獲物を見失うことへの考察。
半矢(はんや)
・・・弾が当たったのにも関わらず、それが致命傷にならずに獲物に逃げられてしまうこと。
猟師は半矢を避ける。
当然だ。
お肉は手に入らないし、心は痛むし、何より(撃っといて何だけど)かわいそう。
僕らだって撃つからには絶対に当てたいし、当てたからには一瞬で楽になって欲しいと思う。
人間のエゴだの倫理観だのそういったことは散々議論されていると思うので、今は一旦置いておこう。
今日は単純に、半矢というか獲物を見失うことについての僕の体験談を。
獲物を半矢にすること。
厳密に半矢の定義って言うと難しいのかな。
撃ったけど当たらなかった。
これはいくらでもある。
もはや数えきれない。
でも、本当に当たってなかったのか。
散弾の1粒くらいは当たっているのかもしれない。
当たり所によってはそれで仕留められるかもしれないけど、意外と平然としているかもしれない。
後から出血多量で死んでしまうかもしれない。
「確実に当たったのに見失った」
これは半矢だろう。
こんな経験も、悔しいけれど何度かある。
これは本当に悔しいというか悲しいというか、半矢にさせてしまったことは今のところ全部覚えている。
と言っても3回だけど。
マガモ2羽、キジバト1羽だ。
それ以外に2回、「確実に仕留めたのに見失った」ことがあった。
見失うこと。
1回目はマガモ。
飛び立った所を撃って、マガモはそのまま慣性に任せて落ちていった。
確実に当たっているはずだ。
落ちた場所にあたりを付けて、急いで向かう。
しかし落ちた場所が川の支流をひとつ超えた場所で、中々たどり着かない。
どうにかジャブジャブ川を越えて行ってみれば、どこにもいない。
あたりを付けた場所がずれてたのかな、と思い周囲をしばらく探し回ったが、全然いない。
実は半矢で、落ちた後にどこかに行ってしまった可能性がなくもないが、そんな感じじゃなかったんだよなぁ。
2回目はキジバト。
これは確実に当たったし、池に落ちてぴくりとも動かない。
間違いなく仕留めている。
ただしこちらも、池の向こう側に落ちてしまったため、池の周囲をぐるりと回って竹林の中から回収しなければならなかった。
ようやく竹林の中から池を見ると、どこにもいない。
しばらく竹林をうろうろして、やっぱり見つからないので面倒だけどまた池をぐるりと回って撃った場所まで戻ってきた。
そして見つけた。
見失ったと言ったけど、このキジバトは最終的には見つかった。
落ちた場所と全然違うとこにいた。
何で?まさか生きてた?
だいぶ疲れてて、また池をぐるりと回るのも面倒だったし、ぐるりと回ってまた見失うのも嫌だったので、近くに落ちてた長い竹を引きずってざぶざぶと池の中に入ってった。
長靴に浸水して、膝くらいまで水に浸かったあたりで竹をフルで伸ばしたら、なんとかキジバトに届いた。
ちょいちょいと引き寄せて手にしたキジバトは、ごっそり内臓がなくなってた。
猟場で会うアイツ。
猟場で鳥が来るのを待ってたりすると、良く出会うヤツがいる。
イタチだ。
彼らも(オスは)狩猟鳥獣で、もちろん撃てる。
でも全然食指が動かないので、基本放置。
見てると、結構水辺をウロウロしてるのね。
で、獲物が取れて血や内臓を抜いてると、かなり至近距離で出会う。
と言うよりダッシュでこちらに駆け寄ってくる。
そして「あ、いたのね…」て顔で逃げてく。
で、先述のキジバト。
たぶん、イタチの仕業なのかな~と思ってる。
血の匂いで寄ってくるのかな?
回収できなくてぐるぐる池のまわりを回っているうちに、イタチが引っ張って動かして、とりあえず内臓だけ食べたんでしょうね(それ以外の部分はきっちり僕が頂いた)。
マガモの時はどうだったんだろ?
果たして小柄なイタチにマガモが運べるのか?
そんな訳で、獲物を見失う背景には、イタチが暗躍しているかもしれないという話でした。
だから僕は獲物を撃つとき、回収できるかどうかを気にする。
まごまごしてたら盗られちゃうからね。
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