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民間法制審案を読む2 第3前半

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第3 父母の離婚後等における子の監護者に関する事項の決定に係る規律


父母が離婚する場合に引き続き共同して親権を行うこととする規律を設けることに伴い、離婚時に「子の監護をすべき者を定める」とする民法第 766 条第1項の規定を削除する。 その他、父母の共同監護を前提とする離婚後共同親権制の概念に反する監護者に係る制度は、これを廃止する。



(補足説明) 現行民法において、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき 者…その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」(民法第 766 条第1項)と規定し、離婚時には、親権者とは別に監護者を決定することとさ れている。 監護権は親権の一部を構成している(民法第 820 条)以上、離婚後単独親権制の下、父母の一方が親権者と決定した場合には、監護者も同時に決定するのが通常である。
 しかし、離婚後単独親権制のもと、例外的に、親権者と監護者を父母で分離する(親権の分属)運用もあることから、従来は、このような規定を設ける意義はあったものと考えられる。 離婚後の親権の分属については、旧民法において、家長の父親が、婚姻中及び離婚後も、(監護権を含む)親権を行使すると規定する(「子ハ其家ニ在ル 父ノ親権ニ服ス」(旧民法第 877 条)、「親権ヲ行フ父…ハ未成年ノ子ノ監護及ヒ 教育ヲ為ス権利ヲ有シ義務ヲ負フ」(旧民法第 879 条))一方、実際の子の監護 は母親が多く行っていたことから、離婚時に(監護権を含む)親権を父親が有するとしつつも、監護は母親が引き続きせざるを得ない場合には、協議により、監護者を母親と定めることを可能とする規定「協議上ノ離婚ヲ為シタル者カ其協議ヲ以テ子ノ監護ヲ為スヘキ者ヲ定メサリシトキハ其監護ハ父ニ属ス」(旧民法第 812 条)に由来する。 このように、民法第 766 条第1項の離婚時の監護者指定の規定は、旧民法の 家制度に基づく単独親権制を淵源とするものであり、離婚後共同親権制を導入する法改正に伴い当然不要になることから、民法第 766 条第1項の規定から 「監護をすべき者を定める」とする規定を削除する。 それに伴い、民法第766 条の監護者指定の規定を根拠として定められた諸制度についても廃止する。例えば、婚姻中、子の監護者を指定する審判が裁判所において行われているが、これは、民法第 766 条などを根拠とする旨規定されている(家事事件手続法(平成 23 年法律第 52 号)別表第二の三の項)ことから、これを廃止する。 その他、父母の共同監護を前提とする離婚後共同親権制導入の法改正に併せ、概念上相容れない制度は全て廃止する。 なお、離婚後及び婚姻中を問わず、一方の父母を監護者として指定する制度を廃止しなければならない別の理由として、監護者として指定された親は子の連れ去りができるようになることが挙げられる。 監護者として指定された父母は、日本が平成 26 年に署名した国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(以下「ハーグ条約」という。)で禁ずる国外への連れ去りも合法的に行うことが可能になる。 ハーグ条約は、「いずれかの締約国に不法に連れ去られ…ている子の迅速な返還を確保すること」を目的とする条約である(ハーグ条約第1条第 a 項)。 その上で、「子が常居所を有していた国の法令に基づいて個人…が共同又は単独で有する監護の権利を侵害していること」(ハーグ条約第3条第 a 項)及 び「当該連れ去り…時に…監護の権利が…現実に行使されていたこと」(同条 第 b 項)に該当する場合に「不法な連れ去り」とすると規定されている。 
 また、ハーグ条約第5条第 a 項では、「『監護の権利』には、子の監護に関する権利、特に、子の居所を決定する権利を含む。」と規定している。 このような規定は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施 に関する法律(平成 25 年法律第 48 号。以下「国内実施法」という。)第2条第6号などにもあり、ハーグ条約と国内実施法の適用対象は同一であると解される。 法務省法制審議会家族法制部会第13回会議に提出された部会資料12・1 3に記載されているように(注12)、監護者のみに監護権が与えられていると解するならば、監護者である父母が国外に子を連れ去ったとしても、監護者ではない父母は、自らの「監護の権利」を侵害されたと主張できないことから当該連れ去りは「不法」ではないことになる。 また、監護者でない父母にも監護権が与えられていると解したとしても、国内 で子との接触ができない状況に置かれていた場合、「監護の権利が現実に行使 されていたこと」の要件に該当しないことから、当該連れ去りは「不法」ではない ことになる。 いずれにしても、監護者でない限り、ハーグ条約に基づく子の返還申請ができないことになる。 同様の問題は国内でも生じる。すなわち、裁判所が監護者に指定しなかった 父母は、監護権(居所指定権を含む。)を喪失すると解するならば、あるいは、 監護権(居所指定権を含む。)を喪失していないと解するにしても、現実に監護権を行使していないと解され、監護者に指定された父母が連れ去りを行っても 「不法」とみなされないことになる。 つまり、裁判所から監護者に指定された父母は、国内・国外を問わず、自由に子を連れ去ることができるようになる。 しかし、このような事実上の脱法行為を許してはならないのであり、その観点 からも父母の一方のみを監護者として指定する制度は一切認められない。


