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ゴジラ-1.0 超ネタバレ感想

全部ネタバレで、全肯定で、ゴジラ-1.0の感想をつらつらと書き出してみる。
まだ観ていない人は、読まないほうがいいです。

ゴジラ-1.0。
それは朝ドラの世界に怪獣が殴り込んできた映画。

そうです。ゴジラ-1.0は、ゴジらんまんぷくです。
文中では、典子さんを「らんまん」の寿恵ちゃん、お隣の澄子さんを「まんぷく」の福子さんを演じたサクラさん呼びして少々錯乱していますが、お許しを。

終戦直前

おお〜のっけからいきなり怖い。
いきなり凶暴な姿を最初から見せるのは凄いなあ。
ひ、ひとを喰っている。ジュラシックパークではトイレに入っていた男がティラノサウルスに喰われたシーンがあった。でも、この映画のゴジラはいきなり何人も喰っている。むっちゃ凶暴。
実際、あれが睨みつけている所で零戦の引き金を引いても喰われるだけだろうなあ。それでは映画がそこで終わってしまう。だから敷島くん、撃たなくて良かったんだろうけど…
「お前が撃たなかったから皆んな死んじまった」
むっちゃくちゃ責められて辛い辛い。キッツイなあ。
この鬱な状況だけで敷島くんに感情移入してしまう。
だって、全部(その世界では)正論だから抗えない。

焼け野原に帰還

やっとの思いで帰ってきたら実家無くなっているし、いきなりお隣さんが詰め寄ってくるし、ああ、キッツいなあ✕2。
でも、このひと、朝ドラ「まんぷく」の安藤サクラさんではないですか。
じゃあ、絶対悪い人じゃないはず。ということでまずは静観。
そして、朝ドラ「らんまん」の寿恵ちゃん登場。道端でいきなり子供を押し付ける。
いちど道端に置き去りにしようとした敷島くん、思いとどまる。うんうん、人間の心をなくさないで良かった。
転がり込んだ寿恵ちゃん、この状況ではラブコメどころではない。

連れ帰った赤ちゃんをサクラさんが「このままだと栄養失調で死んじまう」と言って食事させる。わずかな配給米をわたす。そうか、こんなに食糧事情が悪くて、こんなに危険な状況だから、「まんぷく」の萬平さんは栄養剤「ダネイホン」を発明し、最終的にカップヌードルまで行き着くのか。すっごくわかる。

まんぷく:「ダネイホン」

危険なお仕事

ボロ船に乗って、機雷撤去を受け持つ。
出てくる仲間がみんないい人ばかり。
艇長の蔵之介が戦争に行かなかった水島くんを「小僧」呼ばわりしていじっているのが平和だ。戦争が終わったって、こういうことか。
そして、かしこくて優しい野田さん、いかつい男の多い世界でひとり博士系。いい味出しているなあ。
なんというか、ラピュタの海賊たちと一緒に旅をするシーンのようだ。辛い辛いときでも仲間がいるのは本当に心が安らぐ。

ささやかな幸せ

でも悪夢にうなされる敷島くん、
そうだよねー。死ねなかった特攻兵の自己嫌悪に加えて、ゴジラのあのキッツい体験はいつまでも尾を引くよね。
そこを慰める寿恵ちゃん。いいシーンだなあ。
拾い子の明子ちゃんも可愛らしい。つぶらな瞳。

スパイファミリー

スパイファミリーのようなギクシャクした家庭だけど。そんなこんなで段々立ち直っていく敷島くん。
そして、寿恵ちゃんが銀座で働くと言い出した。
あああーーーそれフラグ!!
そうだ、この映画ゴジラだったんだ。絶対やばい。

海のゴジラ

海でゴジラに再開して追われる敷島くんたち。
今度はちゃんと撃つ。効果なかったけど。
そこに巡洋艦「高雄」現る。
これって確か円谷プロの旗艦、マイティジャックのマイティ号のモデルになった船じゃなかったか?

