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午後10時30分。電波塔にて

それは2021年の、春も終わりかけの頃のことでした。

世間では、未だコロナ禍の終わりが見通せない時期。

とある地方都市から、晴れて東京の大学に進学した僕は、運動がてら、友人と2人して自転車を夜道に走らせます。

夜22時30分。ふと夜空を見上げると、暗闇に溶け込む一筋の紅い塔。
間違いありません。正真正銘の東京タワーです。

感染拡大を受けて、各公共施設のライトアップが中止されていた頃。

きっと、日本のどの建造物よりも名を馳せる電波塔が、眠らない街でひっそり佇む姿。

地方出身の自分にとって、それは忘れられない光景になりました。


戦後復興の象徴ともされる東京タワー。

恥ずかしながら、その鉄骨の一部が戦車、それも、実際の朝鮮戦争で使われた、米軍の戦車のスクラップに由来することは、今年になって初めて知りました。

1950年代の朝鮮戦争期。戦争で用いる武器や弾薬を作ることで、『特需景気』を経験した日本。

戦争を経て深い傷を負った後に、同じ『戦争』の恩恵を受けて飛躍的な発展を遂げた街。

「戦争って、一体なんなんだろう。」

先の見通せない今を生きる私たちに、考えさせられるものがある気がします。


産業が成熟しきっていなかった当時の日本にとって、大きな存在であったとされる『戦車のスクラップ』。

それは、タワーの建造から65年が経とうとする今もなお、世界で最も人口の多い街となった街を、ひときわ明るく照らします。

明暗は表裏一体。

そんな鉄塔に思いを馳せた、大好きな歌があります。
せひ聞いてみてください。

錆びた鉄が叫ぶ普通を
倒したり守ったりの車になり
溶けた鉄が生まれ変わって
音楽を飛ばしているタワーの灯り
星野源『電波塔(House ver.)』より

※冒頭のサイクリングについては、
マスクの着用、ソーシャルディスタンスなど、
感染対策を徹底の上実施しました。




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