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かっぱんとかとっぱんとかへいはんとか、でも銀シャリが一番好きなタイプ(KOGADOの冒険ワークショップ vol.7 番外篇:社長の印刷あれこれよもやま話の巻)

 はろー。
 今週の冒険ワークショップは、ちょっと趣向が違います。

 先日、弊社の社長(前々回、ここに登場した人です。)と仕事上がりで飲みに行った時、突然何かを思い出したらしく、テンション急上昇でわーわーとしゃべり始めたのです。確か、NHKの朝ドラを見てるか?今週の放送みたか?とか。
 見てませんし、興奮して何言ってるかわからない(興奮してなくても、結構なにいってるかわからない)ので、「ああ??!!……ああ!いいすね!!!それ次回のBWSのネタにしましょう、文章にしてください」とレバー焼きを食いながら 仕事を 話を振ったわけです。
 「おうおう!いいね、書くよ、俺!書く書く!」と顎をカクカクさせながらいってましたので、しめしめこれは次回は一回休めるぞと、そう相成りました。

 なぜ急に社長がかくかく言い出したのか、その答えをとくとご覧あれ!
 はじまりはじまりー。
 
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本日の語り部:工画堂スタジオの四代目社長・谷 逸平(たに いっぺい)
おしゃべりはもちろん、アナログでお手紙を書くのが大好き。還暦。
全社員の誕生日に、毎年必ずシーリングスタンプで封をされた、分厚いお祝いレターを送ってくださる。
とある社員は初めてその手紙をもらった際、「ハリーポッターみたいな手紙をありがとうございます。」と社長にお礼を伝えていた。かわいかった。
(補足担当・編集長)
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👇そんな社長が登場した浪人によるインタビューはこちら👇

 新入社員が入社すると、僕が新人研修をするんですよ、人事担当としてね。
 そこでしょっちゅう「運」とか「縁」とか、目に見えにくいモノや事について大真面目に話しているのですが、我が社のように歴史の長い会社では、見たこともない昔のことが、話としてのみ伝わっているなんてことがいっぱいあるのです。そして、残念なことに先の太平洋戦争の空襲で、多くの文献・写真等が焼失しており、それ以前の弊社の歴史について知ることのできる資料は極めて少ないのです。
 そこで、今回は社内に現存しない昔の事象に接することができた、ひょんな出来事をお話しすることにします。


 僕は今まで、テレビドラマをほとんど観たことがなかったんですが、偶然に「半沢直樹」を観たのをきっかけに、テレビドラマにどはまりしてしまいましてね。「テレビドラマってこんなに面白いのか!」って感じで、それ以来、毎シーズン、主要な作品はきっちり抑えている次第です。中でもNHKの大河ドラマは別格と思っています(僕の主観)。

 皆さんは今シーズンのNHK朝ドラ「らんまん」を観ていますか?
 「半沢直樹」以来、むさぼるようにテレビドラマを見ていたのですが、NHKの朝ドラだけは、生活リズムの関係か、縁遠い存在でした。ビデオに収録して観るということも無かったので、テーマに興味をそそられなかったということもあると思います。

 でもですね、「らんまん」は植物学者・牧野富太郎さんをモデルにしたドラマ。小学校の時に子供向け「伝記」シリーズでたまたま「牧野富太郎」さんを読んで知っていたこともあって、今回の朝ドラには興味が湧きました。なので、第一回目から欠かさず観ています。

 で、その「らんまん」の中で神木隆之介さん演じる主人公「槙野万太郎」が、東京大学の研究員として植物雑誌を発行する編集担当者になるのですが、その時代の印刷技術の主流は「活版印刷」でした。万太郎は分類した植物の図版をできるだけ細密に印刷することを求め、当時はまだ新しかった「石版印刷」を使用しようと考えます。
 しかし、石版印刷がどんなものか分からない万太郎。そこで、神田の石版印刷屋・大畑印刷所で見習いとして働かせてもらいながら、石版印刷の何たるかを学ぶことになります。


 石版印刷は、炭酸カルシウムを主成分とした石版石を使用します。石の表面に脂肪性の画材(解き墨やチョーク等)で図案を描写した後、アラビアゴム液を使用すると、脂肪を受け付ける部分、つまりインクが付く画線部分と、インクが付かない非画線部分ができます。
 版となった石に水を引き、ローラーで脂肪性インキをもることで、図案の部分にはインクが付き、それ以外の部分は水と油の反発作用でインキが付かない。それを紙に写し取る(印刷する)この技法が「石版印刷」という訳です。(超はしょっています)


 前段がえらく長くなりましたが、実はこの石版印刷こそが弊社工画堂スタジオ創業の原点なのです。創業者・故谷順三は、石版石に図案を描写する「画工」でありました。石版石に描かれた図案は、印刷に直接使用するものですので、画工の腕によって、成果物の良し悪しが決まる、と言われていたそうです。石版にどのような図案を描くか、つまりデザイン自体を考案し、印刷に使用する「石版への描写」を行う仕事をしておりました。(おっと、これって今で言う「CtoP コンピュータトウプレート(PCから直接刷版を出力する)」か?)

 この職人が複数集まってできたのが弊社、画工をひっくり返して、「工画堂」という訳です。


 幼少期にたまたま読んだ一冊の伝記の記憶が、普段は観ない朝ドラを観ることに繋がりました。おまけにそのドラマの中で、偶然にも工画堂スタジオの原点となる「石版印刷」と「画工」の仕事風景が描かれ、それを観ることができました。

 生前の父親から聞かされた話の片鱗が、目の前の映像によってより鮮明に脳内を駆け巡った瞬間でした。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、僕が今回の朝ドラを観て、石版印刷と画工の仕事風景に触れることができたのは何かのご縁、目に見えない力の引き合わせすら感じたので、酒飲がてら浪人をはじめとするメンバーにわぁわぁ語ってしまったのでした。

 まぁ、周囲の皆からは「偶然、偶然~!」って言われるのですが、たとえ偶然の出来事でも、自身の「心」とリンクして「何かに気づく」ことができるというお話でした。
 ではまた。

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 いかがでしたでしょうか?
 このお話、面白いと思えたあなた、面白そうだけどよくわかんねえというあなた、あと2~3回、可能なら100回読んで味わってください。
 誰かの人生、誰かの道程は、別の誰かにとってはリアリティ満載のエンターテイメントで、極上のコンテンツです。

 物語やストーリーが好きな私にとっては、人間以外が脚本を書いたトゥルーマンショーをリアルタイム進行中で見れている、今回においては私も端役として参加させてもらっている、という感覚です。
 たまになにか大きな出来事があると、「今回はボーナス回だな」と思ったり。メタ認知的な人生の楽しみ方です。

 袖触れ合うもなんとやらと言います。みなさんにもこの物語を一緒に楽しんでいただけたらいいなと思います。

 そういうの意味わかんねえ、というあなた。
 来週は通常配信にもどる(はず、な)ので、当り回がくるまで、乞うご期待!!

※「KOGADOの冒険ワークショップ」では、レポーター「浪人」にやってもらいたいことを募集しています。
 ここにいってこれを調べてきて、この人にこれを聞いてきて、など可能な限り実現したいと思います。
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