マイティ号

オタク的にぞくぞくする設定だが、ゴジラにわりと簡単に噛まれる。でも艦が喰われているなか、それでも頭に向かって砲塔を回転させてぶっぱなす。動かしている人が見えないのに最後の意地・執念が感じられる。

臨時ニュース

ブルー・オイスター・カルトという、ヘビメタのご先祖様バンドが、その名も「Godzilla」という曲を演奏していた。だいぶ前の曲だけど、アメリカ人もゴジラ好きだったのねえ。
ライブで、拙い日本語で「りんじぬーすをもしあげます、ごじらが…」とあの有名なラジオ放送を語っていた。本当に好きだったんだなああ。 アメリカ人も好きなゴジラ。あのラジオ放送はとても初代ゴジラへの敬愛が感じられる。

ブルー・オイスター・カルト:「ゴジラ」

銀座のゴジラ

ゴジラに加えられる列車の中に寿恵ちゃんが居る。
ぶらんとぶら下がって大変なことになっている。トム・クルーズやハリソン・フォードでよくあるシーンだ。助かるところまで含めて、全部ハリウッド流お約束。絶対死なないとわかっていても手に汗を握る。
そしてゴジラは銀座を蹂躙する。いまだかつてこんなに人間を敵視する怪獣があっただろうか。ウルトラマン、ウルトラセブンに出てくる怪獣はともすると「しかたなく人間を攻撃する可愛そうな野生動物」という描かれ方をしていた。
でも、このゴジラは本気で人間を憎んで敵視して襲ってくる野獣だ。むっちゃ怖い目つきで人間にガンつけてくるのだ。これは天災に対する恐怖じゃない。憎悪に対する恐怖だ。

巨神兵のいかづち

にげまどう人々の中にいた寿恵ちゃんを見つける敷島くん。「大正処女御伽話」というマンガでは関東大震災に見舞われたヒロインを助けに行く主人公が居たが、それを彷彿とさせる。
見つけたらぜったい手を話したらだめ。と思っていたら、とんでもないことになった

ゴジラのいかづち

ゴジラが吐く熱線。こんなに凄まじいものだったのか。
ナウシカの巨神兵の火の七日間戦争か、はてまたラピュタのいかづちか、とにかくとんでもない熱量の波動砲をぶっぱなした。
当然とんでもない突風が巻き起こって人々を襲う。
そこで寿恵ちゃん、敷島くんをビル影に押し込んで自らは濁流の中へ。あああああーーーー。きっとシータでもそうしたに違いないけど… でもでもでも。
(ビルの隙間にも風圧は入っていくのだよ、という野暮なツッコミはなしで。これがハリウッド流。エンタメのためなら多少の非科学は許されるのだ。)
とにかく寿恵ちゃんの姿が見えなくなった敷島くんの魂の慟哭。この世にこれ以上の絶望はあるのか。

民間地球防衛軍

寿恵ちゃんを失った敷島くんを救ったのは、ゴジラ退治の民間組織。野田さんが誘ってくれた。そうきたか。
「国もアメリカも助けてくれないから、自分たちでなんとかしなきゃしょうがない」
現代をたっぷりと皮肉ったセリフ。うん、その気持ちはよくわかるぞ。
そして民間の防衛隊が設立される。県立地球防衛軍か。
民間防衛軍のくせに、持ち寄ってきたブツがすごい。

県立地球防衛軍

ゆきかぜ

あああー、あの第二次大戦を生き残った駆逐艦の雪風。
まさかこんなところに登場するとは。 
異星の空を舞う戦闘妖精雪風、はてまたは冥王星に沈んでいる古代進のお兄さんの乗艦、雪風まで思い出して、とにかく雪風という名前だけで胸の中に熱くくるものがある。

