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Second memory(Sarosu)06

「お前に、お前らに何がわかるんだよ。もう放っておいてくれよ……今更、何の用だってんだよ」


 違う_違うんだ____俺は__そんなことを言いたいんじゃなくて


「サロス……」
「馬鹿じゃないの!! あんたは、あんたはそんなに弱くないでしょ!! アカネさんが、大事に大事に育ててくれたあんたは、アカネさんを一番近くで見てきたあんたが!! 弱いわけないでしょ!!」


 ヤチヨ……お前まで……なんで……なんで俺に構うんだよ……


「出てけよ、、」
「そんな、今のあんた見て、アカネさんどんな顔すると思うの!! アカネさんはいつだって、笑顔だった。辛い顔なんて、あたしたちに見せなかった!! あんたは、そんなアカネさんの子供なんだよ!! だったら!!!」
「母ちゃんと……俺は……ほんとうの親子なんかじゃない!! 血の繋がりなんかっ、、、ねぇんだよっっ!!!!!!!!!」




 言っちまった。俺自身が一番言って後悔するような言葉を。



「そんな事!! そんな事、関係ない!!!」


 ヤチヨ……。なんで、諦めてくれないんだ……


「あたしは、アカネさんと親子じゃないけど。あの日まで、あたしのもう一人のママはアカネさんだった。血の繋がりなんか必要ない!! あたしとアカネさんはあの日まで確かに親子だった!! サロスは違うの!? あんたにとってアカネさんってなんなのよ!!」

 母ちゃんに決まってるだろ。

 血の繋がりなんて必要ねぇ。

 俺の母ちゃんはこの世でたった一人だ。

 アカネ母ちゃんしかいねぇんだ!!

「アカネさんが思い出させてくれた!! 家族の暖かさを、家族の大切さを、家族がいることの嬉しさを喜びを!! だから、あたしは、サロスと血は繋がってはいないけど、家族と同じぐらい大切なんだよ!! フィリアもシスターも!! みんなみんな、あたしの大切な人だよ!! サロスは違うの!? ねぇ!!」


 大事だよ……お前も、フィリアも、シスターも、大事な人達だ。でも、動けねぇんだよ。動いてくれないんだよ……体が……心が……死んじまったみたいに全然……

「サロス、僕は君のことが初めて会ったときは、苦手だった。いや、嫌いだった!! でも、君とかかわるうちに君を大事な親友だと思えるようになった。初めてだったこんな気持ちを持つなんて。友人なんてものは必要ない。ただ、一人で大人になれさえすれば良いと思っていた!! でも、今は違うんだ!! 君と、ヤチヨとずっと一緒にいたい!! それが、僕の願いなんだ!! 夢なんだ!! 希望なんだよ!! サロス!! 僕に光をくれた、君とヤチヨが僕には、必要なんだ!!」


 あぁ。俺も、大嫌いだった。いけすかねぇ癖にヤチヨが常に気にかけていて。

 でも、お前はすげぇ良い奴だった。 
 俺の親友ってやつはお前しかいねぇって言えるくらいにお前が大きな存在になっていってってた……だから、頼むよ親友。

 俺なんか放っておいてヤチヨを……。

「サロス、あたしたちにはサロスが必要なんだよ!! サロスのことを大切に思っているのは、アカネさんだけじゃない!! あたしたちは、アカネさんと同じくらいサロスのことが大好きで、必要なんだよ!! 一緒にいたいんだよ!! ねぇ、サロス!! 一緒にいちゃダメかな? アカネさんの代わりにはなれないかもしれない!! けど、あたしたちは、アカネさんと同じくらいサロスのこと大切だと思っているから!!!……だから……ねぇ……」


 ヤチヨ……
 
 俺の中に小さく僅かに何か熱いものが僅かだが戻った気がした。
 これなら、動ける? 足が体が動かせる?

 俺は、たどたどしい足取りで部屋の扉に手をかけた。

 ゆっくりとノブを回して恐る恐る扉を開けていく。

「……よぉ」

 久しぶりに見た二人の顔は、みっともないくらい涙でぐしゃぐしゃだった。

「けっ、ひでぇ顔」

 泣きはらした二人の顔をちらりと見て、思わず悪態をつく。

「ふっ、君もね」

 だろうな、見なくてもわかる。
 自分が二人に負けないくらいひどい顔をしていることくらい。


「へへ、久しぶり、サロス」
「おう」




 久々に、三人でたくさんのことを話した。


 二人の顔はまともに顔を見れなかったし、まだ笑顔を作ることはできなかった。
 話がつまらなかったとか楽しくなかったとかそういうことじゃない。


 でも、俺の心がまだ完全には元に戻っていなかった、ただ、それだけなんだ。



続く

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