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11 情報通?のアイツ

「何でもこの初日の昼食の時間の動向で、誰の派閥に誘われるかが決まるみたいだぜ。出来るだけ力や地位とか将来性がある先輩の目に留まるようにしないと、ここからの生活が厳しくなるらしい。場合によっては騎士になれない事がこの段階で決まっちまう奴もでてくるんだと」

「君さ。なんでそんなに詳しいわけ? 同学年なんだよね?」
 ミレディアに声をかけられた彼は身体を小刻みにふるふると震わせて切れの良い小刻みで気持ち悪いステップをするような動きでミレディアに詰め寄る。

「え、なになに!? ちょっ、近い! 近い!!」
「よくぞ!!! 聞いてくれました! この情報通のフェレーロ!! 諜報活動ならちょっとした自信がありましてェェ!!」
「だから近いってば!!」
「ちょっとした自信がありましてぇ!!!!」

 シュレイドは繰り返す言葉をまたフェレーロが発している姿を見ながら
(あ、これも大事なことなんだな……あれ? 諜報分野には向いてないという話を昨日、自分でしていたような気がするんだが?? どうでもいいけど)
という思考が頭をよぎっていった。

 さらに熱を帯びるフェレーロの話はとどまることを知らない。

「情報を集めるだけならば俺の巧みなトーク力でちょちょいのちょいってなもんよ!! おちゃのこちょいちょい! ちょちょいのさいさいってな!!」
「多分だけど、今みたいに凄くうっとおしい感じで喋られる想像がつくし、手早く必要なコト話しちゃって、バイバイした方がいいと思われてるからみんな話してくれるんじゃないかな!」
「なに分析してるんだメルティナ、というかその言い方は割とキツイとおもうんだが、、、」

ドウッ!!!!!!!!!!!!

 そんなやりとりをするシュレイドとメルティナの耳に直後に入ってきたのは何かを打つ鈍い音だった。音のした方に視線をやるとフェレーロのみぞおちに見事にミレディアの拳がクリティカルに叩き込まれていた。

「あ、言い方とかよりもっとキツイ事されてた……ね」
「……そう、、だな」
「げふぅ、なんでぇ、、、物理の拒否というのは、、、初めての、、パティーン(パターン)、、、はじめての、、、体験、、、つまり、はつ、たい、けん」
 フェレーロはゆっくりと膝を折り崩れ落ち大地に頭を垂れる


「あんた近寄りすぎなの!」
 ミレディアは顔を真っ赤にして怒っている様子である。

「ミレディ。流石にパンチはかわいそうだよー」
「はぁ、どうでもいいが早くいかないと何も食べられなくなるぞ、、、。」
「あ、そうだよね。午後もきつい授業が続くんだろうし」
「そんなやつほっといてさっさといこ!」
「ご、ごめんねフェレーロ君」
「そ、そんなぁぁぁ、一人に、一人にしないでくれぇ!! 一人で食堂に行くのはいやなんだぁ!! くぅう、いいとこに拳入ったから動けねぇ、、、シュレイドォ!! 親友のピンチだ。今こそ最大の命のピンチだ!! 助けるチャンスだぞぉぉおおお!! って絶対いま俺に見向きもしてねぇだろおお!!!」
(うん、正解)
シュレイドはそう心の中で呟いた。

頭は変わらず地面に伏せており、お腹を押さえて全力で大地に向かって叫んでいる。傍から見ると非常に不気味な光景だろう。

「ほら、シュレイド、メル! 早くいこ!」
 ミレディアはそそくさと歩き出した。
 シュレイドはため息を吐くとミレディアのあとを追った。
 メルティナはフェレーロにぺこりとお辞儀をしたあと二人についていく。

 うずくまり右手を伸ばして縋るフェレーロを残し、三人は食堂へと向かうのだった。

 遠くから何かしら言っているような声が後ろからしたのだが、3人は聞こえないフリをしてその場から立ち去り、食堂がある方へ向かって歩いていくのだった。


 道中、確かにフェレーロの言っていたように、食堂へ向かう最中には既に付近の様子がおかしい事を三人は感じていた。殺気立っているというか明らかに昼食時の休憩時間というような様子ではなかった。

 そして耳には怒号が聞こえたり金属音が聞こえてきたりしていて、先ほどのフェレーロの話は冗談などではなかったのだと三人は実感する。

「フェレーロ君が言ってたこと、ほんとみたいだね」
「みたいだな」
「なんだか悪いことしちゃったね」
「いーや、だとしてもあの距離感は無理!! 拳は必然!!!」
 ミレディアはまだプンスカしながら歩いていている。
「……にしてもさ、食堂へ向かう道でこの状態なら食堂の中はどうなってるんだろうね?」
 ミレディアの言葉に二人も不安な顔を浮かべる
「考えたくはないよな」
「でも、お昼は食べたいなぁ」
「……ふぅ、ちょっと俺が行ってくるよ」
「シュレイド?」
「二人は待っててくれ。外で食べれそうなものを調達して戻ってくるから」
「え、シュレイド!! 私も行くよ!」
「ミレディアはメルティナの所にいてくれ、お前が居ればなんかあっても大抵はどうにかなるだろうしな。」
「分かった。りょーかい」
「けど、シュレイド、ほんとに大丈夫?」
「問題ないって、食堂で買い物するだけだし」
「ここでメルと二人で待ってるからなるべく早めにね! お腹ペコペコなんだから!」
「ああ、すぐに戻る」

 そういうや否や、シュレイドは全速力で駆け出した。周囲から何人か視線が飛んできたのを瞬間的に肌で感じていた。

 今、視線を飛ばしてきている生徒たちは一定以上の実力者だと判断することができた。
 とはいえシュレイドにとってはさして興味のある事ではなかったので食堂までの道を一直線に駆け抜けて入り口から突入していった。


続く

作 新野創


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