図2

一番良かったボジョレーは何年だ問題

ボジョレーヌーボーといえばまず、ボージョレーなのかボジョレーなのか、ボなのかヴォなのかみたいな表記問題というものがあって、これはこれで色々と主義主張があるらしいのだが、ここでは踏み入らないこととする。
あくまでシンプルに行きたい。

そう、問題にしたいのは毎年毎年発表されるあのキャッチフレーズだ。常に今年が一番美味しいような気分になるわけだが、では経年で並べてみたら一体全体どの年が一番美味しかったと言えるのだろうか……疑問に感じたことはないだろうか?
少なくとも私はある。
無茶苦茶気になっている。

というわけでそれを明らかにしてみようという試みである。
まずはざっとこれまでのキャッチフレーズをを並べてみよう。

<歴代キャッチフレーズ>
95年「ここ数年で一番出来が良い」
96年「10年に1度の逸品」
97年「1976年以来の品質」
98年「10年に1度の当たり年」
99年「品質は昨年より良い」
00年「出来は上々で申し分の無い仕上がり」
01年「ここ10年で最高」
02年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」
  「1995年以来の出来」
03年「100年に1度の出来」
  「近年にない良い出来」
04年「香りが強く中々の出来栄え」
05年「ここ数年で最高」
06年「昨年同様良い出来栄え」
07年「柔らかく果実味が豊かで上質な味わい」
08年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
09年「50年に1度の出来栄え」
10年「今年は天候が良かった為、昨年並みの仕上がり」
  「1950年以降最高の出来といわれた2009年と同等の出来」
11年「近年の当たり年である2009年に匹敵する出来」
  「3年連続で、とても偉大な品質」
12年「ボジョレー史上最悪の不作」
13年「記録的な不作だった昨年は上回った」
  「みずみずしさが感じられる素晴らしい品質」
  「小粒だが味の濃いブドウが収穫できた」
14年「近年の当たり年である2009年と肩を並べるクオリティ」
15年「我がワイン人生最良のヌーヴォー」
  「過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせる」
16年「エレガントで酸味と果実味のバランスがとれた上品な味わい 」
17年「今世紀最高と称された2015年を思い起こさせる。しかも、一層溌剌としていて、優美さという点でもレベルが高い」
18年「2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう」

こう並べてみると「やはりだいたい毎年ただひたすら褒めているだけ」ということが判明しただけのように見えるが、後述するルールに則って序列を加えていくとこんな様相になる。

なぜこうなったのか? 順位づけするにあたっての判断基準を説明していこう。

<序列ルール>
(1)10年に1度 < 50年に1度 < 100年に1度
(2)具体的な年次を指定している序列は遵守する
 99年「品質は去年より良い」
 01年「ここ10年で最高」
 02年「01年を上回る」など
(3)上々>中々
(4)序列表現がなく、ふわっとイメージワードだけで語られるものは「察せよ」だと判断し下位に置くこととするが、「最悪」などのワースト表現よりは上位と判断する
(5)「xx年を思い起こさせる」は「近いレベルにあるがxx年を超えているわけではない」と判断する

特に問題なく、納得性の高い序列基準と言っていいのではないだろうか。しかしここで、ルール裏切るような理屈が通らない序列ワードが、いくつか存在することが見て取れる。

<序列ルール補足>
(1)「10年に1度」の頻出
「10年に1度」以上の品質が95年~04年に6回出現するという事態。絶対的評価として使えないため「この10年に1度」という相対比較解釈を加えることで基準崩壊を解消することとした。

(2)全て受け止めると論理破綻する存在「95年」
02年の「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」は高い評価に位置づけるべき表現だが、同時に「1995以来の出来」という表現もあり、矛盾が生じている。これを「(香りの面では)1995年以来の出来」など、限定的高評価であった(に違いない)と無理やり解釈することで矛盾を解決することとした。

(3)「(82歳の爺の)我が人生最良」と「100年に1度」の優先度
15年に「我がワイン人生最良」と述べたジョルジュ・デュブッフ氏は1933年生まれでその時点では82歳。その人生の中に03年の「100年に1度」が間に含まれているが、03年の出来も含んだ上でなお「人生の中で最良の出来」というという解釈を加え「人生最良」を優先することとした。

(4)18年の「2017年、2015年、2009年と並び」に論理破綻
ルールに基づいて並べた結果、同評価とならなかった09,15,17年と「並ぶ」と評される時点で基準が崩壊している。中でも09年は、同等評価が10,11と3年続き、さらに14年にも同評価となるなど高評価インフレ状態にあり、基準にするには不安視したくなる状況。よって09年は判断の基準から外し、15年と17年のみを採用し、その評価に準ずる出来ということで間を取ることとした。

以上の判断条件により導き出されたのが上記グラフである。
(ずいぶん上に行ってしまったのでまとめを再掲しよう)

まあ、振り返ってみても特筆すべきは2012年だろうか。
「ボジョレー史上最悪の不作」
どうした。
売る気なしか。
どんだけだ。
いっそ最も評価が輝いている年と言えるだろう。

以上「ボジョレー経年評価」、お読みいただいてありがとうございました。こいつバカだなー、しょうがねえなーと思ったら投げ銭していただくと喜びます(ΦωΦ)

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