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9 一撃のあとに
「ふんっ。私程度に一撃じゃシュレイドには一生勝てないわね」
「な、なんなんだこの女!? ちょおつええ!!」
「一撃だなんて、嘘でしょ!? ガストン大丈夫!?」
「この暴力女!!」
周りの取り巻きが倒れたガストンというらしい生徒を介抱しながら恨めしい視線を投げかけてくる。その時、あの鋭い声があたりに響いた。
「そこ! 何事だ! 一体何をしている!!!!!」
「…あっ、カレン先生。こ、これは……」
メルティナがとっさにカレンへと事情を説明しに入る。
「…ふぅ、全く。お前たちというやつは……この場にいる全員同罪だ。喧嘩した奴も見ていたやつも全員走り込みの追加だ。今すぐに走ってこい。なお、走り込みでの休憩は明日以降はしばらく全体で無しとする。」
場が凍るような震えるような怒気が込められた視線のカレンが生徒達を目線で射抜いていく。
「ひっ、はいー!!!」
その場にいた全員命の危険を感じて、そそくさと場を離れ走り込みのコースへ向かっていった。誰もスタート地点にいなくなった頃、丁度シュレイドが周回を終えて戻ってきた。このやり取りの短い間に戻ってきているとは今走り去った全員は知る由もない。
「あれ?誰もいない、、、なんで?…あ先生」
「うう、ううう、うううう、むりぃ」
「……おい、勝手なことをするんじゃない。誰がくたばったやつを助けていいといった…ん? お前は……」
「え、あ、でも、倒れてて、あ、その、すいません」
「お前達二人ももう一周いけるな」
「え、ええ!?せ、先生ぇ、そりゃ、ない、です、よぉ!」
「黙っていけ。まだ動けるんだろう?」
「…ひっ、は、はいぃい。ゲゲホッ、ゲホォ、ブフウゥ」
よたよたとよろめきながらもシュレイドの背中から降りたフェレーロはコースへと戻っていった。
と思ったらすぐに道端に倒れ込んだ。
「まったく、何を遊んでいるんだあいつは」
「え?」
「まぁいい……シュレイド、お前も行ってこい」
「あ、はい。わかりました。もう少し走りたかったんで丁度良かったです」
「……時にシュレイド、既に先を走っている奴ら全員を追い抜いて、一番でここに戻ってこれるか?」
「え、ああ、はい、行けると思います」
「考える間もなく返答とは、さも当然のようにいうのだな」
「当然というか、みんな疲れてましたし」
「お前は疲れていないと?」
「このくらいでしたら」
「ふ、そうか、では行ってこい。なら、一番じゃなかった時は覚悟しておけよ」
「…あ、はは、行ってきます」
その後、最後の最後で意地になって走っていたミレディアに僅差で負けたのはまた別の話であった。
続く
作 新野創
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