税理士とテレワークについて経験者は語る
税理士とテレワークについて思うこと
2008年秋に、京都市内にあった事務所を閉じました。その時3人いたスタッフのうちふたりは請負契約で在宅勤務になってもらいました。それが2016年まで約8年間続きました。
私は京都市内からも大阪市内からも40分の自宅から徒歩1分のところにある学習塾が入っていた一軒家を事務所にしました。
そこに至った経緯については、「税理士事務所敗戦記」に赤裸々に書いています。
https://note.com/koganeman/n/ne84cb51d7d80
その体制にする前にいくつかの仮説がありました。
1.通勤時間は、私もスタッフにとっても無駄では?
2.インターネット越しに十分仕事ができるのでは?
3.固定費が大幅に削減できるのでは?
4.スタッフも請負で完全成果報酬のほうがやり甲斐があるのでは?
5.本を書くなど創作活動に集中できるのでは?
6・通勤がないのでインフルエンザや風邪に罹患するリスクが減るのでは?
結果的には、全問正解でした。
1.通勤時間については、その当時、始発終電が当たり前の毎日でしたが、家族と一緒に夕食を食べて、その後もう一度仕事に戻ることができるようになりました。
スタッフもみんな子育て中の主婦でしたので、私以上に恩恵があったと思います。
2・インターネット越しに仕事ができるという点は、想定通りでした。もともとネットベンチャー企業の創業メンバーであったこともあり、インターネットが大好きでした。
会計ソフトは、発展会計というクラウドソフト、弥生会計のデータと達人の税務データはDropboxでデータ共有できました。実は、2007年頃にDropboxを見た瞬間に、これで在宅勤務できると確信しました。
オンラインストレージについては、ネットベンチャー時代に開発しようとしたこともあり、関心があって、その当時サービス提供されていたものを片っ端から試していましたが、Dropboxは私の想像を超えていました。
給料計算は、名南経営のクラウド給与ソフト楽しい給与計算のできがとても良いために助かりました。
当初は月1くらいでリアルのミーティング、最後の方はスカイプで会議しました。
3.固定費は大幅に削減できました。その翌年にリーマン・ショックが起こり売上が減りましたが、これにより助かりました。
4.スタッフは、人事に関わる時間を削減したかったので、請負契約に変えてもらい、前年の売上ベースの年俸制にしました。顧問料報酬が中心で翌年の売上がだいたい計算ができる税理士事務所は成果報酬の年俸制に馴染むと思います。経費はスタッフ持ちですので、かなり高い売上に対する報酬の分配率でした。
約8年間スタッフの報酬に対する不満は少なくかなりうまく行っていたと思います。
5・他人と一緒に仕事がするのが苦手な私にとっては、ひとりで仕事をできる環境を得られたことが何よりも大きく、その後翻訳や、ソフト開発に没頭することができました。
6.奇しくもこの体制になった翌年新型インフルエンザが流行し、満員電車に乗らずにすむ恩恵を感じました。また通勤してた頃は毎年のように風邪をひいてましたが、通勤がなくなってからはほとんどひかなくなりました。
ネット中心の仕事になり、電話も秘書サービスを使い直接固定電話をとらないようにしました。これによって、浮き彫りになったことは、日本で仕事の生産性を遅らせている元凶です。
1・税務署及び都道府県市町村の役所
2.金融機関
3.税理士会関係
まず、秘書サービスの固定電話にかかる電話はほぼこの3つからです。
余談ですが、秘書サービスのメリットとして、営業電話や右翼の雑誌の勧誘はカットしてもらえます。
あと紙の郵送物、FAXもこの3つからのものが主です。
税務関係はetax eltaxによって印鑑を使うことがなくなりましたが、金融機関はいまだに印鑑なしでは何も手続きできないので物理的な移動が伴います。
そもそも、税理士の在宅勤務に歯止めをかけているのも、1.と 3.であるわけです。
2016年秋にこの体制が終わりました。
原因は、私の事業がソフト開発にシフトして、時間的な制約で、すべてのクライアントに目を行き届かせることが難しくなったこと。
お客さんからみれば、きちんとした実態の事務所もなく、私の訪問も決算時の年に一回くらいのところが多かったので、不安感を持たれているだろうと私が感じたこと。
税制改正などをきちんとフォローしてすべての顧問先に不利益を与えないようにする自信がなかったこと。この当時そろそろ税理士の懲戒事例が増えてきたため、スタッフには税務はあまり考えなくてもいいよと言ったことにより、本当に税務のことを気にしなくなり、私に丸投げするようになり税額控除や消費税判定のチェックなどでキャパオーバーしました。
そんなときに、M&Aの話があり、私が直接担当していない顧問先さんを信用できる税理士法人さんに委ねることとしました。
譲渡先の税理士法人は私よりはるかに常識的な考えをもたれ、また税理士会への影響も大きかったため、いろいろ協議した結果、在宅勤務体制を続けることは不可能という結論になりました。
そんなことで、8年間に及ぶテレワーク体制は終わったわけです。
新型ウイルスが蔓延する現在の状況下、税理士の在宅勤務が話題となっています。税務当局や税理士会が、在宅勤務に反対する理由をいくつか挙げていますが、率直にいって私にはピンとこないものばかりです。
一番の問題はニセ税理士防止なのですが、在宅勤務とニセ税理士がどう直接的につながるのかが私には想像できません。
極論すると、天の理ではなく、人間が作った規則は、人間により破られるものだと思います。
形骸化した規則は、誰かが破ることにより、そこで本当に必要な規則なのか?もっと改善すべきではないのか?本質的な問題はなにか?を再考する機会となると思います。
私が高校生の頃、運動部の練習中に水を飲んではいけないという鉄のルールがありました。
そのルールに従って、多くの若い命が失われました。
人間が作ったルールよりも、人間の命のほうが遥かに重要なのは言うまでもありません。
今は、ごちゃごちゃと神学論争をくりかえすよりも、スパッと在宅勤務にきりかえたほうが良いと思います。
そのあとで、本当にニセ税理士がどれくらい増えたか検証してみると良いのです。
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