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藍羽の異世界旅行記

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2024年5月の記事一覧

藍羽放浪記・・・D.S.

物心ついた時から、僕には夢とか好みだとかは無かったんだ。

いつも誰かの背中を追い続けた。
努力も実らないことがほとんどだった。
やる気は人一倍あったつもりだ。
けど「本物」には勝てなかった。

僕の夢は「偽物」いや、「借物」と言った方がしっくり来ると思う。

周りが語る夢をそのまま、自分の夢ということにしていた。

空っぽの僕には、友達がいた。
いつもそばにいた友達。
名前も顔も分からない。

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藍羽放浪記・・・-???ページ。

藍羽放浪記・・・-???ページ。

俺には過去の「体験」がない。
産まれた時からこの体型だし、物心なんてものは産まれた時からついている。

だが、記憶はある。幼少期やここに至るまでの記憶。
記憶は、日に日に増えていった。
気味の悪い話ではあるが、記憶が増える度に「己の形」が確かなものになっていく気がして心地は良かった。

性格は比較的明るく、人に甘くて優しい。故に、友人が沢山いて、種族は問わず誰とでも仲良くなれる素質があった。

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藍羽放浪記・・・12ページ目【小説】

あれから、20分くらい経っただろうか。
少し落ち着いた僕は、ゆっくりと顔を上げる。
どうやらカウンターに突っ伏してしまっていたらしい。
辺りを見回すと、先程まではカウンターに置いていなかったアロマキャンドルとグラスに入った水が、僕の近くに置かれていた。

(そうだ。夏希は…)

探そうとした僕だったが、探すまでもなく1つ席を開けた隣の席で袋を片付けていた。僕のこの症状自体も慣れたものではあるけど、

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藍羽放浪記・・・11ページ目【小説】

藍羽放浪記・・・11ページ目【小説】

星の都のとある喫茶店に入った僕は、自分の書きかけの小説に登場する「小鳥遊夏希」(たかなし なつき)に出会った。
口ぶりから、この喫茶店のマスターなのだろうか。

小鳥遊夏希は僕が彼女の名前を言い当てたことから、僕を怪しい者と認識したようで険しい表情で僕を見ていた。

「なんで…私の名前を知っているんですか?」

「あ、え…っと」

適当な言い訳が見つからず、どうすべきか必死に思考をめぐらせた。

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