離婚時に「父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」(民法第 766 条第1項)とする規定に基づき、離婚時には、子の監護について必要な事項を「共同監護計画」として公正証書化することを義務付けるとともに、離婚届とともに、こ の「共同監護計画」を添付しない限り、離婚の届出は受理できず、無効とする規律 を設ける。


 (補足説明) 民法第 766 条第1項は、平成 23 年に改正され、離婚時には、面会交流や子の監護に要する費用(以下「養育費」という。)について定めるよう規定された。しかし、離婚届の裏に、面会交流や養育費について協議したかどうかのチェック 欄が設けられたのみで、子を有する父母が離婚する場合、面会交流や養育費について、全く取り決めがなされなくともその届出が受理されてしまう状況であ り、全く、実効性がない。 この実効性が欠如している理由の一つに離婚後単独親権制がある。 すなわち、離婚後に親権を喪失した父母が子と会うことや親権を喪失した父母から養育費を徴収することの法的根拠が薄弱だからである。特に、養育費に ついては、親権を失い、日々成長する子を見守ることができなくなった父母には、実際上「何を置いても養育費を払う」との意識を持ちにくいという側面があ る。 しかし、離婚後共同親権制とすることで、父母双方が子を監護する権利及び義務を有することとなり、確固たる法的根拠が生まれ、自然に監護や養育費支払のモチベーションも高くなる。 とはいえ、離婚に伴い、同居、協力及び扶助の義務(民法第 752 条)がなくなった父母が、引き続き共同して親権を行使し、子を共同で監護することには多少の困難が伴うのであり、その困難を緩和するための規律を設ける必要がある。 そこで、民法第 766 条第1項の「父又は母と子との面会及びその他の交流」 を「父及び母と子との監護の割合」と改めた上で、諸外国の制度(注13)を参考 に、離婚時には、父母がそれぞれ負担する年間の監護日数、養育費、それぞれの父母が主として子を監護する場所など子の監護について必要な事項を記載した「共同監護計画」の作成を義務付ければ、一方の父母が「共同監護計画」に従わない場合には、その父母の監護義務違反又はもう一方の父母の監護権侵害を根拠として、もう一方の父母が「共同監護計画」を遵守するよう要求できるようになる。 そして、「共同監護計画」を公正証書とすることを義務化することでその実効性はさらにあがることになる(注14)。 例えば、公正証書にし、養育費についても具体的な金額を記載する一方、父母の一方の監護を妨害した場合の損害賠償額を記載することで、父母の一方が「共同監護計画」に記載された義務を履行しなかった場合、裁判をすることな く強制執行ができるようになることから、養育費不払いや一方の父母によるもう一方の父母の監護妨害などの行為を抑止することが可能になる。 さらに、「共同監護計画」を離婚届に添付して市区町村の窓口に届け出ること を義務化するとともに、市区町村は、「共同監護計画」が添付されていない限り離婚届を受理できず、また、違法に受理した場合には離婚を無効とする規律を設けることとすれば、より実効性が高まることとなる。 
 なお、離婚後共同親権制度を導入した場合、婚姻中と離婚後とで父母の親 権の内容に変更がなくなる。したがって、婚姻中は自由であった親子の交流 を、離婚を機に第三者が介入し制限をする合理的理由がなくなる。 すなわち、離婚後も父母が共同で親権を行使するにあたり、第三者が介入し、父母の一方の意思に反して父母の親権行使に制限を加えることは父母の親権を侵害する行為であることから、今後は認められない。 以上の点を踏まえれば、親権を喪失した父母と子に対し、公益社団法人家庭問題情報センター(以下「FPIC」という。)が現在提供している「付添い型」面会交流支援サービス(注15)などは、離婚後共同親権制導入と同時に原則として許されなくなる。


