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ゼロから始めるベンチャー管理部門ーN-3期~N-2期の過ごし方ー

はじめに

 1人経理・管理部門担当としてベンチャーでのキャリアをスタートしておよそ3年。管理部門の責任者としてIPOプロジェクトに携わる中で学んできたことをこれから挑戦される方の参考となるよう残したいと思います。
 だいぶマニアックなテーマですが、これから実務に携わる方に少しでも貢献できればと思います!

もし、レンティオのことをご存じでない方がいらっしゃいましたら、お時間のある時に弊社サイトと代表三輪の記事をご覧くださいませ

この記事のテーマ

これから管理部門立ち上げを始める方、あるいは管理部門責任者を目指している方に対して、管理部門を立ち上げる過程でどのようなイベントを乗り越えていくのか、の解像度がより高まる事例提供を企図しています。
よって、網羅性であったり個別論点にはそこまでフォーカスせずに(そこはIPOコンサルや証券会社・監査法人よりご説明いただけますので)、以下の項目を中心に触れていきます。

ーN-2期を終えるまでの1-3年間で為すべき重要なことは何か?
ー為すべきことの中で苦労する、あるいは時間のかかることは何か?
ー上記課題を達成する上で重要と感じた(あるいは、こうしたらもっとよかった)ポイントは何か?の振返り的な自己反省点

以上

前置きが長くなってしまいましたが、余暇の読み物として楽しんでいただければ幸いです。

N-3期からN-2期にかけて起こる重要なイベント概況

N-2期末までに実現を目指す主な課題_page-0001 (1)

主な課題をつらつらとリスト化しましたが、絶対に外してはならない重要なタスクとして、会計監査人(監査法人)と主幹事証券の契約締結。それと同時にコーポレートガバナンスや経理体制等の整備を行っていくことが求められます。
これらの重要タスクについて、少数の管理部門メンバー(全体の10%程度の人数)で対応していくことになり、日常業務をこなしつつ、事業固有のプロジェクトや様々なタスクの解決とその後の運用・深化、ステークホルダーとの継続的な対話に対応する仲間集めが最重要課題になってきます。

そして、視点を変えて時系列で見ていくと以下の図のようにタスクがやってきます。

N-3期からN-2期の過ごし方①

仮に、N-3期にIPOを目標とした管理部門立ち上げを開始する場合、2年間の主なタスクは上記の図のようになります。N-2期にタスクが集中しているように見えますが、個々の状況にもよりますのでこの時期を目安に仕上げていく程度の参考として見ていただければと思います。なお、まだ1-2年あるし焦らなくてもよかろうと油断していたらあっという間に時が過ぎていくので、3ヵ月前倒しで着手していく感じの方が精神衛生的に良い気はしていますw
いずれにせよ、N-2期が終わるまでに(モノによってはN-1期以降での継続対応もありますが)管理体制を一定水準まで到達させることを管理部の目標として活動を開始するのだということを認識いただければとそれでよいと思います。

ディープダイブーN-3期の過ごし方ー

N-3期の過ごし方_page-0001

N-3期は、多額の資金調達前後で管理部門担当者がゼロから立ち上げを目指し始める時期という前提を置いてスケジュールを述べていきます。
管理部門担当として参画したメンバーが着手開始するための大前提として最重要なポイントは、「キーマンの信頼獲得とビジネスモデルや組織文化への理解」を深めることです。
今まで存在しなかった管理機能をつくりあげていくにあたり事業への理解度の深さが本件プロジェクトの成否に大きく影響するものと考えており、そもそもコーポレートガバナンスを整備する目的は、ざっくり言うと中長期的なビジネスの成長に資するリスクコントロール等を行うための組織基盤作りですので、IPOにおける各種審査を通過することはめちゃくちゃ重要で難易度の高いことではあるものの、それ自体を目的とするものではありません。

さて、リストのタスクに話を戻すと、N-3期に必ず実現しないといけない重要課題は、監査法人契約(ショートレビュー)の締結とそれに付随した経理責任者の採用です。
※監査法人契約の実務については、以前に書いたnoteをご覧ください。

詳細は割愛しますが、N-3期末の決算から監査法人監査(期首残高検証)が始まり、上場企業水準での決算が求められます。よって、監査法人とのやりとり(その先には開示資料や規定類の整備など)をお任せできる経理責任者の採用が出来るかどうかでこの先の安定感が大きく変わってきます。
さらにはN-2期以降で本格化する各種整備と運用を見据えた人事責任者やIPO実務担当者の採用に力を入れつつ、事業固有の重要な事象(ノックアウトファクターになりうることも含めて)の対処に集中することになります。
後述しますが、N-3期の後半からはIPOに向けた体制整備プロジェクトを立ち上げ、担当者(兼任でもよいので)を配置すると安定感がかなり増すという印象です。
また、機関設計方針(監査役会or監査等委員会)について、これも奥深いテーマなのでいつか触れていきたいですが、マニアックすぎるので割愛します。ただ、どちらを選択するかによって、役員(独立社外取締役と社外監査役)の採用方針が大きく変わるため、ある程度の方向性を経営陣と議論しておくと良いと思います。

