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法制審議会家族法制部会第15回会議議事録8~原田委員・水野委員・窪田委員・大山委員・落合委員・池田委員

 共同親権の報道もふつーになってきた

ちょっと事故りながらも、無事拝聴

見逃し部分はここで補完

ウケは悪いようだけど

中間試案案どまりだけど、各種資料公開☑

議事録16も☑

いろいろな視点をニュートラルに勧めていく


議事録15を読んでいく

原田委員、窪田委員、それから大山委員、落合委員という順番でお願いをしたいと思います。

○原田委員

 私も、補償的要素のことを入れていただきたいと思っているんですが、まず、その前提として、平成8年の議論をされてこういう結論が出ていると、それでいいのではないかという話は、では、今の実務はこれに沿ってされているという認識なのかどうかというのが、ちょっと私は疑問なんですね。
 この財産分与については、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素があると習ってきましたけれども、現実に実務でやっていることは、清算的要素のみといってもいいのではないかと思っています。慰謝料について若干協議されることはありますが、結局慰謝料を請求する場合は別に請求を立てるので、財産分与の中に入れていないと。そして、財産分与の実務においては、今、夫婦財産一覧表とか財産分与対象一覧表とかいうものを作って、それぞれの名義の財産を挙げて、別居時の財産の価値を考えてそれを合算して半分にするという実務が一般的ではないかと思います。本当に清算的要素だけでやっているのではないかと、私は感じています。なので、これを入れることによって、今の実務が変わるという前提なのか、今の実務はこれに従ってやっているので、それでいいのではないかということによって、かなり違うのではないかと思います。
 そういう意味では、私は、補償的な要素というのがきちんと入るような規定にしていただきたいと思いますし、その平成8年のときの答申でも、そういう清算的要素と扶養ないしは補償的要素、そして慰謝料的要素を包摂するものとして定めるとなっていたのではないかと思います。
 また衡平ということについて、何が衡平なのかということも、一言申し上げたいと思います。清算的要素ということを考える場合、例えば、住宅ローン付の住宅、これ、プラスマイナスするとゼロになるとすると、財産分与すべき財産はないとされてしまいます。あるいは、借金がある、定期預金がある、これもプラスマイナスするとゼロであれば、分与すべき財産はないとされていますが、稼得能力を失っていない人は、その財産を保持したまま、借金、住宅ローンを少しずつ返していけば、結局その財産を自分のものにしていけるわけですけれども、稼得能力がない人は、何ももらうものがないし、もちろん払うべきものもありませんけれども、例えば、パートで厳しい生活をしないといけないとか、あるいは生活保護を受けなければいけないとかいうような形になって、果たしてこれが衡平なのかという問題があると思います。
 それから、もう一つは、後で財産開示の問題が出てきますけれども、開示のところで、婚姻前に取得した財産も開示しろというのがあります。婚姻前に取得した財産、あるいは婚姻後でも相続によって得た財産は、夫婦で共同して得た財産ではないので、財産分与の対象財産ではないとされていますが、では、それがあるから、扶養的な要素、補償的要素を考えないでいいということにつながっていくんでしょうか。元々自分が持っていた財産や、あるいは夫婦が関与せずに得た財産を食いつぶして離婚後の生活を保持していく人と、それを確保しながら新しく得た収入で生活していく人がいるというのは、前者の人は、婚姻中に努力して財産を形成しても、それについて何らの見返りがないということになって、果たしてこれが衡平なのかと思います。清算的な要素を考える場合でも、衡平とは何かということをきちんと考えるべきであるし、それを補うという意味でも、補償的な要素というのが明確になるような規定の仕方をするべきではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、幾つかの具体的な場面を想定した御意見もありましたが、全体としては、①、②、③が現在考慮されているかというと、必ずしもそうではないので、②を改めて強調する必要があるという御意見を頂いたと思います。
 繰り返しになりますけれども、前回の議論の際に、ここのところについて皆様の意見が一致しないということで、事務当局としては、従来使われている衡平という言葉を使った平成8年案を掲げている、扶養的あるいは補償的要素は、この言葉に含まれているということで出されていると、私は受け止めておりますけれども、窪田委員からの御発言の前に、この辺りの経緯をご存じなのはもう水野委員だけなので、もし差し支えなければ、平成8年の案のこの部分の言葉遣いについて、少し補足していただけますか。


