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2022.7.20論文短評: Gearing Up- Materials and Technology in the History of Sport

論文名:Gearing Up: Materials and Technology in the History of Sport
著者:Rachel S. Gross & Carolin F. Roeder
掲載誌:The International Journal of the History of Sport, 39(1): 1-6, 2022
DOI:https://doi.org/10.1080/09523367.2022.2040931

 The International Journal of the History of Sportで企画されたSporting Object という特集の序論に位置する論文。ちょうど自分自身もスポーツとテクノロジーについての短い原稿を書いていたので、このトピックに関する海外の研究動向を見ておこうと思って読んだ。

 結論からいえば、スポーツとモノ、テクノロジーについての研究は日本でも海外でもまだまだ発展途上ということ。例えば、2020年に著書の翻訳(『スポーツを変えたテクノロジー』)も出たスティーブ・ヘイクの研究を紹介しながら指摘されるように、スポーツの技術史(プレー技術ではない)はどちらかと言えば、それがどのように開発され、結果的にそのスポーツがどのように変容したかに焦点を当てるものが多く、そこに人間の方がどんな働きかけをし、あるいは働きかけられたかというのは見過ごされやすい。一方で、従来のスポーツ史は人間の方に重点を置いて、用具やそれを生み出す技術とスポーツ、あるいは人との関係をどちらかと言えば消極的に扱ってきた。この辺りは僕自身の理解と隔たっていない。

 僕自身の言葉で言い換えれば、スポーツとモノ、テクノロジーの連関が人間の知覚経験とかスポーツそのものに対する認識の次元にどのように関わってきたかというところに打ち込む研究はまだまだ多くないのだろうと思う。いずれにしても、スポーツ史でもその他の社会学や人類学でも、スポーツにおけるモノの地位をもう少し上げていく必要がある。僕自身はそれを次の二つの論文で試そうとはしてきた。

・「技術文化にみる「ペロタ・ミシュテカ」の土着性」『体育学研究』63(2): 723-737, 2018

・「スポーツする身体の人類学――運動形態論的視点からみた走ることの異種協働――」『文化人類学研究』21: 12-36, 2020
https://doi.org/10.32262/wsca.21.0_12

 もう一つこの論文での発見というか面白いなと思ったのは、著者ら(この特集の企画者でもある)の専門がアウトドアレジャー&スポーツということで、そちらをテーマにする論文が選ばれているということ。日本のスポーツ研究で、登山、キャンプなど、アウトドアレジャーに対する研究もまだまだ手薄なところかなと。

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