(027) 大学をサブスクリプションと考えてみると。
モノを買い取るのではなくモノの利用権を得て、その期間によって料金を支払うというサブスクリプション方式(サブスク)が広まってきました。私も、NetflixやApple Musicをサブスクで楽しんでいます。
さて、大学をサブスクとして考えてみるとどうなるでしょうか。
良質の体験を得ることがサブスクの意味
最近ではなんでもサブスクということで、自動車をサブスクしたり、ランチをサブスクしたりというアイデアも出ているようです。でも、これはちょっと違うような気がします。というのは、サブスクの意味というのは、体験をサービスとして受けるということだからです。自動車のサブスクとリースとはどこが違うのでしょうか。ランチのサブスクと食べ放題とはどこが違うのでしょうか。あまり違いません。それは自動車やランチというようなモノを対象としているからです。
ディズニーランドの年間パスはサブスクと言っていいでしょう。ディズニーランドはモノとして所有できません。ただその体験をサービスとして受け取るということです。年間パスであれば、その期間中、いつでもその権利を行使して体験を得ることができます。もし一日券を買ってディズニーランドに入園したとすれば、その金額分は楽しまなければ損だと思うでしょう。しかし、年間パスのユーザーはそうではなく、その体験そのものを楽しもうとするでしょう。時間さえ作ればいつでも来れるからです。
NetflixやApple Musicをサブスクしてわかること
私は映画体験を得るためにNetflixを、音楽体験を得るためにApple Musicをサブスクしています。両方とも月額千円程度を支払って、体験を得ているわけです。サブスクによって体験を得ることで気がつくことがあります。それは、いくら使いたい放題だと言っても、自分が使える時間は有限なので、その中で取捨選択しなければならないということです。
つまり、有限の時間の中で、映画や音楽のどれを体験するかを選択しなければならないのです。それもできるだけ自分にとって意味のある、良質の体験にしたいわけです。こうして、サブスク利用者のほうにも勉強する必要が生まれてきます。
NetflixやApple Musicのメニューの中で、頻繁に「あなたにお勧め」のアイテムが提示されます。これは、利用者にできるだけたくさん体験をしてもらって、それによってサブスク契約を続けてもらおうということです。それを受けて、利用者は今まで未経験だった体験を得ようとします。これはサブスクのサービスと同時に、利用者の「努力」にほかなりません。実際、NetflixやApple Musicによって私は数々の映画体験や音楽体験を新しく発見しました。これは私の時間を使った努力の成果です。
大学をサブスクとして考えてみるとどうなるか
さて、大学をサブスクとして考えてみたいというのが、この文章の趣旨です。大学は学生としての体験にお金を払うという点で、サブスクに馴染みがいいのです。しかし、現状の大学はサブスクになっていません。それは卒業年限というルールがあって、それを満了すると追い出されてしまうからです。
とすれば、通常の卒業ルートとは別に「大学サブスクリプション」を作ってみてはどうでしょう。サブスク利用者はいつでも授業を受けたり、大学の施設を利用できるのです。そうすると利用者は、より良質の学習体験を求めて努力するでしょう。大学のほうは、より良質の学習体験を提供できるように努力するでしょう。
現状の大学は単位を取らせて、その結果として「卒業」という架空のラベルを販売しているようなものです。そうなると自動的にそのラベルをできるだけ簡単にラクをして得るにはどうしたらいいかというゲームになってしまいます。それはいつかは廃れるでしょう。一方で、生涯学習の時代に入って、人はいつでも思い立ったときに、学習や研究を始めることになります。その時代に備えて、「大学サブスク」を考えておいてもいいような気がするのです。
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