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(3日目) ホントにサンタがやってきた! [#Xmasアドカレnote2019]

僕には年が離れたイタズラ好きな兄がいる。
兄が小学生の頃、紙粘土で作った毛虫を台所に置いて母を卒倒寸前にしたことがある。兄の図工の成績はいつも5だったから母も気の毒だ。
透明ボンドに赤い絵具を混ぜて固め、絨毯の上にこぼれたケッチャプのようにボトルと一緒に置いておく。「書斎でケチャップ使ったヤツは誰だっ!!」と父の逆鱗に触れたこともあった。厳格で怖い存在の父にイタズラをしてケタケタと笑う兄を頼もしくも思ったものだ。

幼稚園、年長組の12月
僕は同じ組の女の子から衝撃の一言を言われた。
「ねーねー、しってた? サンタクロースってホントはいないんだって。お父さんかお母さんがサンタなんだよ」
聞いた僕は反論するでなく、やっぱりそうか!と思った。
" サンタさんはそんなに高いものは買えないんだって "
" サンタさん、ゲームは好きじゃないみたいだよ "
サンタへの手紙を書くたびに言われるコメントに、「まるでパパとママみたいだ」と思っていたからだ。

その日、幼稚園から帰るバスの中で僕はワクワクしていた。「この秘密を教えたらパパとママは、きっとドギマギするに違いない」とニヤニヤしていたと思う。
バス乗り場で待つ母にただいまよりも早く言った。
「きょうノリちゃんからきいたよ。サンタクロースってホントはいないんだって! パパかママがサンタさんなんでしょ?」
その瞬間、母がなんと言ったか忘れたが、笑顔だったのは覚えている。
「パパが帰ってきたら聞いてみなさい」

その日ほど父の帰りが待ち遠しかったことはない。ビックリする父の顔を見るのが楽しみだった。

ピンポ~ン ♪

父の帰りを知らせるインターフォンが鳴った。玄関の鍵を開けに行く母を追い越して、父に向かって母に言った質問を繰り返す。

「そんなこと、あるはずがないじゃないか」

父は玄関の鍵を閉めながら、いつもと変わらぬ口調で言った。
あれ?と拍子ぬけする僕。父はサッサとお風呂場へ消えていく。

父も母も動揺した素振りを一切見せず、いつも通りの平日の夜が進んでいく。晩御飯は4人揃って食べるのがポリシーの我が家も、週に三回サッカークラブに通う兄の帰りが遅い日は3人ご飯だった。納得いかない僕はご飯を食べながら父と母に食い下がった。

「パパかママがサンタなんでしょ!?」
-さっきも言ったけど。そんなはずないよ

「うちにはえんとつがないじゃないか!」
-煙突がないお家は玄関からくるんだよ

「サンタさんひとりでおもちゃをぜんぶ、くばれないよね? へんだよね?」
-忙しいときは子供が寝る前から配ってるらしいよ

6歳児がどうあがいても大人を論破できるわけもなく、その日はモヤモヤしながらベッドに入った。

12月24日
その日も兄はサッカークラブで練習だった。
いつもより早く終わるから4人一緒に食べましょう、と3人でテレビを見ながら兄を待った。いつもなら夕飯の支度で忙しい母と一緒にテレビを見ることは珍しい。

コンコン ♪

玄関をノックする音が聞こえた。兄が帰ってくるにはまだ随分早い。

「おや?誰だろう? ちょっと見てきてくれないか」

父に促され玄関に行く僕。
するとそこには、金色のリボンがついた真っ赤な箱のプレゼントが置いてあった。

画像1

突然のことに慌てふためく僕。

「パパ!ママ!たいへん。げんかんにプレゼントがあるよ!!」
「えっ! ホントだっ!」
父も驚きの声を上げた。

今日は絶対寝ないで、パパが枕元にプレゼントを置きに来るのを見つけてやる、と息巻いていた僕にとっては完全な不意打ち。

「なんで? なんで? なんで??」

心臓が跳ね上がる。
ホントにサンタはいたんだ!
サンダルをつっかけて玄関から外に飛び出した僕はサンタが近くにいないか辺りを見回した。外はいつも通りの暗がり。誰も歩いていない。


興奮冷めやらぬ僕はプレゼントも開けずにはしゃぎまくった。
「サンタさんはホントにいたんだね!」
父も母も、だから言ったでしょ、と言わんばかりに笑顔で僕を見つめていた。


★★
★☆★

ピンポ~ン ♪

30分程すると兄がサッカーの練習から帰ってきた。玄関まで全力疾走をして、まだ開けてないプレゼントの箱を兄に見せる。

「おにいちゃん! さっきサンタさんがやってきたんだ! パパとママとテレビをみてたときにサンタさんがきたんだよ!!」

へぇ、と軽い返事をしながら家に上がる兄。いつもと違って兄の練習着が全く汚れてないことに6歳の僕は気が付かなかった。

この出来事のおかげで僕は長い事、サンタがいると信じていた。
サンタの正体をいつ知ったかは忘れたが、6歳のクリスマスイブの興奮は鮮明に覚えている。

今思えば、いつもと違うことだらけだった。
夕飯前に父と母と三人でテレビを見ることも、兄がいつもより大きいバッグで練習に行ったのも、練習着が汚れてなかったことも。
家族全員で優しいイタズラをしてくれたキラキラする思い出。

今度、実家に帰ったときに兄に聞いてみようか。あの日、サッカーの練習はあったのか?と。

兄は、「あったよ」とサラっと言うかもしれない。
「そんなことあったっけ?」とトボケルかもしれない。

どちらの答えでも兄らしい。



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「Xmasアドカレnote2019」、3人目は、こげちゃ丸がお届けしました。

さて、明日は誰でしょうか?
ヒントは  “つよつよ焙煎だんなが優しい珍呑みサンダー”
ちょっと難しすぎるかな…?

では、また明日 ☆.。.:*・゜

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