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ちはるのファーストコンタクト(2017年)

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2017年に書かれたマガジン「ちはるのファーストコンタクト」の記事をすべて収録しました。300本以上あります。
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#研究

フェイクニュースの時代だからこその研究論文は読まれてなんぼ。

水曜日はフリーテーマで書いています。 研究論文を書くのは大変な仕事です。研究のアイデアを思いついて、文献を調べて、予備調査をして、本調査をして、データ分析をして、論文原稿を書き、査読者コメントに対応してやっと論文に掲載されるのです。もちろん採録されずに「リジェクト」という判定を受けることもあります。かかる時間は、少なくとも1年間、長い場合は数年かかります。 研究論文を世に出すのはそれほどまでに大変です。しかし、せっかく出版されたとしても、それが実際の読者の目に触れる機会は

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【注目記事】クラウドソーシングと機械学習という研究手法/リフレクションを習慣にする

土曜日は「注目記事とヒント」を書いています。Facebookでシェアした記事を取り上げて感想やコメントを書きます。 47 クラウドソーシングと機械学習の利用、構築されたモデルの公開がこれからの研究手法。2017年9月にその論文を公表したのは、カルフォルニア大学のAlan S.Cowenさん。神経科学の分野で、機械学習を学んでいる大学院生だ。 彼は男女800人以上を対象にした調査で、感情の分布を示してみせた。その内容はこう。数千もの映像をチーム分けして見てもらい、それぞれどん

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【連載】オトナの研究(第03回):ラボノートを用意しよう。

金曜日は「オトナの研究」のテーマで連載しています。前回は、「まず Google Scholar で先人の研究を探す」と題して、単なる「思いつき」を研究トピックにするために、先人たちがどのような研究をしていたかをリサーチすることがスタートになるということを書きました。 今回は「ラボノートを用意しよう」ということを書きたいと思います。 ラボノートというのは研究の記録に使うノートです。いくつかのメーカーから商品が出ています。これはコクヨの入門用ラボノートです。 ラボノートを使

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【連載】オトナの研究(第01回):「オトナの研究」とは何か。

金曜日は特定のテーマで講座を連載しています。前回までで「みんなの前で話す技術」(全12回)の連載の区切りを入れましたので、今回から新しい連載を始めたいと思います。 そこで、新しいテーマについてちょっと考えていたのですが、「オトナの研究」というタイトルにしました。その意図は、こんな感じです。 フツウの大人が「研究」のようなことを始めると、大人の人生は楽しく、意味のあるものになるだろうな。そしてそういう人たちが増えていくと、社会は全体としてより良くなっていくんじゃないかな。

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ラケットを道具にすること。道具と一体化すること。

火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています。 これまで連続してテニスコーチの教え方について取り上げてきました。具体的には以下のようなことを書いてきました。 01 お金を払えば自分の自由にして良いという考え方の人は、コーチや先生につくべきではありません。 02 手出しボールで打つ。シナリオで打つ。ゲームで活用する。構造化されたプログラム。 03 手加減しないことの意味。 04 Nothing Ballを出さない。美しく意味のあるラリーの始まり。 今回は「

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せわしない雰囲気の3月という時期に心を落ち着ける。

2017年3月11日 (土曜日は昔のブログ記事を振り返って書いています) ショートレター論文投稿へフル回転2月は28日しかないからかどうか、あっという間に終わる。そして、3月のこの時期は、卒業式を頂点とする祝賀ムードと新年度への準備とが、双方入り交じった微妙な雰囲気で充満する。 この落ち着かない空気の中で、しかし論文は書く。というか書いてもらう。卒論と修論の良いものは投稿論文にしておきたい。日本教育工学会は、毎年この時期にショートレター論文特集号への投稿を受け付ける。

【お題拝借】教授との信頼関係を作る方法

2017年2月26日 日曜日は「お題」の日なのですが、今回は質問がないのでフリーテーマで書きます。 「かやのみ日記帳」というブログで「研究室の教授との付き合い方を変えてうまくいった話。教授を共同研究者に引きずり込む」という記事の中にこんなことが書かれていました。 そして、こんなことも。 そういえば5年前のブログにこんな記事を書いていました。 院ゼミコラム(9):指導教員はあなたの研究を覚えていないあなたの指導教員は、あなたの研究を覚えていない。テーマくらいは覚えてい

学ぶだけでは不十分。何を学ぶべきかということを検討することを学ばなければならない。

2017年2月25日 (土曜日は昔のブログ記事を振り返って書いています) 「週末研究者」というカタチ「博士を増やす施策は間違いだった」の記事を引用したのをきっかけに、muto先生から、「週末研究者」のアイデアをいただいた。 学部からストレートに大学院に来るのではなく、すでに働いている人が、何年か休んで、大学院で学び、再び仕事に戻るようなパターン。あるいは、仕事を辞めずに、週末に研究を続けるパターン。このような人たちが増えれば、日本は文化的に豊かになれる、と。 さらには

「習作」の意味

2017年2月21日 (火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています) 絵画や作曲で、練習のために作品を作ることを「習作」と呼びます。小説でも習作はあるようです。 習作はあくまでも本番の作品を作る前の練習ですので、プライベートなものとして表に出ることはあまりないのですが、有名な作家であれば、習作も公開されます。絵画の企画展示ではときどきその作家の習作が展示されることがあります。そこには作家の努力の痕跡が見えてきて興味深いものがあります。 本番の作品を作

カスタマーレビューには、その本が「どのように読まれたか」ということが端的に反映されます。

2017年2月11日 (土曜日は昔のブログ記事を振り返って書いています)  「認知科学」誌から書評を依頼された。それで東京に行っている間にその2冊の本を全部読んだ。考えてみれば、本全体に目を通すということはあまりない。ほとんどの本は流し読みであり、本当に読んだといえるところは自分の興味のあるところだけである。通常はそれで不都合はない。しかし、書評を書くとなると、始めから終わりまで読むのがマナーである。取り上げるところはそのごく一部であるとしても。  書評を書くのはこれが

研究テーマを「自分のもの」にすること

2017年1月31日 (火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています) 先日今度退職される教員の歓送会が開かれました。それぞれのスピーチが面白かったのですが、その中で次の話は特に印象的でした。 大学教員がゼミで果たすべき重要な仕事のひとつは、ゼミ生に「ここを深く掘れば意味のある研究ができるよ」というような研究テーマを提供できることです。その目標が明確に決まりさえすれば、学生は一連の研究プロセスに乗せることができるのです。 というわけで大学教員の資質は石