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誰と戦い、誰を守るのか(KOGADOの冒険ワークショップ vol.26 西の大将、DA部百瀬さん登場の巻)

北川:
 これnoteの記事なんです。

百瀬:
 たまに見てますよ。何回か前の社長の回、あれ面白かった。

北川:
 あれ、本来は掲載された文の3倍ぐらい分量あるんですよ。起こすのが大変でした。

 百瀬:
 いや大変だと思うよ。僕、ほら動画撮ってるからさ(注:百瀬さん個人のYoutubeチャンネルのこと)わかりますよ。文字起こすのめっちゃ大変だよね。文字起こしして、テロップとして出したりとか。

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今回のゲスト:百瀬 寿(ももせひさし)
工画堂スタジオ 取締役、デザイン制作部 デジタルアート部長
イラスト制作チームの絶対的リーダー兼工画堂の愛されキャラ代表。社歴は多分30年くらい? 今回の記事で詳しく話すことになりますが、入社時にはソフトウェア開発部所属のいちグラフィッカーさんだった。記憶ではたしか、PD3以降のローダーデザインは百瀬さんだったよね。羅刹の時は私も一緒にプロジェクト回してて、楽しかったな。忙しいところ時間取らせてもらいました。
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 北川:
 多分、素材として撮りっぱなしで、あとで編集ですよね?

百瀬:
 最初に何をやるかって台本を作っちゃいますね。いろいろやったんですけどそれが一番よかった。台本作ればテキストが事前にできるし、それと映像を合わせてくれるツールとかもあるので。そのあとまた別のツールでノイズのカットとか、しゃべりの間の無音をカットするとか……。

北川:
 なんでそんなことやってんですか?w

 百瀬:
 なんだろうね(笑)
 あんまり最近更新してないんであれですけど。絵描きなんて世の中にいっぱいいるから、差別化をしていきたいってのと……

北川:
 ブランディングですか。

百瀬:
 あとは、妻にやれって言われた、とか(笑)

北川:
 奥さんが。なぜ??

 百瀬:
 「なんでももちゃんはやらないの?」って言われて。「みんなやってるじゃん。なんで工画堂はやらないの?」って。

北川:
 良いアドバイスですよね。いわゆる一般消費者からのご意見。

百瀬:
 「せっかく発信できるものをいろいろ持ってるんだから、やりなよ」って。じゃあ、やるかっていう感じです。でもそういうアドバイスって助かりますよね。自分一人だったら多分思いつかないし、やんなかったと思うもん。やればいろいろわかってくるし。流行とかも。

北川:
 いい刺激ですね。

社内転職


 北川:
 デザイン制作部に移籍してから何年ですか?

百瀬:
 何年ぐらいだろう、15年ぐらい経ってんじゃないですか。もっと経ってるかな。
 (注:2005年ころと推測されるので、18年でした)

 北川:
 阿佐ヶ谷はどうでしたか?

百瀬:
 良かったですよ。緑も多くて。

北川:
 いやいや、労働環境ですよw

百瀬:
 転職みたいなもんですよ。人間関係をゼロからやり直しか、みたいな。ソフト開発部は、独特の文化があったじゃないですか。ガチャガチャした。デザイン制作部は、業態もBtoBだから、文化が全然違いますよね。それを両方経験できたのは、今思えば良かったかな。

北川:
 苦労も多かった?

百瀬:
 どうだったかな???あんまり覚えてない(笑)

北川:
 一番最初のイラスト制作の仕事は何だったんですか?

百瀬:
 一番最初にディレクションとしてやったのは、ブロッコリーさんのディメンションゼロですかね。そこからカプコンさんとかブシロードさんとかの仕事を少しずつこつこつ増やしていった感じ。

 北川:
 こつこつ。

 百瀬:
 運が良かったと思うよ。ゲーム側は市場的に凹んでたタイミングだったし。一応ゲームを全部作ってきた経験があるから、どうやってゲーム的なものが作られるかっていう全体感が何となくわかってるし。その中の、絵を作る部分を切り出して行うだけなので、クライアントさんの動きが予測できるというか。あと、そういう仕事が成立したのはよかったですね。

 北川:
 こつこつやってる中で、でっかい波が来たぞって感じたのは、何のときですか?

 百瀬:
 それはもう、■■■さんの時だね。スマホゲームの走りのタイミング。

 北川:
 ああ!あれか。

百瀬:
 スマホバブルが来て、そこでドーンっていった感じはありますよ。そこからソシャゲバブルが来たんで、そこでまたドーンと仕事が増えてきて。

 北川:
 あったあったそういう時期。

百瀬:
 もうね、怒ってたもん。「なんでこんなに仕事が来るんだ!!」って(笑)
 それでもうさすがに仕事が回しきれないって、人を増やしていって。

 北川:
 それで今のデジタルアート部ができあがったと。
 ブシロードさんは?

