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私が好きなロゴデザイン

好きなロゴデザインはたくさんあるけど、その中でもぼくにとって際立つ存在なのが、KOSÉのロゴです。初めて見たのは、大学生のころ。テレビCMに流れてきたそのロゴを見た瞬間、ふわぁ~~と感嘆の声が出ました。

丸みのある二つの四角形で構成されたシンプルなデザイン。右の四角をわずかに傾けることで「K」を表現する技法。ロゴのかたちが化粧品のコンパクトを想起させるシルエットであることも面白い。デザインを学び始めたぼくは大きな刺激を受けました。

このロゴをデザインしたのは、ニューヨーク出身のソール・バス(1920-1996)。グラフィック・デザインに革命を起こした男とも呼ばれた巨匠です。映画のタイトルデザインでの実績が特に有名ですが、企業ロゴに関しても多くの名作を残しています。紀文やミノルタ(現・コミカミノルタ)など、日本人にもなじみ深いロゴも多いです。

ソール・バスの作品は、シンプルで洗練されたデザインが特徴。装飾を極限まで省き、重要な要素を際立たせることで、印象的なデザインを生み出しています。

この、シンプルで洗練されたデザインというのが難しんですよね。特にシンプルを突き詰めたデザインは勇気がいります。下手をすると手抜きと思われてしまうからです。味付けは最小限にして旨味を引き出す料理みたいなものでしょうか。

例えば、料理人がとても上等なマグロを手に入れたとします。変に調理せずに、刺身で食べるのが一番ってヤツです。しかも醤油じゃなくて、塩をぱらりとまぶしてパクっと食べるとマグロ本来の味が口いっぱいに広がって……。あ~、想像するだけで日本酒が呑みたくなりますね。

これがお寿司屋で出てくるなら問題ありません。「さすが大将、いいネタだね」とお客さんも満足するでしょう。でも、イタリアンのお店だったらどうでしょうか。たしかに美味しいけど、これはイタリアンなの?と疑問に感じる人もいるはずです。

塩で食べるのが一番だとしても、シチュエーションに合わせて最適な調理をする。シンプルなデザインを目指すとき、デザイナーにはそんな心構えが必要だと思うんです。

その塩梅がソール・バスは絶妙に上手いんですよね。最小限の要素で構成されたデザインは、シンプルながら独自性があり印象的です。光をモチーフにした5本のラインが重ねたレンズにも見えるミノルタのロゴ。紀文のロゴもインターナショナルな雰囲気もありながら、家紋という日本文化の象徴にも見えます。シンプルでありながら、見るひとの想像力を刺激する素晴らしいデザインです。

デザインは余白が大事とは言われますが、見たひとが空想する余白を残すことも大切なんですよね。それがなかなかできないから苦労するのですが (^^;


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