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連れ去り別居に遭ったときの道しるべ~法的手段編

ある日突然,仕事から帰ってきたら,いつも駆け寄ってくる子どもの姿がなかった・・・から,始まる親子断絶危機に直面したとき,の初めての法律相談,ないしはセカンドオピニオンに際しての心構え的なことをお伝えした

起こり得るべき未来を占い,ある意味一旦は絶望のその先を味わってもらう必要があるかもしれないな,とよぎってしまったのかもしれない

最悪数年来の断絶が待っているかもしれないという知識があれば,比較的早期に30分でも親子の再会が果たせたり,とりあえずの元気な様子がわかるだけでも,ある意味喜びさえ感じられるかもしれないからだ

その一歩が,次の活動力になり得る


冒頭の事態に直面したとしても,意外にバリエーションがいくつかある

すでに弁護士がついているのか否か

転居先が実家なのかそれ以外か

転居先に関する情報の秘匿の有無

行政の関与の有無

連絡手段の有無

あるあるなようで,しょっぱなから,状況が様々ある

時には,駆け落ちに子どもを同伴する,というようなことも当事者同士の経験談としては珍しくないようである

それゆえ,全件において,最初に取るべき手段自体が悩ましい

すでに弁護士の受任通知とともに,調停の申立があり,呼出状が速やかに届くようなスピーディな展開もあれば,そうとは限らないこともある

その弁護士のキャラクターによって,その後の運命が左右されることもある

面会交流の開始時期にも大きな差が出たりする

最近は,早期離婚を実現するためには,面会交流の論点を早期解決していくことも意義があることの認識が普及されているからか,あえて面会交流の提案があることさえある

喜ばしいようで,結局は,月1回数時間程度にとどまる場合もあるから,悩ましい

かといって,強硬な手段に臨めば,かえって,硬化しかねない

潤沢な交流機会を確保することを目指しつつ,しかし,あくまで法が約束していないということも自覚しておかなければならない

あくまで,潤沢な交流は恩情によって実現するものでしかない

世界が標準とする共同親権制のある国では,子の利益に資することが当然の原則になっているにもかかわらず,だ

日本では通用しない

状況に応じて悩ましく慎重であるべきではあるものの,基本的には,冒頭の事態に直面したときに,検討すべきは,3点セット

監護者指定・子の引き渡し・その保全

ただ,誤解を避けるべきは,この手続きをとる目的である

子どもを絶対に取り戻す・・・ことは期待しない

願わくば,それが叶うことが望ましいし,それが目的のひとつであることを否定しない

失われた日常を取り戻したいという希望も当然だ

一方で,緊急生命維持装置のごとく,手続きを発動しても,最悪の結末に近づいているのも事実であり,冷静になるためのものでもある

この手続きが,かつては珍しかったからか,申立を受けた相手方側弁護士も不慣れな様子がわかることがある

離婚事件との区別がつかないのだ

あくまで,子の養育に関する環境の問題なのに,夫婦の問題に流れていく

実は,これが,3点セットの手続きをとる一つの意味である

通常,別居間もなく,離婚協議をする場としては,調停前置主義のため,家庭裁判所での調停での協議では,申立の動機等が具体的ではなく,経緯の説明も口頭で伝えられるだけなので,反論のしようがないもどかしい事態に陥る

不気味なのは,DVがあって,,,という評価的な説明にとどまることである

何があって,DVであるというのか,その具体的な何かの説明が欠くことがある

これは,調停手続の特徴に引きずられているのかもしれない

あくまで合意がないと離婚が成立しない分,あえてオブラートに包むという癖かもしれない

しかし,その調子で,離婚訴訟に移行しても,結局何をもってDVと言っていたのか謎のままといったケースもあり,よくわからない敵と闘わされる内に,別居期間が積まれ,すでに夫婦関係は破綻しているという評価を招き,離婚していく(たいてい現状の状態で親権も失われていく)のだから,延命措置に限界があることになる

これを避けるためにも,初期段階に,書面で,相手の言い分を獲得していることに意味があるのである

行政の相談支援者が聴き取ったままの勢いで作成されたような訴状も見たことがあるが,しかも,証拠が一切なく,それでも離婚判決に至ることもある

しかし,3点セットの「相手方」として「答弁書」として,主張するには,そのノリでは無理が出てくる

なぜ別居したのか,親子関係の実情について,「相手方」の立場で表現しなければならないから,どうしても受け身になってしまったり,勢いがそがれる

それでも,申立人側(別居親)からしたら不愉快かもしれないが,でっち上げの程度を抑制することが可能だ

離婚して,親権をとり,あわよくば慰謝料もとって,早期に離婚しようという目的で勢いよく,別居親のディスリをすればよいのとはテンションが違う

あまり重きを置かれていない点が課題として指摘されるが,子の監護に関する手続きではやはり,フレンドリーペアレントルールが無視されていない

とりあえず配偶者のことを悪く言い切っておけばよかった離婚案件とは異質で,子の監護にあたって,どういう養育計画にあるのか,面会交流への理解等を早期に検討させられることが,その後の離婚問題にも影響していくことが想像しやすいだろう

離婚の依頼を受けて,婚費を請求しながら進行していこうというつもりでいたのに,養育計画の検討,面会交流についての検討を余儀なくされたとき,最初はアレルギー反応が示されても,長期戦の中で効果を発揮するかもしれない

そういうわけで,3点セットには次の効果が期待できる

万が一でも子が戻ってくる可能性があること

長い係争が始まる初期段階でイニシアティブを握ることが可能であること

客観的に,子の様子を知ることができること

面会交流の早期実現が叶いうること

自身の監護体制の整備が面会交流においても有益であること

比較的潤沢な面会交流の債務名義を確保しえること


場合によるので,全部が実現するほどの万能ではないとはいえ,やはり3点セットにはポジティブな効果が期待できる

監護者指定で敗北して,その後の親権争いでも負けが決まる,,,とも限らない

もちろん,事案によってのさじ加減も大切にはなってくる

そうはいっても,子の奪い合いの面が目立ってしまい,葛藤を高めかねないリスクも実際ある・・・もちろん,そのための配慮を尽くしていくのだけど

場合によっては,タイミング自体を慎重に選ぶと,取るべき手段のカードが増えるともいえる

ケースによるのは当然として,ひとつ言えるのは,このケースごとに絶妙に選択肢を検討できる弁護士自体が珍しいということだ

多くは,まず3点セットの検討さえしないことすらある

また,とりあえず申し立てたはいいが,ゴールを見誤り,調整できず完全敗北をかえって加速してしまいかねないこともある

ある程度,一生懸命取り組んだ半面,八方塞に追い込まれるようなこともあったり

それゆえ,選択肢の提案があるだけでも,相談者に喜ばれることもある

勝ったものが笑うのではなく,笑う者に勝利が導かれる

そんな世界

子育ての冒険は一筋縄ではいかない

だから,やりがいもある

大切なわが子の幸せを願い,冒険はつづく


恩送り,よろしくお願いします


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