○水野委員

 水野でございます。平成8年の身分法小委員会の生き残りでございます。私は、補償的要素という要素を基本的に考えなくてはならないと考えておりました。私の意見も取り入れていただいて、こういう形になった記憶がございます。
○大村部会長 様々な意見の集約の結果が、この衡平という言葉に示されているというのが私の理解なのですけれども、そのように受け止めてよろしいですね。
○水野委員 はい、私はそのつもりでございます。そのように記憶しております。
○大村部会長 ありがとうございます。

○窪田委員 

もう手を下ろしたつもりだったのですが、1点だけ、むしろ具体的な意見ではないんですが、進め方について発言させてください。前回棚村先生からも御指摘があったかと思うのですが、かなり限られた状況の中で審議を進めていくという中で、できるだけコンパクトな発言を心掛けていただくというのは、やはり必要なのではないかなという気がいたします。それをお願いしようと思って、先ほど手を挙げました。
○大村部会長 ありがとうございます。皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

コンパクトに

○大山委員

 ありがとうございます。今ちょっと議論になっております補償というところにつきまして、正に子育て世代の方の感覚、若しくは、これから子育て期に入っていくような若いカップルを想定しますと、必ずしも女性が経済的に弱い立場にあるという前提は、解決する方向を国も目指しておりますし、実態もそちらの方向に進んでいるということだと思います。もっと欲を言えば、むしろ今後想定されるものとして、女性の方が経済的に自立をしていて、男性の方がむしろ職を辞して家庭に入るという選択肢も、そういったカップルももう出てきております。そういった中で、どこまでどう補償するのが本当にいいのか、足元を見れば、もちろん女性の方がまだまだ置かれている環境は厳しい現実があり、そこを救わなければいけないということは重要ですけれども、もう少し中長期で、これからどうあるのかといったところに重きを置いて考えていただいた方がよろしいのかなと思いました。そう考えますと、どこまで補償といった概念を本当に入れるのかどうかといったところは、慎重な議論が必要かなと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。大山委員からは、先ほどの武田委員の基本的な発想と共通の方向の御意見を頂いたと理解をいたしました。書くか書かないかというところにつきましては、繰り返しになりますけれども、両方の対立した御意見が出ているということなので、全体として規定を置くということであれば、どこかで折り合いをつけるということになるのかと思いますが、それは先の問題とさせていただいて、引き続き御意見を頂きたいと思います。

