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藍羽の異世界旅行記

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#小説

藍羽放浪記・・・17ページ目

藍羽放浪記・・・17ページ目

大蛇は頭が切断されたものの、気がついたら切断された頭部共々どこかへ去って消えてしまった。
倒せたということにはなっていないだろう。

昏睡状態の古雅崎藍羽(こがさき あいは)を店のソファに置いて、恭赤藍羽(うやらか あいは)と小鳥遊夏希(たかなし なつき)は現状の不明瞭な点について話をしていた。

「沢山聞かなきゃいけないことがあるけど…まずは助けてくれて.…ありがとう.…」

「別に助けたわけじ

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藍羽放浪記・・・16ページ目

藍羽放浪記・・・16ページ目

紫の炎に包まれ現れたその男は、僕を冷たい視線で見つめている。

「うや..…らか?」

彼の両の手には2本の刀が握られている。
いわゆる臨戦態勢というやつだ。

「まって!!違う!ボクジャないンだ!」

「分かってる。黙ってろ。」

恭赤はそう言うと腰を低くかがめてこちらに突進してきた。
思わず両腕で目の前を覆う。

こういう戦いの時どう動くべきかなんてものを妄想していた時もある。
腕を掴む。足を

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藍羽放浪記・・・15ページ目

藍羽放浪記・・・15ページ目

「七月がどこにいるかは知ってる?」

夏希から投げかけられた質問に対して
僕は頭の中で出せる情報を精査しながらゆっくりと口を開いていくことにした。

「…七月はこの世界じゃない別の世界にいる」

「どういう事?」

「パラレルワールドって分かりますか?」

「分かるよ。この世界にも異世界人って呼ばれる人達たくさん来るし。」

「そう…なら話が早いですね。」

「…七月は異世界にいる?」

「そうで

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藍羽放浪記・・・D.S.

物心ついた時から、僕には夢とか好みだとかは無かったんだ。

いつも誰かの背中を追い続けた。
努力も実らないことがほとんどだった。
やる気は人一倍あったつもりだ。
けど「本物」には勝てなかった。

僕の夢は「偽物」いや、「借物」と言った方がしっくり来ると思う。

周りが語る夢をそのまま、自分の夢ということにしていた。

空っぽの僕には、友達がいた。
いつもそばにいた友達。
名前も顔も分からない。

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藍羽放浪記・・・-???ページ。

藍羽放浪記・・・-???ページ。

俺には過去の「体験」がない。
産まれた時からこの体型だし、物心なんてものは産まれた時からついている。

だが、記憶はある。幼少期やここに至るまでの記憶。
記憶は、日に日に増えていった。
気味の悪い話ではあるが、記憶が増える度に「己の形」が確かなものになっていく気がして心地は良かった。

性格は比較的明るく、人に甘くて優しい。故に、友人が沢山いて、種族は問わず誰とでも仲良くなれる素質があった。

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藍羽放浪記・・・10ページ目【小説】

藍羽放浪記・・・10ページ目【小説】

星の都、アルカ・ナハトにしばらく滞在することにした僕は、宿屋を探しながら先程の老父の言葉の意味を考えていた。

「あの人には、僕の何が見えていたんだろう…」

そんなことをポツリとつぶやきつつ、歩く。
ここは繁華街のようだけど、噴水のあった広場よりも人が少ないと感じる。
1本の道の両側に様々な店が並んでいる。
魔法を売っているお店や占いのお店が多い印象を受ける。
これだけ同じようなお店があれば、

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藍羽放浪記・・・9ページ目【小説】

藍羽放浪記・・・9ページ目【小説】

星の都、「アルカ・ナハト」にやってきた僕は町の広場にやってきた。
広場は環状になっていて中心には星が映し出された大きな噴水があり
その周りのベンチに多くの人が腰かけて談笑している。

噴水の周り、少し歩いて人や建物の様子を観察してみようか。

街ゆく人たちの服装は様々で、目に付くだけで
星の黒いローブに魔女帽子の男女。
ロングコートの怪しげな雰囲気の男性。
指にはめるには大きすぎる宝石の付いた指輪

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藍羽放浪記 8ページ目

藍羽放浪記 8ページ目

2024年4月9日

満点の星空の下で一夜を明かした僕は、寝袋を片付けて「星の都」までやって来た。

本来の「星の都」の名前は「アルカ・ナハト」と言うらしい。
「アルカナ」と「ナハト」.…なのかな?

この街に来て何より不思議だったことは、街の境界線を越えた瞬間、周囲が真っ暗になったこと。

なるほど、この都ではずっと夜なんだろう。
となれば、星が好きな僕がやることといえば空を眺めることになる訳だ

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藍羽放浪記6ページ目【小説】

藍羽放浪記6ページ目【小説】

どれくらい経ったのだろうか…

そんなことを考えながらゆっくりと目を開ける。

「これが…知らない天井ってやつか…」

どこかの小さい部屋の天井が目の前に映し出された。
ゆっくりと体を起こして辺りを見回すと、小さいテーブルと食器の入ったガラス張りの棚があるのがわかる。

部屋の大きさ的に店員の休憩所・・・といった感じだ。
僕はソファの上に横になっていたようで、少し腰が痛い。

ガチャ・・・

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