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大阪市北区堂山町傷害被疑事件及び茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件の争点を分析する 1

 大阪市北区堂山町傷害被疑事件及び茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件は、横浜地方裁判所での審理が終わり、判決の宣告を待つばかりとなっています。今回は、公判の内容から争点となっていると思われる部分について私的に分析してみようと思います。

伊藤大介被告人が荒巻靖彦さんと会おうとした動機は何か

 現在横浜地方裁判所で審理がなされている大阪市北区堂山町傷害被疑事件と茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件は、検察側の主張が全面的に認められた場合に反差別運動に深刻な影響を与えるものであるといえます。
 大阪市北区堂山町傷害被疑事件では、事件のきっかけとして大川直樹さんから「レイシストと話してみたい」と聞いて伊藤大介被告人がその願いを叶えるべく動いたわけですが、深夜であることで飲食店を経営している荒巻靖彦さんしか会うことができないだろうと電話したもののその日は飲食店は休業日でした。そうであるにも関わらず、伊藤大介被告人は荒巻靖彦さんを呼び出すような形で会うことになりました。
 ただ、「話したい」と述べていた大川直樹さんは伊藤大介被告人が荒巻靖彦さんと会う段取りをつける経緯については記憶に残っていないと証言しています。ひょっとしたら、大川直樹さんは伊藤大介被告人と同乗したタクシーの中で酔い潰れて寝ていたのではないでしょうか。そのような状態にある大川直樹さんのために荒巻靖彦さんと会う段取りをつけた伊藤大介の言動は、大川直樹さんの願いだけでなく、自らの目的のために荒巻靖彦さんと会おうとしたのではないかという疑念を消すことはできないのではないかと思います。
 そうであった場合、伊藤大介被告人が荒巻靖彦さんと会おうとした理由として考えられるのは、その飲食店内でかつて発生した伊藤大介被告人と荒巻靖彦さんとのトラブルです。尋問を聞いた感想としても、検察は伊藤大介被告人が犯行に及んだ動機としてトラブルによる荒巻靖彦さんへの私怨であると印象付けようとしていると感じました。

荒巻靖彦さん、渡辺賢一さんはレイシストなのか

 荒巻靖彦さんは、京都朝鮮第一初級学校前で街頭宣伝活動を行い、刑事や民事でその責任を問われ有罪になったり、賠償を命ぜられたりした人物でした。私も荒巻靖彦さんはレイシストだと思っていますが、これはあくまでも私の認識でレイシストであると考えているということにすぎず、法的にレイシストであると認められるわけでもありません。
 また、渡辺賢一さんの活動についてはまったく存じ上げませんが、伊藤大介被告人や北島直樹被告人に最も好意的な解釈をしたとしても、過去にヘイトスピーチをなしたことがある人物というのがせいぜいなのではないでしょうか。
 弁護人である神原元弁護士や上瀧浩子弁護士らのツイッターなどによれば、レイシストであることを理由として彼らの人権を制限することに熱心なようですが、そのようなことができると考えている弁護士がいることに眩暈がします。
 同様の規制がなされている暴力団排除条例では、暴力団員とその関係者を法的に定め、警察署にその人物のデータベースを保管し、一定の要件を備えた問合せに対して警察署が回答することによって排除するという仕組みとなっています。
 つまり、神原元弁護士、上瀧浩子弁護士が理想とする社会は、一定の範囲の思想を持つ人物を法的にレイシストと定め、警察署にその人物のデータベースを備え、一定の要件を備えた問合せに対して警察署が回答して排除するという社会なのでしょうか。仮にそのような監視社会がお好きなら、そのような監視を続けている国に移住せずに自由な日本でお住まいになっているのはなぜなのでしょうか。
 本題に戻りましょう。荒巻靖彦さん、渡辺賢一さんについては、被告人らに最も好意的な解釈をしたとしても、過去にヘイトスピーチをなしたことがある人物でしかなく、彼らがヘイトスピーチを現実に行う危険性に関する主張が穴だらけでレイシストであるとする主張はまったく説得力がないもので、おそらく判決には影響を与えないと思います。

伊藤大介被告人が刺されたとする「殺人未遂」事件はどう評価すべきか

 伊藤大介被告人は、野間易通さんのYoutubeチャンネルである「cractube」において、弁護人となっている神原元弁護士とともに出演して、荒巻靖彦さんが殺人未遂事件を起こしたとの主張を繰り広げました。

 同様の主張は、のりこえねっとでもなされました。

【のりこえねっとTV】野間:荒巻、殺人未遂なのに罰金で釈放。腹を刺したのに、刺された伊藤さんを逮捕してまだ勾留中。ありえない。
右は西村斉。略式罰金。表現の自由? 反差別規範は裁判所でも欠けている。#norikoenet #NoHateTV

 これらの主張から、伊藤大介被告人及び現場にいた大川直樹さんからは荒巻靖彦さんがどのようにして伊藤大介被告人を刺したのかなどについて詳しい証言や主張がなされるものと思っていました。しかしながら、大川直樹さんの証言では刺された場面は見ていない、伊藤大介被告人の口からも刺された状況について詳しく述べられることはありませんでした。伊藤大介被告人の発言が徐々に変遷してきた理由を推察すると、傷害被疑事件の供述の過程で警察から現場の防犯カメラの映像を示され、荒巻靖彦さんの殺人未遂の主張を続けることが困難であると判断したのではないかと思います。殺人未遂に関する主張の如何によっては虚偽告訴罪の構成要件を満たすおそれがあることからしても、現場周辺に多く設置されていた防犯カメラの映像から早めに殺人未遂の主張を引っ込めたのは賢明な策であると思います。ただ、今後の判決の内容などによっては、荒巻靖彦さんから名誉毀損による不法行為を理由とした民事訴訟が提起されるおそれがあり、その被告となる可能性があるのは、伊藤大介被告人、動画で殺人未遂と主張していた野間易通さん、安田浩一さん、弁護人の神原元弁護士にとどまらず、ツイートで同様の主張をツイートしていたのりこえねっとの共同代表全員に及びます。このような事態となり得ることを考えると、伊藤大介被告人から支援者たちに対してちゃんとしたコメントがなされる必要があるように感じますが、北新地大学院生リンチ事件においても加害者の金良平さん、李普鉉さん、被害者の胸倉を掴んだ李信恵さん、現場にいた伊藤大介さん、松本英一さんから #エル金は友達 祭りに参加した支援者たちにまともな説明がなされなかったことから期待する方がおかしいのかもしれません。
 いずれにしても、荒巻靖彦さんの伊藤大介被告人に対する「殺人未遂」については、伊藤大介被告人にとって不利に働くことはあっても有利に働くことはないのではないでしょうか。