 百瀬:
 ヴァイスシュヴァルツとか単発案件はやらせてもらってましたね。ブシロードさんは本当に初期も初期、まだ社員が4人しかいない時からのお付き合いですよ。

北川:
 ブロッコリーさんから木谷さんが独立なさってすぐってことですね。

スーパーナチュラル 


北川:
 ソフトウェア開発部から「転職」経験をしてw、BtoCからBtoBに業態が変化したわけですけど、その時のショックみたいなのはなかったですか?

百瀬:
 うーん、あまりなかったかな???

北川:
 あるでしょうw だって百瀬さん、ソフトでは開発の人だったから、渉外はなかったでしょ? 外の人たちと接することって。それが急にクライアントさんと話をするようになるって、ショックはなかった?

 百瀬:
 あったかな、でもどうやってたんだろう? もともとの性格とかあるんじゃない? 駄目な人は多分できないし辛くなるだろうけど、まぁまぁ、僕は大丈夫だったってことなんだと思うな。

北川:
 ソフトの仕事とデザイン部の仕事、BtoCとBtoBですが、違いはどこにありますか。

百瀬:
 やっぱりね、ゲーム開発は大変だと思うんですよ。両方経験している身としては。BtoCは一つ一つの仕事で責任が自分に乗ってきちゃうし、売れないのも自分のせいになっちゃうじゃないですか。

北川:
 そうですかね。

百瀬:
 でもBtoBだとそれはない。やれることが決められているし、その中でベストを尽くすという仕事でしょ。もちろん提案とかしますけども、指示があって、やれることが限られてて、それをやればお金がもらえることが約束されているので、気持ちが楽ですよ。

北川:
 そこに到達するまでがかなり大変だとは思うんですけどね、私から見るとw

画工さんはみんなそうなる


 北川:
 テレワークの今、家ではずっと仕事してるんですか?

百瀬:
 しちゃうんだよね、これ本当良くない。最近は大丈夫になったけど、本当に先々週ぐらいは、寝る以外全部仕事してた。

北川:
 怒られませんか?ご家族に。

百瀬:
 怒られるよ。めっちゃ言われます。でもやんないと終わんないから(笑)
 子供がいっしょに寝てくれって言ってくるので、寝かしつけて、戻ってきて、また仕事するみたいな。仕事と私生活がクロスするような感じ。

北川:
 クロスしたり、ミックスしますね。

百瀬:
 最初はわりと嫌だったけども、まあでも家族との接点も増えるんで、子供の成長とかも見れるし、まあそれはいいかなとも思ってるけど。

 北川:
 全国のお父さんがうなずいてますw
 今の仕事の分配って、ディレクションやってる時間と絵を描いてる時間ってどんな比率なんですか?

百瀬:
 圧倒的にディレクションしてる時間が長いですね。昔に比べたらもう10分の1くらいになっちゃった。昔はもう本当に朝から晩まで、下手すりゃ家にいる時もずっと絵を描いてたから。「羅刹」の時とか。

北川:
 ゲームの中の絵、全部描いてましたもんね。

百瀬:
 あれはほんと全時間を投下したね、自慢じゃないけどずっとやってた。会社行ってずっと描いて、家帰ってきてそこでも描いて、本当に通勤時間と寝る時以外は全部ってくらいやってたね。

 北川:
 今は描く時間よりもディレクションとかの時間が多い?

 百瀬:
 そうですね。上がってきた絵を見て、指示を書いたり、メール連絡したり。よくわかんないんだよね、あっという間に時間が溶けているって感じです。あと打ち合わせとか。打合せは溶けるね、なんだかわかんないけど(笑) 社内で担当をもう少し分散しないとダメだね。

だめださない、だめだせない

 
北川:
 ソフトウェア開発部を出て、外から見て、良くないところとか、ありますよね? 優しく教えてくださいw

 百瀬:
 俺、大変なの知ってるんだよ、ソフト作るのって。だからなあ……。

 北川:
 いやいや。とはいえ、ちょっと引いたところから。なんで、こうやらないんだ、とか、こういうところがダメだぞとか。見えるでしょう。

百瀬:
 いや、いろいろわかるからさ。できない理由もわかっちゃうんだよ。
 ただまあ、そうだな、あえて言うなら、アドベンチャーゲームばっかりだと、ちょっと嫌だっていうか残念だなっていうのはありますね。個人的には。

北川:
 そこですか。まあそうですよね。

百瀬:
 配信映えしないじゃないですか。アドベンチャーゲームは。

 北川:
 今は雑誌で止め絵で見るんじゃなくて、配信でゲームを知るのが標準に変わりましたからね。

 百瀬:
 友達と一緒にわいわい遊んだり、誰かがプレーしてるのを「俺だったらこうやるんだろうなあ」って思いながら見れるようなゲームじゃないと、ちょっと手に取ってもらえないんじゃないかと思うよね。

 北川:
 落合(陽一)さんも言ってましたね。「誰かがゲームをやってるのを、横でこうやってずっと見てるのが楽しい」って。

 百瀬:
 うちの妻は、格ゲーの配信をずっと見てるよ。

 北川:
 ご自身ではやらないですか?

