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見せて伝えるのではなく、わかるものを見せて伝える。ポイントは思いやり。

この記事は2,886文字あります。個人差はありますが、4分〜7分でお読みいただけます。

前回は「スケジュールは大事だけれども魔法のツールではない」というテーマで書かせて頂きました。今回は、もう少し広いテーマ「視覚支援」を取り上げ、「見せて伝えるのではなく、わかるものを見せて伝える」について書いていきたいと思います。ちなみに、前回の記事のリンクは下記になりますので、ご関心あればお読みください。

言葉で伝えていたことを視覚的にしたものが視覚支援?

自閉症の方々の支援現場では「視覚支援」というのは、一昔前と比べるとあたりまえのように語られるようになってきた支援の考え方のように感じます。そのため、視覚支援という言葉を全く聞いたことがないという人の方が少ないかもしれません。

視覚支援=言葉で言っていることを見せて伝える、とされることもありますが、それは正しいようで正しくないようにも思います。「視覚支援=見せて伝える」のはその通りではありますが、なんでも見せて伝えたらいいかというと、そんなことはないからです。

ポイントは「わかる形で見せて伝える」

「わかる形で見せて伝える」

それはどういうことでしょうか?
ぼくらの生活でイメージがつきやすいところでいくと、コンビニでは、「じゃがりこ サラダ Lサイズ 173円(税込186.84円)」という感じで、どの商品がいくらするのかをわかる形で提示されています。

でも、それがわからない形、例えばギリシャ語で書かれているとなった時にはどうでしょうか。上述のじゃがりこについては、以下のような表示になります。

「Σαλάτα Jagarico, μέγεθος L, 173 γεν (186,84 γεν συμπεριλαμβανομένου του φόρου)」

どうでしょうか?
これも情報が目で見てわかるようになされている視覚支援ですが、詳しくは何を意味しているのかはわからないかもしれません。つまり、わからないものを見せて伝えられても、わからないんです。

  1. じゃがりこ サラダ Lサイズ 173円(税込186.84円)

  2. Σαλάτα Jagarico, μέγεθος L, 173 γεν (186,84 γεν συμπεριλαμβανομένου του φόρου)

また、こんな風に表示されていて、どっちかの商品を買ってくださいと言われたら、(1)を選ぶことがほとんどではないでしょうか。つまり、わかることは安心し、安心するから行動にもつながるといえるかもしれません。

思いやりを持った提示が視覚支援

ここまで伝えてきたことは、「見せて伝えるのではなくて、その方がわかる形で見せて伝えることが大事」ということです。では、そのためには何が必要かというと、「伝えたい相手のことを考える」ということです。

ぼくらが伝えたいことを伝えるのではなくて、相手に伝わりやすいためにはどうしたらいいか、相手のことを考えて、相手が受け取りやすい情報を渡ししていくこと、つまり、思いやりを持った視覚支援が大切でしょうか。

例えば、現場では絵カードや写真カードが使われることが多いのですが、それだと難しいので実物を提示するということもよくなされます。だけれども、「実物でもわからないのでどう伝えたらいいか」とご相談を受けます。

ここでのポイントは、「実物ならなんでもわかるわけではない」ということです。実物だからわかりやすいのではなくて、それをみて「これをするんだな」とイメージがつきやすいからわかりやすいわけです。

だとすると、実物をみて「ご飯だ」「トイレだ」「遊びだ」とわからなければならないので、普段から使っているものを使う(イメージがつく)ことが大切です。

  • ご飯ならいつも使っている食具

  • トイレならいつも使っているオムツ

  • 遊びなら玩具であればなんでもいいわけではなくて、いつものお気に入りの玩具

こんなことを意識してみると良いかもしれません。

まとめ

なんでもかんでも見せたらいいわけではなくて、何を見せたら「あ、この活動するんだ」とわかるかどうかを知ることが重要です。これをアセスメントと呼んでいます。つまり、その方をよりよく知ることが、どんな場面でも大切といえます。

ですから、絵カードや写真カードを使うとなった時にも、見たことないもの、馴染みないことを写真やカードにしても十分には伝わらない可能性が高いかもしれません。そうしたことをして、
・視覚支援はあわないんだな
・視覚支援は意味がないんだな
というのは判断が早いかもしれません。

見せて伝える際には、下記がポイントです。
・それをみたら何をしたらいいんだろうか
・何を求められている/期待されているんだろうか
・何を伝えられているのかがわかる形で伝えること

こうしたことを意識しておかないと、一生懸命準備したのに、提供した側も、提供された側もストレスフルになりますので、その辺を意識して普段の支援を考えていかれるのはどうでしょうか?

いくつか宣伝

今回は視覚支援をテーマに書きました。視覚支援もわかりやすい環境設定の一つですが、そうしたことをテーマに、代表を務めているTEACCH研究会東北支部にて、6月18日(日)にお話をさせて頂きます。

TEACCHプログラム研究会東北支部

TEACCHプログラム研究会ではこれからご一緒いただける会員の方々を募集しています(東北在住の有無は問いません)。東北支部会員の皆さんには、これまで会員限定コラムや動画を配信しています。支部としては、一般的な研修の機会だけを提供するのではなく、会員の皆さんにとって有益となるようなものを提供させて頂いたり、コミュニティとしてより繋がりができ、そこに価値を作っていきたいと思っています。現在の会員特典としては下記になっていますが、今後より充実させていきたいと考えています。

【会員特典】
・研修費の割引
・会報誌の閲覧 ・指定する研修参加への助成(最大50%、上限2万円) ・限定コラムの配信(無料)
・限定動画の配信(無料)
・オンライン座談会(無料)

【今後追加する特典】
・新たに支部会員との対談動画を配信していく(会員のみ視聴可能。無料)。→内容としては、会員の皆さんの中にはさまざまな立場の方がおり、それを活かした取り組みをしていきたいと思っています。例えば、偏食含めた食事における工夫、心理検査を活用するための工夫、発達障害と司法など、それぞれの専門家の方々と佐々木とで対談をし(45分〜60分程度)、それをお届けしたいと企画しています。5月は、「偏食含めた食事における工夫」ということで調理師の方とお話ししたいと思います。  

このコンテンツでは、普段の研修会とは違った、よりニッチなこともテーマとして扱っていきたいと思いますし、会員の皆さんからもご質問をお受けしたいと思います。ぜひご一緒しませんか?

https://teacch-tohoku.studio.site/

佐々木康栄

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