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AS SOON AS –5/3〜5/9–


3日

 フロンターレ戦を観に、サンガスタジアムへ。京都駅で嵯峨野線に乗り込み、2人がけの席に座って列車の出発を待っていると、左隣から「上福元スタメンですね」という高いとも低いとも取れない、ローカルのラジオパーソナリティみたいな声が聞こえてきた。慌ててエアポッツを外し、声のした方を向くと、サンガのユニフォームを着、長いとも短いとも言えない髪型をした、ローカルのラジオパーソナリティみたいな出で立ちの青年が座っていた。青年は、フロンターレのユニフォーム姿の俺を見て、共通のトピックとなる上福元選手の話題をもって、話しかけてくれたようである。突然の出来事に呆気に取られた俺は、“愛想よくせねばならない”という思いが先行し、ただヘラヘラと薄ら笑いを浮かべ、「そっすね、しゅ、シュートとか、、いっぱいいっぱい止めて欲しいっすね、、」という会話偏差値6くらいの返答に終始。青年は、そんなゴミクズみたいな返答に対しても「いや〜今日ばっかりは止めてもらっちゃ困りますよ〜」と愛想よく返してくれたのだけれど、ここで俺のアルティメット人見知りが発動、話を広げようとする努力をせず、へへっと笑って会話を強制シャットダウンさせ、逃げるようにエアポッツを装着、アルコ&ピースのラジオへと意識を集中させる始末である。結果、そこから亀岡までの約30分、2人の間には、なんとも言えない気まず〜い空気が流れていた。
 あの青年には、本当に悪いことをしたと思っている。猛省している。気さくに話しかけてくれたその心意気を、俺のアルティメット人見知りが粉々にしてしまった。もしそこでサッカー話に花が咲いていれば、「いや〜僕たち気が合いますね、今度改めて、天麩羅や縞ホッケでもつまみながら、サッカー談義しましょうや、ぐへへへへ、ぐへへへへ」と約束を取り付けるなどしていたかもしれない。いずれは一生涯の友人になっていたかもしれないし、彼の結婚式のベストマンを俺が務めていた未来だってあったかもしれない。
 しかし、彼に話しかけられた時、俺の脳裏には2つのことが浮かんだ。1つは「ここから亀岡までの30分、初対面の人と会話を続けるのは精神的にキツい」ということ。もう1つは、83 Lightning Catapultで三四郎の相ちゃんが言っていた「知らない人に話しかける大人は全員キモ」という言葉。この言葉のせいで、彼を少し警戒してしまったのかもしれない。でも、やっぱりちょっと怖くない?初対面の人に「上福元スタメンですよ」って急に言われたらさ。
 青年よ、聞こえているか。青年の耳に、この声は届いているか。青年の目に、この文章は届いているか。もし、届いたのなら名乗り出てほしい。俺は君にとても悪いことをした。会って謝罪したい。お詫びの気持ちとして、ビームスやユナイテッド・アローズで、お好きなカットソーを一枚購入してあげてもいい。本当に、ごめんなさい。
 もしその青年に心当たりがあるよという方がいれば、一報をください。手がかりは“京都サンガサポーター”であることと、“ローカルのラジオパーソナリティ風の出で立ちをしている”こと。この2点でございます。




4日

 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの、最新作にして最終作を見に行く。連休のど真ん中という好条件もあってか、レイトショーにも関わらず満席。グッズ売り場のGotGコーナーには人だかりが出来ていた。映画業界、特に洋画の不況が叫ばれてはいるが、微塵も感じさせぬほど凄まじい人気だった。「このシリーズ、こんなに人気やったけ?」と吃驚したが、MCUの中でも正直完成度が桁違いのシリーズだと思うので、納得。そりゃみんな夢中になるよ。
 肝心の内容は、というと。「これ以上のエンタメはない」そうハッキリと断言できるほど最高だった。“泣ける、泣ける”という触れ込みではあったが、2時間半で成人男性の年間平均涙量を優に超えるほど、ボロボロに号泣してしまった。
 骨太なストーリの上に、「笑い」と「せつなさ」をハーフ&ハーフで調合し、各キャラクターの愛おしさをアップデートさせ、全てのファンを納得させるフィナーレへと帰結。それを相変わらずセンス抜群のポップミュージックが彩る。ジェームズ・ガンはとんでもないミッションをやってのけたと思う。
 選曲に関しては、過去2作は「クイルの母親が残したミックステープ」という設定だったので、クラシックロックやソウルナンバーが中心だったのだけれど、今作は90年代以上の曲もセレクトされ、よりシームレスに。フレーミング・リップスの「ドゥ・ユー・リアライズ」が流れてきたときは、全裸になって「ヌウォーーーー!!」と叫び散らしながら、隣の人が食していたポップコーンを鼻に詰めて、ソーラン節でも踊りたくなるほど興奮した。これがまたヨンドゥが残したウォークマンだってんだからたまらない。