○落合委員

 武田委員、大山委員から御発言のありましたことに関連してなんですが、社会学者として、実態を知っているという立場から発言させていただきます。
 お二人のおっしゃったことは、世界の流れとしては、世界というかヨーロッパ、北米の流れとしては、かなりそういうことで進んでいるんですが、ヨーロッパといっても、中央、東ヨーロッパは入りません、西ヨーロッパ、北欧と北米の傾向としては、その方向に進んでいます。日本でも女性の経済力が高くなっていて、これからはますますそうであろうという流れで御発言いただきましたが、それは、実態を見ている立場からしますと、やや楽観ですね。その方向に向いていますけれども、それは2010年代からです。ですから、ヨーロッパで90年代ぐらいまでに起きましたことが、日本でなかなか起きなかったというのが、日本の状況です。ですから、2010年までは本当に状況が変わらなかったというのが、日本については強調するべきことです。
 武田委員がおっしゃったような、これで男女の稼得能力、平等になっていくだろうからということ、私、1990年代にはたぶんそうだろうと思っておりまして、でも、それが全く楽観だったというのをその後に強く反省しているところです。ですから、今もそれを前提に話をするのは危険であると思います。2010年代から変化してきましたから、その方向も出てきているということは考えていいと思いますけれども、ずっと女性が経済的弱者であるべきだとは思いませんけれども、日本の現状は甘くないということを、前提に話されるべきだと思います。
 正社員であっても、女性で離職する人たちがいると、それは減ってきているけれどもというお話ありましたね。育休とかは整いましても、結婚で離職するのというのは、やはり引越しなんですよね。男性の住んでいるところ、仕事をしているところに女性が居を移すということで、どうしても仕事を辞めなければいけないというケースが、それはかなりあります。ですから、そういうことは残っていくでしょう。1回辞めた後に、正社員だった人も非正規になるということが多く起きます。そのことによってどれだけ所得を失うのかについては、試算があります。公的に出された試算もありまして、結婚前まで正社員だった人が、その後非正規になった場合、あるいは無職になった場合、生涯所得のどのぐらいを失うかというと、何千万円になるという試算があります。このようなことは、交通事故のときなどにも試算をされていることですので、補償の計算は難しいということはないと思います。
 私もやはり、補償という考え方は必要だと思うんですね、今言ったような意味でですね。結婚や出産によって仕事を辞めるのは、女性の都合ではないんです。夫の都合で辞めていることが結構多いです。夫は居を移したくないなどということですね。ですから、2人で合意であったとしても、補償という考え方を書き込むべきだと思います。ですから、この辺りをきちんと説明を書き込んでほしいと思うんですね。
 今のことと、それからもう一つは、寄与ということで、家事、育児、あるいはいろいろな介護、ケアなどによる寄与というものを明示できるように、きちんと書き込むということも、是非したいと思います。これをぱっと読むと、寄与の程度というようなことを見たときに、収入のことかなと、早合点してしまう人がかなりいると思うんですよね、国民の中で。でも、収入が得られるためには、家事をしている人が必要なわけで、それも本当に大きな寄与なわけです。それが明示できるように書き込むべきだと思います。しかし、それをしようが何だろうが、この3によって現実にやっていることは半分にするということなのなら、変わらないのかもしれませんけれども、その意味を書き込むべきだと思います。今のような補償とか、それから家庭での寄与というようなことを考えますと、半分ではなくて、3分の2は女性が取るとか、あるいは仕事を辞めた人が取る、女性とは限りませんね、働けなかった人が取るというのでもいいぐらいだと思いますが、それは、今すぐ理解が得られるともちょっと思えませんので、ただ、そういう考え方もあり得るということを、発言しておきたいと思います。ですから、そのことをとにかく明示するということを、この際しておきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは、まず、女性の離職についての実情についての認識を示していただきました。その上で、具体的な提案としては、基本的には戒能委員の御提案の方向に賛成されていると理解させていただきたいと思います。

