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26 デブの情熱

(…絶対、会長は僕がこの問題にずっと取り組んでるの知ってる感じだよねぇ、でなきゃ僕なんか選ばないはずだし、はぁ)

カレッツは心の中でも外でもため息を吐いた。

「はぁ、では、まず僕の方からですね。僕はカメオスの側でこの均衡を崩したいと思います。ですが、まず、前提としてコーモスとカメオスの力そのものは不均衡で崩せないものだとも考えています。なので、周りで膠着をしている眷属達に着目しました。なぜ二人の戦いに介入しなかったのか? これ自体には幾つかの仮説が立てられています」

 カレッツは指を一つ立てて続ける。

「その中で僕も一つの仮説を立てました__」

 周りは息をのんでカレッツの言葉を待った。

「____そう!! 眷属達には、報酬が全くなかったんじゃないかと!!!! 僕は思い至りました!!!!!」

 なぜかカレッツはどうだと言わんばかりに胸を張っている。が、やはり腹の方が突き出ていた。

「つまり、必要最低限の役割くらいの報酬しかもらえないことが事前に分かっていた。だから、危険な神同士のぶつかり合いには介入しなかった!! 誰も死にたくなんかないからね!!! 命かけさせるならそれなりの報酬を、対価をだせよと!!!!」

 突拍子もない考え方だが、その場で笑うものはいなかった。

「つまり、動くに足る報酬、対価さえ用意が出来ればいずれかの眷属は動かせたのではないかと考えます。そして、僕がカメオスを選んだ理由。それが一つのカギです」

 カレッツは二本目の指を立てて鼻の穴を大きく広げている。彼にとっても興奮する状況なのだろう。これまでに幾多の考えを巡らしてきた難題に対して自らが出した一つの解に余程自信があると見える。

「混沌を司る神であるカメオスの眷属達は同じ特性を持つものが集まっていたはずです。つまり均衡の保たれている今の状況は彼らにとっては不都合極まりなかった。であれば彼らが混沌を好む存在なのであれば対価の提示が出来れば、あるいはこの状況を乱せるのではないかと考えました」

 カレッツは更に三本目の指を立てる。

「ただ問題はその対価でした、ですが現在コーモスとカメオスの二柱の神が均衡を保ち続けるならばの状況は明らかにコーモスの秩序を司る力の方が明らかに優位、であるにも関わらずなぜカメオスの側が均衡を保てたのか? という点が疑問となり立ちはだかる為、対価の想像が難しかった」

 
 カレッツはシュビッと四本目の指を立てて叫んだ!!!!!

「答えは、、、僕たちが男性がおっぱいを求める心の中にこそあったんです!!!!!」
「オイコラ!!!! テメェ!!! カレッツ!!!! 珍しく真面目に話してたかと思えば!!!」

 アイギスがたまらず食って掛かり今にもカレッツに飛びつきそうになった、が____

「アイギス!!!!!」

__エナリアはアイギスを強い言葉で引き留めた。

「お、オゥ、わ、わかってるって、そんな怒らないでくれよ、、」
「今は最後まで聞きましょう」

 カレッツはニヤリと笑みを浮かべて全員を一瞥した。

「カメオスの眷属は混沌そのものを本能的に求める眷属達! 神と神の間に介入すること自体が極上の混沌になる! それを我々で味わってみようじゃないか? という形にすれば僕の目的と彼らの求める対価は同時に満たされる」

 エナリア、そして生徒会の面々、そしてメルティナとシュレイド、ミレディア達はカレッツの様子から目を離さないように彼の言葉に徐々に聞き入っていた。

「これは少し試してみようよというだけでも十分OK、更にそもそも介入が失敗したとしても、その時点で状況は既に混沌の中にある。おっぱいの谷間、双丘という名の迷宮に迷い込んだ我々男性のようなもの、あとは思い切って触れるのかいっそ揉みにいくのか、はたまたそのまま迷い込んだ感触を味わうのかに悩むくらいの違いだね。どれでも最高って気持ち、つまりは混沌たる状況を生み出す結果というのは、この時点で最早、変わることはない」

 カレッツは最後に親指を立てた。アイギスの顔にだけはどんどん血管が増えていく様子が目に入る。

「欲求、つまり本能というのが神々やその眷属にも、もしかしたら人のように存在するのではないか? という発想からの着眼点です。僅かな揺らぎに影響が出てしまうのはどう考えても秩序の神コーモスの側であることを考えれば、おそらくこれが唯一の突破口ではないかと考えます」

 この場にいる全員がカレッツの話を聞いて考え込んでいた。




作 新野創
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