaptation. To encourage is to promote and activate the community feeling, that is, the sense of belonging, value, worthwhileness, and welcome in the human community.
「勇気」は、どのような状況においても、共同体感覚に沿って行動しようとする意志として理解されています。それはうまく適応するための基礎となります。「勇気づける」とは、共同体感覚を促進し活性化することです。共同体感覚というのは、人間の共同体に所属し、価値が認められ、生きがいとなり、そのままで歓迎される感覚のことです。
・勇気は共同体感覚、所属や居場所の感覚と統合されている
つまり、勇気づけるということは、単に励ましたり、後押しをするということではなくて、常に共同体感覚に沿って決断し、行動することを促進するということです。その共同体感覚とは何かというと、自分の居場所があって、そこで価値が認められ、その共同体に貢献することが生きがい(生きる意味)になるようなことです。
このようにアドラー心理学における勇気とは、共同体や共同体感覚と一体であり、共同体感覚は所属や居場所の感覚と一体のものです。このようにしてアドラー心理学のひとつひとつの概念はお互いに結びつき、統合されているのです。
アドラー心理学の用語の正確な定義を知ろうと思ったときは、次の本を引くといいです。GriffithとPowersが編纂した “The Lexicon of Adlerian Psychology” (アドラー心理学の用語集, 2017)です。
また次のサイトを検索すると、この用語集も含めて、さまざまな記事やビデオを手に入れることができます。
・勇気がくじかれた人はただ何もしない人ではない
この用語集を読むと「勇気をくじかれた人 discouraged person」についてアドラーが語っていることがわかります。勇気をくじかれた人というのは、ただ何もしない人というわけではなくて、活発な行動をしている場合もあります。
勇気をくじかれた人の活動は、それが共同体感覚に反したものなのです。自分の劣等感を克服し、他者からの尊敬を得ようとするのは良いのですけれども、その時に自分のことだけを考え、他者との協力を考えないで行動する人は、社会的に不適切な行動をすることになります。そうした人は勇気がくじかれています。
そうした人には、自分の能力を有益な側面で使うことが必要です。それを促すことがアドラー心理学のいう勇気づけなのです。
ここから先は
ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。