5日

 大阪コミコンへ行く。映画好きとしては一度は訪れてみたいイベントだったのだけれど、この度大阪で初開催。マッシブ・タレントのTシャツを着て、意気揚々といざインテックス大阪へ。いや、もう、人!人!人! 覚悟はしていたけれど入場から長蛇の列、会場にインしてもオフィシャルグッズを買うために列に並び、ガーディアンズのブースに入るために列に並び、ガーディアンズと写真を取るために列に並び、出展ブースのグッズ会計のために列に並ぶ。何年も行ってないけれど、休みの日の大型テーマパークってこん感じだったよな、、と思ったりしていた。
 ただ、そこには熱があった。みんな思い思いのキャラクターのTシャツを着て、写真を撮り、お気に入りのグッズを追い求め、スターと会って涙したりしていた。来場者たちの本気、熱、愛、その一端に自分が存在できたことが嬉しかった。結論、むちゃくちゃ楽しかった。
 スター達と写真を撮るのに25,000円ってのはバカげてると思うが、もし来日していたのがセス・ローゲンだったら?ゾーイ・サルダナだったら?ジョナ・ヒルだったら?そりゃ払っちゃうよね。



6日

 目下、我が心は空前のGotGブームの真っただ中なのだけれど、ここらで小休止の意味合いを込めて、フランスの俊英、ミア・ハンセン=ラブ監督の最新作を観に行く。みずみずしい後味の残る、期待通りの良作だった。主人公の父親は認知症や目の病気で一人暮らしが困難となり、病院や介護施設をたらい回しにされてしまう。ちょっと他人事じゃないなと思った。幸い俺の両親はまだ元気だけれど、何が起こるか分からないし、現実的な“介護”に直面した時に俺は上手く立ち回れるのだろうか。覚悟しなくちゃならない。
 ざっくり要約すると「人生いろいろありますけども、美しい瞬間や愛おしいもんもありますさかい、前向いて生きていきましょや」という感じ。



7日

 トッド・テリエの来日プレイを見にジュールへ。めちゃくちゃよかった。今まで行ったDJイベントで一番楽しかった気がする。ゴチゴチのタイト目なテクノから、ポップな歌モノまでジャンルをサラリと横断する選曲。ずっとシャザムを握りしめながら「ほぇ〜こんな曲あんねや〜」と耳から鱗状態。トッド・テリエのポップ心みたいなのが垣間見えて、大満足だった。
 しかし、人前で踊るのは恥ずかしい。カッコよく、リズミカルに踊れる必要なんてないのに、そもそも俺のことなんて誰も見てないのに、それでもどうも縮こまってしまい、ヌラリヌラリとした珍妙な動きに終始してしまう。隣のお兄さん、めちゃくちゃスマートに踊っていてカッコよかった。「この世には、踊る人間と、そうじゃない人間がいる」とはGotGのドラックスの言葉だが、踊りたくても踊れない俺は、もうどうしようもないのだろうか。



8日

 大型連休明け。ホリデーマインドが抜けきれていない、ホリデーボディをズルズルと引きずりながら出社。こういう時は忙しさが劇薬となって目が醒めたりするのだけれど、今日に限って仕事量が少ないという誰も得しないアイロニー。デザイナーの先輩がラウタロ・マルティネスみたいなヘアースタイルになっていたのが、マジで最高だった。



9日

 信じられないことに、囲碁将棋の情熱スリーポイントで、ふつおたが採用され「今週のMVP」(3度目)に選出された。しかも、この番組における最大の名誉である「タイトルホルダー」(メールがそのまま番組のタイトルになること)の称号を獲得してしまった。まだ鳥肌が立っている。俺にとってのバロンドールともいえる「タイトルホルダー」、絶対に手が届かないと思っていた「タイトルホルダー」。
 「ああ生まれてきて良かった、そう思うことが何べんかあるだろう。そのために生きてんじゃねえか」とはフーテンの寅さんの言葉だけれど、生きててよかったと心から思えた。これで、まだ世界に数枚しか流布されていない「タイトルホルダーステッカー」をゲットすることができる。囲碁将棋の2人に「いい文章書くなぁ〜」と言っていただけたこと、俺は一生忘れない。























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