離婚時の「共同監護計画」作成支援のため、「共同監護計画」作成の指針(ガイド ライン)を法定化するとともに、「共同監護計画」作成のために、弁護士等による裁 判外紛争解決手続(ADR)を利用できることとし、その費用の一部を国が給付する規律を設ける。 また、離婚時には、子の監護に関する講座(以下「離婚後監護講座」という。)の 受講を父母双方に義務付け、離婚後監護講座を受講した後、一定の期間が経過しない限り、離婚の届出は受理できず、無効とする規律を設ける。

(補足説明)
離婚時の「共同監護計画」作成にあたり、父母の親権行使の態様について、 最低基準を定めなければならない。 なぜならば、父母による親権行使は無制限に認められる訳ではないからである。父母の一方の親権行使はもう一方の親権行使を制限することにもつながるのであり、また、子の利益に反する親権行使は認められない。 そこで、「共同監護計画」に記載すべき内容についての指針、例えば、子の監護に要する費用(養育費)の算定表や年齢別の親子交流の最低限の頻度な どの指針を制定することとし、国民の権利義務に関する事項が含まれることから、これを法律で定めることとする。 なお、離婚後共同親権制とし、離婚後も引き続き父母で共同監護を行うにあたっては、諸外国の状況(注16)も参考に、その監護日数は父母で半々とすることを原則としつつ、個々の事情に応じ日数などを調整することとし、その旨を指針に記載する。 また、裁判離婚制を採用する多くの諸外国と異なり、協議離婚が大半である日本の特殊性を踏まえると、この「共同監護計画」を作成するにあたっては、指針を作成するだけでは不十分であり、法律の専門家による支援が必要であることから、弁護士等による裁判外紛争解決手続(ADR)を利用できることとし、利用を希望する父母には、一定の標準期間分の費用を国が給付する制度を導入する規律を設ける。 さらに、離婚届を提出するにあたり、提出先の市区町村で「離婚後監護講座」 を、父母双方が受講しなければならないものとする。 その上で、父母双方は、離婚後監護講座の内容理解の確認後、一定の期間 (クールダウン期間)が経過しない限り、離婚の届出は受理できず、無効とする規律を設ける。

「離婚後監護講座」の内容は、「共同監護計画」作成義務や指針の内容、 ADR の利用方法などの説明のほか、臨床心理士や公認心理師の協力の下、 離婚をする当事者や、父母の離婚を経験する子の一般的な反応や、それに対 する配慮の在り方といった心理学等の知見なども講義する。 なお、父母の「共同監護計画」作成を支援するための ADR 費用や「離婚後監護講座」の費用等について、国や地方公共団体がその負担をすることは十分に可能と思料される。 なぜならば、離婚後共同親権制導入に伴い、離婚を原因とするひとり親世帯 に対して支給される児童扶養手当の財政負担がなくなることから、その払う必要のなくなった予算を上記の費用等に転用することが可能となるからである。 児童扶養手当とは、「父母の離婚などで、父又は母と生計を同じくしていない 児童が育成される家庭(ひとり親)の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の 福祉の増進を図ることを目的として支給される手当」であり、離婚後共同親権制導入に伴い、離婚後も婚姻中と同様に児童は「父及び母と生計を同じくする」ことになることから、そのような児童が生育される家庭に対し、児童扶養手当を支給する必要性は原則としてなくなる。 令和3年度の児童扶養手当予算額は、4,730 億円程度である(注17)。母子家庭となった理由の約8割が離婚であることから、もし、日本が離婚後共同親権制に移行していたと仮定すると、令和3年度の児童扶養手当予算額の約8割にあたる 3,780億円超を、離婚後共同親権制関連の費用に充てることができたと推定できる。 また、外国の例で、離婚後の父母の共同監護の割合を半々と定める法律を制定したところ、法制定後2年で、訴訟件数が11%低下した事実がある(注 18)。この事実と、日本においては、離婚訴訟において親権者指定の申立てのあった件数は 4,842 件(令和元年度)であり(注19)、監護者指定調停新受件数は 2,244 件、監護者指定審判新受件数は 2,854 件、面会交流調停新受件数は 12,929 件、面会交流審判新受件数は 1,939 件、養育費調停新受件数は17,655 件、養育費審判新受件数は 3,072 件(全て令和2年度)である(注20)が、今般の法制度上の措置により、離婚後共同親権制への移行監護者指定審判制の廃止離婚時の「共同監護計画」作成義務化などが実施されることで、これらの訴訟・審判件数が激減するだろうこととを勘案すると、裁判所の予算のうち、家事事件関係経費などを大幅に削減できる可能性がある。 したがって、離婚後共同親権制導入にあたり新たな予算が必要となるとしても、全体で見れば、国及び地方公共団体の離婚関連予算は削減できることから財政上の問題は特に生じないものと考えられる。


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