厳しい現実


○池田委員

 弁護士の池田でございます。総論で一つ、各論で4点ほど申し上げたいと思います。
 まず、総論ですが、平成8年答申との関係なのですが、確かにその当時、いろいろな議論があった末に出された答申ですので、尊重すべきだというのは理解しております。しかし、その後のいろいろな実情を踏まえて、今議論しているわけですから、今の議論をきちんとこの資料の中に反映をしていただきたいなと思います。補償という文言を入れるかどうかというところで、両論があるというところは理解ができましたけれども、ですので、その補償というものを入れるという案もあるんだということを、整理の段階で入れていただければ有り難いと思います。もう議論がどちらともつかないので、「財産上の衡平」という文言にしたという平成8年の経緯があったかもしれませんけれども、ここではまだ議論が尽くされていないと考えますので、そのような整理の段階で配慮をしていただきたいなと思います。以上が総論です。
 各論についてですが、16ページの2のところの考慮要素の中で、①の末尾、財産の額というところは、額だけではなくて、財産の性質というのも入れていただければ有り難いと思います。実際、実務の中では、対象財産が不動産であるのかとか、あるいは換価がしやすい財産なのかといったところを、考慮して結論を出しているように思いますので、性質というのは入れていただく必要があるかなと思います。特に、私が何度もこれまで申し上げてきましたとおり、学資保険については、財産分与の対象にしないでほしいという、親権者となるであろう親の方からリクエストが多いところでして、そんなところへの対処というのも、性質という文言を入れるところで、一定の配慮ができるのではないかというところがございます。
 それから2点目ですが、4の居住用不動産に関する規律というところです。ページ数で言えば21ページ以下ですけれども、配偶者の居住の保護、それから居住用不動産の処分の制限、いずれも特段の規律を設けないという提案がされていますが、これについては、なお議論の俎上にのせていただきたいというのが意見でございます。一つ目の配偶者の居住の保護については、この補足説明の中で、まず、相続の場面、相続の配偶者居住権と違って、基礎付けるものがないということが書かれていますけれども、居住不動産が財産分与の対象となる不動産であれば、そこには一種の実質的な共有状態というものがあるわけですから、そこに何らかの居住継続の利益を見るということは可能ではないかと思っています。それから、ちょっと補足説明の中の細かいことになるんですけれども、22ページの第2段落のこれに対してのところの4行目の末尾、また婚姻解消後に元夫婦間の法律関係を残すことは好ましくないという指摘があるということですけれども、正にこれは、不動産の名義人である配偶者が、居住している他方配偶者を立ち退かせようとするときの論理なんですね。これがあるから、やむなく出ていくという実態があって、それが子の居住環境を奪ってしまうという実態もありますので、この指摘を乗り越えるための議論を今しているんだと思っています。
 それから、その後についても、DVや虐待などの場合にも、その関係が続くことについて配慮が必要であるという指摘ですけれども、こういったケースでは、被害を受けている側は居住を継続しないで逃げるというのが、実務では一般かなと思いますので、これらの点というのは、余りマイナス要素に働く議論ではないのではないかと考えています。
 それから、次の居住用不動産の処分の制限についてですけれども、これについては、23ページの第2段落、「もっとも」辺りでいろいろな問題点が指摘されていますけれども、これは、この問題を考えるに当たって、いろいろな諸利益に配慮して調整が必要だということを指摘しているのであって、その処分制限の規律自体を設けるべきでないということを、積極的に基礎付ける事情ではないと考えていますので、引き続き議論をしたいと思います。以上が3点目ですね。
 それから、4点目は、分割訴訟との関係ですけれども、これは共有名義の不動産で、財産分与の対象になる不動産について、その財産分与の協議をしている途中に、共有物分割訴訟等が起こされてしまうということが問題ではないかということが言われていますが、問題がある場合には権利濫用理論によって制限する場合があるというので、従来どおり解釈に委ねてはどうかということが提案されています。しかし、実務家としましては、権利濫用という一般条項というのは、非常に適用範囲が不明確で使いづらいというところがあります。類型的な問題としてこの問題を指摘できるのであれば、一般条項ではなくて、この際整理をして、引き続き議論をしていくという方向性がよいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、大きく分けると二つかと思います。一つ目は、なお議論のテーブルに載せ続ける必要があるという点について、幾つかの指摘がありました。先ほどから意見の対立がある補償ということについて、意見の対立はあるのですが、もう少し頑張ってみてはどうかということだったかと思います。それから、4の居住用不動産、7の共有物分割についても、もう少し考えられないかという御指摘だったかと思います。
  二つ目に、以上とは別に具体的な問題としては、考慮要素の中の第2の2の①の最後のところの財産の額に、性質という文言も加えていただきたいという御要望だったかと思います。

けっこういろいろ議論があるね

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