見出し画像

(126) 研究のネタをどう見つけるか:リサーチクエスチョンのICEモデル

2021年3月24日(木)

2020年度の「教える技術オンライン研究会(OGOK)」(全10回)から、研究トピックや研究スキルを紹介するシリーズの第3回目です。今回は研究スキルとして「リサーチクエスチョンのICEモデル〜概念と変数の設定」を取り上げます。

「教える技術オンライン研究会(OGOK)」は2021年度も新シリーズで開催します。興味のある方は、2021年度新メンバーの募集を兼ねた公開研究会(参加無料)にご参加ください。下記の記事から参加登録できます。

・現場の問題と理論的問題の掛け合わせからリサーチクエスチョンを立てる

研究を始めるには、まず研究のネタを見つけることが必要です。研究のネタとは正式には「研究上の問い Research Question (RQ)」と呼ばれています。研究をスタートさせるには、まずこのリサーチクエスチョン (RQ) を立てることが必要です。RQはどのように立てるのでしょうか。

すでに現場で働いている人は、その現場でたくさんの問題を扱っています。たとえば、現場でミスや事故が起こるのはなぜか、工夫や改善をしたのにうまくいかないのはなぜか、どのような内容をどのように教育したらいいのか、というようなことです。現場にいる人は常に「なんでこうなるんだろう?」という疑問を持っています。これを「現場の問題 Clinical Question (CQ)」と呼びます。

画像1

クリニカルクエスチョン (CQ) は、RQを立てるための第一歩となりますが、それだけでは十分ではありません。なぜなら、CQは常に個別の問題だからです。つまり、特定の現場で、特定のメンバーと特定の仕事の中で起こっている問題だからです。CQをRQにするためには、抽象度を一段階上げて、同様の現場でも適用できる一般化された問題にすることが必要です。

抽象度を一段階上げることで理論やモデルと呼ばれるものになります。科学は検証された理論やモデルを蓄積しています。そこで、今度は、論文や文献の形で蓄積された理論やモデルの方向から問題を探索していきます。これを「理論的問題 Theoretical Question」と呼びます。

RQは、現場の問題と理論的問題を掛け合わせたところに現れてきます。つまり、特定の現場で見出された問題を、これまでに蓄積された理論やモデルの中に位置づけます。そしてその理論やモデルで解決できるのかどうか、解決できるとすれば具体的にどうすればいいのか、解決できないとすれば理論やモデルを改訂あるいは拡張する必要があるのかということを検討していきます。こうすることによって、理論的問題を経由して、現場の問題をRQとして設定することができます。

・リサーチクエスチョンのICEモデル

リサーチクエスチョンはさまざまな形の疑問形になります。そのパターンにはどのようなものがあるでしょうか。「(021) 授業や研修の中で質問や評価のために使える「ICEモデル」」という記事で紹介したICEモデルを使ってリサーチクエスチョンを分類してみると割とクリアに分類できます。

画像2

・(概念)Xとは何か/Xはどう測れるか

ここから先は

1,337字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。