見出し画像

反差別統一戦線東京委員会さんの知性のかけらもないツイートについて

安倍晋三元総理大臣の銃撃事件と反差別統一戦線東京委員会さんのツイート

 令和4年7月8日、奈良県奈良市で参議院議員通常選挙の街頭演説を行っていた安倍晋三元総理大臣が銃撃され死亡しました。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也容疑者について続報が相次ぎましたが、早い段階で報じられたのは元海上自衛隊員であるということでした。
 これに対して、「反差別統一戦線東京委員会」を名乗るアカウントが次のように述べています。

だから「警察や自衛隊は暴力装置」と言われただろうに。
【続報】安倍元首相を銃撃した山上容疑者は元海上自衛隊員 | FNNプライムオンライン

@Anti_Discrimina

 暴力装置とは、人間が本来持っている自力救済などのための暴力を独占して管理する組織や機関のことです。他人に財物を奪われた場合にその財物を取り戻そうとする行為、他人に家族を殺傷された場合にその者に復讐しようとする行為、他国に侵略された場合に抵抗しようとする行為は本来人間が持っている権利ですが、個々人がこれらの権利を行使しようとすると社会の秩序を保つことができなくなります。そのため、警察、軍隊、検察、裁判所などにその権利を預けるとともに、個々人がその権利を行使することができる要件を非常に狭くするようにしました。その権利が預けられた先を暴力装置とよぶわけです。
 かつて、平成22年11月18日の参議院予算委員会で仙谷由人内閣官房長官が「暴力装置」と述べて大きな問題となったことがありました。

国務大臣(仙谷由人君)
今、法の精神と言われました。公務員という世界では、同じように政治的な中立性が求められると思います。そしてさらに、この暴力装置でもある自衛隊……(発言する者あり)まあある種の、ある種の軍事組織でありますから……(発言する者あり)
委員長(前田武志君)
お静かに願います。お静かに願います。
国務大臣(仙谷由人君)
軍事組織でもありますから、これはシビリアンコントロールが利かなければならないと。それから、まあ戦前の、戦前の経験からしまして、決して……(発言する者あり)じゃ、実力組織というふうに訂正させてもらいます。実力組織でありますから……(発言する者あり)
委員長(前田武志君)
質疑者以外の方は質疑の妨げになります。御静粛に。
国務大臣(仙谷由人君)
実力組織でありますから、これは特段の政治的な中立性が確保されなければならないということだと思います。これは、これは……(発言する者あり)新解釈じゃありません。やっぱりこれは戦前の経験を、いわゆる軍国主義という経験をして、その中で、中からも外からも非常にある種の政治性の強い働きかけやあるいはその行為に、それに呼応する動きが出てきてあのようなことになったわけでありますから、特に実力組織としてはより念を入れた特段の政治的な中立性が保障されるべきだと。そのために、一般の国家公務員ではここまでだということであっても、関与を疑われるような行為もやってはならないと、あるいはそれに巻き込まれるようなことにならないように注意してくださいよと、こういう通達だと思います。
世耕弘成君
きちっと議事録に残す必要があるので、自衛隊のことを暴力装置とおっしゃいました。これ、現場の隊員のためにもきちっと撤回と謝罪をしてください。
国務大臣(仙谷由人君)
そのとおり撤回をして実力組織と言い換えます。
世耕弘成君
謝罪、謝罪、謝罪も求めたんです。(発言する者あり)
委員長(前田武志君)
世耕委員、もう一度、もう一度御質疑ください。
世耕弘成君
撤回だけじゃなくて謝罪もしてください。
国務大臣(仙谷由人君)
法律上の用語としては不適当でございましたので、自衛隊の皆さん方には謝罪をいたします。
世耕弘成君
このように、表現の自由に関してももう解釈はめちゃくちゃだということがはっきりしました。自衛隊を暴力装置として見ている、こういうことも分かりました。

第176回国会参議院予算委員会第6号 平成22年11月18日

 この仙谷由人内閣官房長官の「暴力装置」発言が大きな問題になっていたとき、私は国会の議論のレベルにあきれていました。なぜならば、法律的な概念として軍隊ではないものの、その多くが軍隊と重なる自衛隊が暴力装置であることは当たり前のことであるからです。
 しかしながら、それは自衛隊という機関が暴力装置であるということであって、自衛隊員がその職を離れれば暴力装置とは無関係となるということでもあります。そうであるにもかかわらず、「反差別統一戦線東京委員会」を名乗るアカウントは、元海上自衛隊員と報じられた山上徹也容疑者を「暴力装置」を担う者であるかのようにツイートしているわけです。

反差別統一戦線東京委員会さんのツイートに潜む差別意識

 そして、私は、「反差別統一戦線東京委員会」を名乗るアカウントのツイートから自衛隊員に対する差別意識を感じました。
 日本では、死にかかわる者を忌避する意識が根強くあり、それは穢れの思想とよばれています。その穢れの思想によって、平安時代の朝廷が死にかかわる武士を忌避して直轄する軍事組織を持つことがなく、部落差別によって皮革業など動物の死にかかわる仕事をせざるを得なくなった者が現代に至るまで差別を受ける対象となってしまっているのです。そして、自衛隊員に対してそのような差別意識を持っていないならば、自衛隊員が除隊した後もまた「暴力装置」などとよぶようなことはしないはずです。