あなたの知らないデザイナーの世界①
グラフィックデザイナー、ファッションデザイナー、Webデザイナー。世の中には多くのデザイナーがいますが、こんなイメージを持たれてませんか?
「絵が上手で、いつも絵を描いてそう」
そういうデザイナーもいるにはいますが、それは特殊な例。イラストレーターやCGクリエイターなど、ある分野に特化したスキルで勝負してる人たちだけの話しです。イラストが得意なデザイナーというよりも、デザインができるイラストレーターと言った方がしっくりくるかもしれません。
実は多くのデザイナーにとって、絵を描く仕事はほんの一部です。クライアントとの打ち合わせや市場のトレンド分析、コンセプト立案からマーケティング戦略まで、デザイナーの担当業務は多岐に渡ります。今回は「未来洞察という仕事」をテーマに、絵を描く以外のデザイナーの仕事についてご紹介します。
デザイナーにとって、大事なスキルのひとつが「未来を洞察する力」です。といっても預言者のごとく未来を言い当てる訳ではありません。過去のデータや現在の事象を調査・分析して未来のユーザー心理や社会情勢を可視化するんです。10年後の未来を描くこともあれば、2050年という遠い未来を想像することもあります。
なぜデザイナーが10年後の未来を想像しなくちゃいけないの?と思われた方もいるでしょう。その答えは、デザインとアートの違いで説明できます。
この図は以前書いた書籍からの抜粋ですが、アートとデザインの最大の違いは、その目的です。デザインは課題解決のために存在しています。世の中の人が何も困ってなかったら、デザインは必要ありません。
売上が伸びない商品を売れるようにしたい
見づらいと言われてるWebを改善したい
デザイナーに仕事を依頼するとき、クライアントは必ず何かに困っています。その課題を解決することがデザイナーの仕事です。魅力的なキャッチコピーを考えたり、綺麗なグラフィックを描くことは課題解決の手段であって目的ではありません。「このグラフィックの良さが分からないなんて!」と自分の提案にダメ出しされて怒るデザイナーがいますが、それはクライアントの課題を解決できてないから修正が入ったんです。デザイナーが自分のことをアーティストと勘違いしてはいけません。
話しが脇道に逸れたので、未来洞察に戻しましょう。10年後にどんな世の中になるかなんて誰にも分かりません。それでも未来洞察は必要なんです。なぜなら大きな社会課題や環境問題は、時間をかけないと解決できないからです。10年後に慌てて準備しても間に合いません。
身近な例では地球温暖化による酷暑があります。暑い町として知られる熊谷では、2024年6~8月の猛暑日(最高気温が35度以上の日)が38日あったそうです。これは前年に比べ21日も多い数値。熊谷に限らず、全国で猛暑日は年々増え続けています。
冷感グッズで一時的な涼を取ることもできますが、それでは根本解決になりませんよね。日陰を増やす緑化計画、海風を遮断しないビル計画など長期に渡る解決策が必要になってきます。10年前に今の酷暑をリアルに想像できていれば、もっと有効な対策を取れたとは思いませんか?
まだ多くの人が気づいていない潜在課題に着目し、長期視点で根本的解決策を提案することもデザイナーの仕事なんです。クライアントは地方自治体や民間企業など様々ですが、未来洞察の仕事は10年前より確実に増えました。
では、デザイナーはどのように未来洞察しているのでしょう?
企業や組織によって手法は異なりますが、おおよそ次のステップで行われています。
プロジェクト定義: クライアントのニーズや目的を明確化
情報収集: 関連する社会動向、技術革新、ユーザー行動などの情報を収集
トレンド分析: 収集した情報を整理し、パターンや傾向を分析
シナリオ作成: 複数の未来シナリオを構築
アイデアづくり: シナリオをイラストや図表で視覚的に表現
プロトタイプ制作: 未来の製品やサービスのモックアップを作成
戦略立案: 短期・中期・長期のアクションプランを策定
一見するとデザイナーに関係ない言葉が並んでいませんか? でもこれは全部デザイナーの仕事なんです。すべてのステップを一人のデザイナーが行うことは稀です。情報収集が得意な人、ビジュアルが得意な人など各分野のスペシャリストがチームを組むことが多いです。
1のプロジェクト定義から4のシナリオ作成までを専門領域にするデザイナーのことをデザインリサーチャーと言います。デザインファームと呼ばれる、デザインを基軸にしながらビジネス領域も手がける企業の中には、シナリオ作成に特化したエディターを雇っているところもあります。彼らは絵を描く頻度は少ないですが、とても優秀なデザイナーです。
少し長くなってきたので今回はここまで。
次回は各々のステップを詳しく説明します。
↓ 第二回はこちら
カミーノさんの初企画への参加作です。書いてるうちに、文体がどんどん記事っぽくなっていきましたね。いま、WEBライターの仕事からは少し離れてるのですが、懐かしい気持ちになりました。
仕事の話しって、当事者にとっては日常でも周囲から見れば非日常なので面白いですよね。参加作が増えていき、色んな非日常が見れたら嬉しいですね!
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