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『トリックスターの系譜』ルイス・ハイド著 法政大学出版局

 まみーたこと大澤真美とのご縁は、農業帰りに、ふと葉山の海辺で話そうとなったのがきっかけであった。前後の脈略はあまり覚えていないが、おそらく読書のすすめの小川貴史から最初にその名前を聞いて、またまったく異なるコミュニティの方から、話が合いそうなひとがいるといったような流れで、偶然が重なったからだとおもう。兎に角、初対面であった。ドミニカ共和国に住んでいらしたときに、まみーたと呼ばれていたから、そう名乗っているということである。

 対話に重きを置かれている女性なので、初対面であったが、こちらも大変話しやすかった印象が残っている。そして帰路、私と話して、この本が合うかもしれないと推薦してもらったのが、『トリックスターの系譜』になる。結果、ドンピシャな本であった。おそらく私自身がトリックスターであったのだろう。我が半生を反省すべき身に覚えのあることばかりが記されてある。

 トリックスターを私の言葉で伝えるのは、かなり面倒なので、怠惰にも引用で誤魔化そうとおもう。

トリックスターは境を越える者であるというのが標準的な考え方であるが、本書を書いているうちに私はある重要な点で修正を加えなければならないことに気づいた。というのもトリックスターが境界を生み出したり、以前目には見えない奥に隠れていた相違点を表面化するケースもあるからだ。例えばいくつかの神話においては、神々は地上に住んでいたが、トリックスターの行ったことが原因で、天界に昇ったのである。このようにトリックスターが、天界と地上との間に大きな隔たりを生み出している。神の使いとなるときに彼は、あたかも彼自身がうみだした問題を解くよう求められているかのようである。このような場合、境界を生み出すことと境界を越えることとは互いに関連し合う。そしてトリックスターについての簡単な最良の説明は、境界が、彼が見出されるであろう場所であるというものである。ー彼は境界線を引いていたり、境界線を越えていたり、境界線を消したり動かしたりしているが、つねにそこにおり、いかなる姿をしていても門口の神となっている。

『トリックスターの系譜』太字はKODOによる

 これからの日本には、トリックスターが必須であろう。真顔でひとの内と外を幾度も往復し、その領域を踏みにじったかと思えば、今度は氣まぐれに天地を行き来し、靈的壁を一夜城のように築いてしまう。そんな男である。さらに、彼が確信犯であったなら、もう言うことはない。

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