 百瀬:
 昔はバーチャファイターやってたけど今は子供とたまに対戦するぐらい。だから、サッカーの試合を見るみたいなもんだよね。文字通りeスポーツだよね。野球見るのが好きでも、じゃあ自分がやるかってのは別でしょ?

 北川:
 そこの感覚が私はまだアップデートできないんですよねw

 百瀬:
 時代も変わったんだから、それに適したゲーム作りをやればいいのになとは思うかな。

北川:
 IP作るにはアドベンチャーゲームが一番適してるのはよくわかるんですけどね。

百瀬:
 数を打てればいいんですけどね、年間30本とか。
 そうすると一本ぐらい当たるかもしれなくて、そしたらその原資でほかのものが作れる。けど、うちの規模だとそれは厳しいですよね。

 北川:
 その通りです。もう弁解の余地など全くないです。

 百瀬:
 なにかできるといいんですけどね。

視点、視座

北川:
 ではそろそろ。これを読んでる読者の皆様に、一言メッセージを。

 百瀬:
 こんな感じでソフトウェア開発部は一生懸命頑張って、新作を作ってるんで、もしよければ皆さん買ってください。買ってくれなくても、せめて発信とかリアクションをしてくれるといいよね。

 北川:
 ありがとうございました。

百瀬:
 どうもです!

北川:
 百瀬さん、もう一回ゲーム作りたいと思います?

 百瀬:
 ああ、……どうかな?……どうなんだろうな?
 なんか、作りたいものが、ないんだよね。ってか、もうね「羅刹」で燃え尽きた、俺は(笑)

北川:
 そのうちまた「こういうのもあるかも?」みたいなのが出てくるんじゃ?

 百瀬:
 ほんと大変だよね、ゲーム作るの、本当に。
 だって今の方が、仕事の量は多いけど、気持ちは楽だもん。

 北川:
 やることが絞られてるからですかね。

 百瀬:
 ゲーム作りのよくない、というかしんどいところは、自分が頑張るとクオリティがどんどん上がっていくところですよ。キリがなくなっちゃうんですよ。
 OEMのお仕事は、納期があるから、終わりっつったら終わりじゃん? 80点ぐらい来たな、そろそろ納品だなってのが見える。でもゲームは80点からが勝負なんで。そこからいかに押し上げていくかで、すごいクオリティが変わってくる。最後の一週間でクリティカルに変わるじゃん。完成度が。

 北川:
 そうですね。80点でベータ版とか仮組とかですもんね。

百瀬:
 むしろそこからが勝負の分かれ目というか。でも作ってる側は、そこの心理的なプレッシャーが結構しんどい。

 北川:
 倒れるまで走らなきゃいけない、手を抜けないですからね。

 百瀬:
 ゲームやってて「ああ、ここにスチルもう一枚欲しいな」って思っちゃう。「これってマスターいつ?今日一日使って、ここに追加で一枚描いていいかな?」ってなるでしょう。

 北川:
 あるあるですね。

 百瀬:
 で、そこ一か所描くと、「これの表情差分が欲しいな」ってなる。「あと何時間ある?3時間?いけるかな」とか。それの連続じゃないですか。

 北川:
 西川さんがよく言ってますね、それ。言ってるというか、やってる。

百瀬:
 だからオリジナルタイトルの沼はそこです。やればやっただけよくなってくるんで、ゲームは。最後の2週間とかすごいクオリティ上がっていくじゃないですか。そこまでみんなダラダラやってんのにね。

 北川:
 そうですねw
 わかりました。でもね、すごい図々しい言い方すると、せっかく一つの会社でやってるんですから、そこは部をまたいで面白いことやれるといいですよね。

 百瀬:
 そうだね。
 うちの部の子たちに、どんな案件がやりたい?って聞くと、みんな「自分のゲームを作りたい」っていうんだよね。やっぱ最終成果物が自分の手元から出ていくっていうのは嬉しいんだろうね。

 北川:
 やりましょう、やりましょう。
 お忙しいところ、ありがとうございました。


 一応いっておきますが、百瀬さんがOEMのお仕事を適当にやっているということではまったくないということは、フォローしておきます。
 百瀬さんのクリエイティブは、しつこくねちこく、文中にある通り最後の最後の一筆、の、また先のもう一筆まで全部に平等に、100%で打ち込んでいます。100%です、できないですよね。だからこそ苦しい。だからこそ信頼されるんでしょう。 あとあの人柄ねw ああいろいろ持ってるなぁ。

 今日は、話すのが楽しすぎて長くなってしまいました。
 百瀬さんと私ってだいたい同じくらいの入社タイミングなんですよね。だから勝手にずっと同期の仲間感覚でいますが、社会的には残酷なまでに差がついたなぁw

 てことでまた、来週。

※「KOGADOの冒険ワークショップ」では、レポーターでもある求道者(浪人改め)北川にやってもらいたいことを募集しています。
 もちろん「読んでるよ」とか「私はこう思ったよ」とかの感想なども大喜び。
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