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2 東西の学園と騎士

 彼らが過ごす学園というのは、この国、シュバルトメイオンが誇る由緒ある学園のことである。国を守る為の騎士を育成する制度として存在しているが学園の歴史としてはまだ浅い。だが、この制度を一体誰が始めたのかという点は現在は定かではなくなっている。一説では当時の国王の一声という事であったらしいが旧王都時代の双校制度発令時の様子を記憶している者はほぼいない。
 ただ学園が出来るかなり以前からこの一帯の場所自体は存在しており、その場所の用途も不明となっていた。制度が生まれた際にその環境が騎士を育成するのに適していたという理由でこの広大な場所や建物を利用することになったのだと言われている。

 そして、双校制度とはまた別にシュバルトメイオンの騎士達そのものの起源に関してはまた話が変わる。一体いつ生まれたのか、最早、誰にも分からないのがこの国の騎士という存在だ。今やもう余りにも当たり前に日常に存在するがゆえに多くの人間がその起源には気に留めないというような時代になっていた。

 一部の学者の間では神話の時代が終わりを告げた後に騎士は生まれたということで起源のあれこれは落ち着いている。

 双校制度の話に戻るが、学園という場所はシュバルトメイオン国内に二校存在する。それぞれ――
――「東部学園都市コスモシュトリカ」(総合対応能力至上主義の学園)
――「西部学園都市ディナカメオス」(単騎戦闘能力至上主義の学園)

という名を冠しており、そのうちシュレイド達がいるのが東部学園都市コスモシュトリカ。

 この国で言う学園という環境、組織は他には存在しない。その環境維持は少しばかり特殊で学生が授業以外の時間で自主的な地域管理を行っており、その機能はさながら小国のようでもあった。
 この年齢の頃から国で働くという事の意義、本質を学ぶために基本的には授業以外の部分においてはほとんどが生徒たちの手で行われている。

 そして、この学園の特筆すべき点はその退学率である。退学といっても自らの意思でなく、在校し続けることが困難な者達が強制的に退学となる。真に国の為となる騎士を育成するという目的の元で、多くの生徒がケガを負ったり、命を落としてしまうからだ。
 その代わりその門戸自体は広く、実力を重要視するため、身分、出自を問わずに入学することが可能となっている。訳アリの者達も多いのが校風であり、学園の良くも悪くもな特徴となっている。


 変わりゆく今の国の在り方、その時の流れの気まぐれによって巡り合う者達の日々は一体どこに向かうのか。この学園で始まる物語の行く末をまだ誰一人知らずに過ごしていた――――



 ――――広い講堂に女性の声が響き渡った。鋭く芯のある声だ。
 生徒たちの目の前で黒髪の凛とした佇まいの女性が話をしている。彼女は任務の途中に負った怪我が原因で前線を退き、双校制度の教師という立場になったという噂がある。
 そして西部学園の教師マキシマムにここへ連れてこられたシュレイド達の面倒を時折、見てくれていた女性だ。

「さて、この国の歴史は神話の時代から生まれ、今なお続く国だとされている事はさすがにお前たちでも知っているな? では、ここで質問だ。現在に在って、神話の時代には無かったと言われている存在が分かる者はこの中にいるか?」
 静まりゆく室内、生徒たちは先生の講義に耳を傾けていた。
「____誰もいない、か?」
「…はい」
 誰も手を上げないのを見かねたシュレイドがおずおずと手を上げる
「ほぅ、お前、か」
「え、まぁ。他に誰もいないなら、と」
「いいだろう。答えろ」
「はい、それは騎士です」

 周りはざわつく、そんなに簡単な事だったのかと。簡単なら自分で答えればいいものではあるが、多くの生徒が目の前の女性教師の威圧感によって委縮していたのだろう。

「……その通りだ」
「わ、シュレイド凄い!」
「お前たちが目指す騎士という存在は神話の時代以降で生まれた存在で、その誕生の歴史はお前たちが思っている以上に遥か昔だということだ…にしても、今年は自分が目指すもののことも知らん奴らが他のクラスでも多かったな。初めから気が滅入る」

 彼女は生徒達に目線を移して頭を抱えていたが、すぐにシュレイドに向き直り言葉を続けた。


続く

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