【Tips_管理部門の採用について】

今もなおど真ん中のテーマですが、もっと早めに動いておけば良かったなと思うのは採用でして、事業成長の角度が高ければ高いほど、その広がりに応じた各種チャレンジや業務が増えて未整備事項が積み上がっていくことと、経理や人事・内部監査や常勤監査役など専門分野もバックグラウンドも異なる高度な知見を持つメンバーの採用をする必要があるものの、限られた社内リソースや原資ですべてを満たすことは出来ないため、外注も含めた組織体制を構築することとなります。※さらには採用後のオンボーディングが必ずしもすべてうまくいくとは限らないので、立ち上がりに時間を要する場合のリカバリ期間も念頭において動く必要があります。
よって、管理部門立ち上げにおける重要なタスクとして部門責任者は採用と組織作りにコミットし、1年先に起こるであろうことを予測しながら採用と組織作り活動を行い続けるのは必要だと感じています。

ディープダイブーN-2期の過ごし方ー

N-2期の過ごし方_page-0001

N-2期は、1Qで監査法人による決算の監査(期首残高検証)が本格化します。そして、主幹事証券の決定を目的としたビューコン、その後の約3か月間に渡る証券会社の予備調査とフォローアップ対応などのイベントが続きます。
その裏側で、財務状況によっては資金調達活動が始まるため、常になんらかしらの形で外部からのQ&A対応をし続けることになります。
この時期になると一人ですべてのタスクをこなすことが物量的に耐えられなくなるため、採用を進めて管理部門責任者はある程度余裕を持たせた状態で臨むと安定感が増します。いずれ忙しくなるのは確実ですし、このタイミングで仕事を抱え込みすぎているのは良くないのだと思います。(自戒の念を込めて)
また、管理部門メンバーのスキルセットや充足度によって大きく影響を受けますが、規定類の整備、内部統制資料(J-sox3点セット)の作成、決裁権限の整備と稟議システム(ワークフロー)の導入、人事制度や勤怠管理の2要素チェック(入退室ログチェックなどを用いた牽制機能)導入など様々な整備事項があることと、それらを踏まえた主幹事証券や常勤監査役との対話や各種進捗管理を行う必要があるため、ハブとなる担当者の採用(配置)は重要なポイントであると感じており、ここからがチームとしての活動が本格化していきます。
また、ここでは簡単に触れる程度のとどめておきますが、規定類の作成と内部統制資料の作成は、オペレーションの実態を把握しあるべき形を議論しながら作成していくことになるので、オペレーションの整備状況や担当者の知見にもよっては効率的に作成できるかもしれませんが、作成する量が多いこともあってなかなか時間と労力がとられます。これは早めに出来上がって困ることではないので余裕をもって着手することをお勧めいたします。

規程類等の一覧_page-0001

主幹事証券の予備調査について

実際に予備調査を行うまで、その重要性について実感が湧かないかもしれませんが、このイベントはIPOを成功させるにあたって非常に重要なモノになります。
本件で行うことは、アサインされた主幹事証券の公開引受部担当者と約3か月間に渡って自社のノックアウトファクターや管理体制における課題の洗い出しを行い、自社の現状を管理部門含めた経営チームが正確に認識すること。そして、東証審査に耐えられる体制を共につくりあげていくパートナーとして公開引受部担当者と信頼関係を構築することにあります。
経験豊富な方が担当としてついていただければより安心感が高まりますが、必ずしもそうとは限らないですし、管理部門からの開示情報が不十分な場合はいくら優秀な担当者でもやりきれず、後々になって大きな問題があらわれるような禍根を残すことになります。よって、IPOの成功という目標達成に向けた対話を長期に渡って行うパートナーとの第一歩として我々自身が真摯に臨む必要があります。

独立社外役員と(常勤)監査役の採用について

機関設計方針と経営チームが必要とするスキルセットによって大きく変わりますが、少なくとも監査役会設置会社では独立社外役員1名、監査役2名(うち1名は常勤)の選任が求められます。※非常勤監査役は最終的に2名選任が必要
そして、どちらも重要なテーマですが、管理部門の運営に大きく影響のある常勤監査役の採用について触れたいと思います。
常勤監査役の採用はリファラル(VCや金融機関)を中心に、時にはエージェントに支援いただきながら進めていきますが、ジョブディスクリプションの難しさと採用タイミング、報酬のバランス、そもそもの母集団の少なさにより苦戦している事例をお聞きすることはあります。
これについては特効薬はないので候補者の方に広く何度もお会いして信頼関係を築いた上で至らぬ点の多い当社の支援をいただくことが大切だと思いますし、個人的にはスキルセットや肩書などの目に見えるモノよりも信頼関係でありビジネスモデルへの共感、相性、尊敬できる方であることに重きをおくことをお勧めいたします。
※これは採用全般だけでなくステークホルダーとの関係構築全般に言えることかもしれませんね。。リソースや知見が常に不足する我々は社内外の様々な関係者に支えられていることを感謝しないといけないといつも思います。
いずれにせよ経営チームより1歩も2歩も先を見たことのある経験豊富な方が加わることは、より経営の視座が上がる重要な機会となりますので、直前々期から積極的に取り組むことでガバナンス強化の成果を強く感じられるのではないかと思います。

最後に

つらつらとリストに書いているものの一つ一つのタスクが重要な深いテーマで、これらをゼロから立ち上げていく方々(弊社メンバーも含めて!)には尊敬の念が尽きません。自分自身もしっかりと経験を積み微力ながら業界に貢献していければと思いますので、また時間が取れたら備忘録を残していきたいと思います。
また、同様のテーマでお困りの方がいらっしゃいましたら是非情報交換をさせてくださいませ。

さて、簡単にではありますが、採用案件のご案内です。
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