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【娯楽の塵】COFFEEの類

乳飲料用スチール缶(コーヒー飲料)

推定投棄日 1985年ある日

1985年
スーパーマリオブラザーズ発売

 このゴミが山の斜面でたいして分解もされず五十年近く放置されている間、綺羅星の如く世に生まれたこの兄弟は絶えず人々に愛されて来た。この兄弟のいいところは深くないところにある。勧善懲悪、敵か味方か、考える間もなく死んで、またケロリと生き返る。深くないのがいい。娯楽なのだから。

 娯楽。特別な知識が無くても、優れた体力や技術が無くても、深く考えなくてもそれぞれで楽しみに興じることができるもの。メッセージ性などあってはならない。シンプルな勧善懲悪のみ。悪いやつをやっつけろ。お姫様を救え。間違っても「あのいい顔して優しそうなやつは本当は悪いやつかもしれないからやつの敵を倒してどう出るか見てみよう」みたいな動きを促してはならない。素直に楽しめない。

 素直なことだけで物事が進んで行けばとても楽だろうと思う。しかしこの世は理不尽で不平等で矛盾だらけなので、既に曲がったきゅうりに真っ直ぐな杭を打っても思い直して真っ直ぐになったりはしない。きゅうりは曲がりもすれば真っ直ぐにも育つ。けれどそんな理不尽や不平等や矛盾のせいで性根まで曲がりたくはないよな。そんな時は自分にとっての娯楽を見つけるのがいいかもしれない。ただ素直に楽しめるものを。

 想像する。この幾千と溜まった娯楽の塵はなかなかに色味を留めているものが多い。あの缶がやはり多いからマリオを作るのも難しくない。全部使って一体の大きい物を作る。アプローチに放したら、人気者になれるだろう。

 

 


 
 


 


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