戦闘妖精雪風

震電

オタク的には「これを持ってきたかーーーー」と舌を巻いた幻の戦闘機。復活させるならまさにこれ。これが大空を飛ぶ姿は少年なら誰しも心に描いたに違いない。
ハリウッドなら、ここでポンコツの複葉機を出してきたかもしれないが、ここで震電を出してきたのは(「菊花」ではなかったのは別として)燃え上がるものがある。

震電

一人も死なせない

船団の総司令官が雪風の館長。この人がとてもかっこいい。毅然としていながら使命感に燃えている。沖田館長か。こういう懐の大きい人が最近は減ってきたような気がする。
野田先生が「一人も死なせない」と言ったのは、とても大事なこと。
あまりにも人命が軽視され、あまりにも無駄に人が死んだ先の戦争。
こんどは死なせないし生き延びるための戦争。全然違うのだ。

田舎に現れるゴジラ

いまだかつて、こんな絵面を見たことがあっただろうか。
ゴジラが田んぼを蹂躙し、民家を壊していく。怪獣といえば街を壊していくのが定番なんだが、田んぼ。いやかえって怖い。トトロの世界をゴジラが蹂躙していくのだ。そういえばトトロの時代もまさにこのへんだな。

となりのトトロ

パラシュート

まあいろいろあって瀕死のゴジラに最後のアタックをかける敷島くん。ぜったい死ぬと思ってた。宇宙戦艦ヤマトのキムタクが最後に特攻をかけたんだし。
そもそも敷島くん、死ななかった特攻兵だし、周りからは「なんでおめおめ生きて帰ってきたんだ」と言われた。
まるで、デスマーチのプロジェクトで周りが徹夜なのに、一人で先に帰ってご飯を食べるのが申し訳ないような気分だ。デスマーチの戦争はまだ終わっていない。
そんな死ぬオーラがぼんぼん出ていたから、やばいと思っていた。

でも、パラシュートで脱出。心の底からほっとした。
だって、零戦とか旧日本軍の戦闘機って、本当に人命無視だったから。
パラシュートなんて絶対つけなかったらしい。ついで言うなら装甲も薄かったし、戦艦ではレーダーも軽視していた。
この人を大事にしない風潮は、今の企業の人使いにも通じ(以下略)

震電のアタックを受けたゴジラ。すぐには爆発しなかった機体をくわえて、一瞬間抜けに見えた。怖くなかったゴジラはきっとこのシーンだけだろう。

そして戦争は終わる

寿恵ちゃんが生きていた!! 
不覚ながら、サクラさんが直前にうけとった電報の意味を見逃していた。なるほど、ここが伏線だったんだ。

らんまん夫婦

もう生きていただけで嬉しい。
朝ドラでもらんまん夫婦はとても仲が良かった。幸せになってほしかった。
「永遠の0」では主人公は帰ってこなかった。
ヤマトのキムタクも帰ってこなかった。
だから、敷島くんの生還と、寿恵ちゃんの生還は、こころから嬉しかった。泣いた。
まさかゴジラ映画で泣くとは思わなかった。

この物語は、負い目があって責められて心に傷を追って、せっかくの幸せも奪われて、不幸のどん底に突き落とされた男が、巡り会えた仲間とともに再び生を取り戻す話しだ。 
個人的にはいままでに観た最高級の映画のどれにもヒケを取らない、最高のエンターテイメント映画だ。

音楽

伊福部さんのゴジラのテーマを、新録音でがっつり聴けるとは、至高の体験だった。
嬉しい。本当に素晴らしい。サウンドトラックほしい。

音響

すごいわ。ジュラシックパークの、カップの水を震わせる低音より、さらに恐ろしい足音。ぞぞぞっとする。

山崎貴さんへ

 ジュブナイルからのファンです。
素晴らしく怖くて、素晴らしく胸の熱くなる映画を作ってくださって、本当にありがとう。これからも素晴らしい映画を作り続けてください。

長文お読みいただき、どうもありがとうございました。


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