自由進度学習の始め方(高学年社会の例)

小学校の社会科で自由進度学習を取り入れています。

社会科において、45分間、先生が黒板の前で喋り、子どもを指名したり、挙手したり、黒板を写したり…一般的にイメージしやすい、一斉型授業形式を変えてみました。


自由進度学習型、社会科の授業の全体像

①子どもが学習計画を立てる(5分)
②子どもが学習活動を行う(35分)
③子どもが振り返りを行う(5分)

様々な定義があると思いますが、そのような学習法を本noteでは自由進度学習と呼ばせてください。

自由進度学習×社会科の可能性

実施したのは、3単元分、約2カ月。
数字を見ても、単元テストの平均点は一斉授業の頃と比べて、9,7点up。「自由進度学習」を取り入れる前から、定期的に「授業アンケート」をとっていたのですが、アンケート満足度の数値も大きく上がりました。

自由進度度学習の肯定的な意見として、最も大きかった子ども達の3つの声は…

①自分のペースで学ぶ事ができる
②友だちと励まし合いながら学ぶ事ができる
③先生に質問し放題で学ぶ事ができる

子ども達のアンケートから…ハッとさせられました。
45分の「1対40」の構造で行われる、よくある一斉授業は、学習者から上記の大切な3つの視点を奪っていたのではないか?と。
少し詳しく言語化してみます。

自分のペースで学ぶ事ができていた?

社会科の話に絞って話します。

自由進度学習導入前は、1日見開き1ページが基本スタイルでした。オリエンテーション1時間と単元末テストの1時間を合わせると、だいたい予定時数と合うように教科書が作られていたからです。
見開き1ページのページを学ぶのが45分。
「もう知ってるよ…」って子には長すぎるし「全然分からない…」って子には短すぎる時間だったかもしれません…。
一斉授業のみでは、「自分のペースで学んでいる」とは言い難い。


友だちと励まし合いながら学ぶ事ができていた?

行動科学の分野では「報酬」よりも「チーム制」が効果を上げるという研究が数多く報告されています。以下の本がお薦めです。

📕短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント~石田淳~📕

一人で頑張るよりも、誰かと一緒に頑張る方が45分を、より生産的に過ごすことができる子ども達も、必ず存在します。一斉授業では「先生と子ども」という対話形式が多いです。積極的に発言/反応する子であれば、多くの対話を重ねながら45分の授業を生産的に過ごせるかもしれません。
しかし、40人もいれば、様々な子がいるのは当然。

・挙手をするのが嫌な子
・反応するのも嫌な子
・大勢の子が一斉にワッと反応するのを不快に感じる子

だっているはずです。

時より「班の人と交流してみましょう」なんて時間は取ったりもする。

でも、班の中に、自分が心許せる友だちがいないかもしれない。

一斉授業のみでは「友だちと励まし合って学んでいる」とは言い難い。


先生に質問し放題で学ぶ事ができていた?

「先生に質問し放題で学ぶ事ができる」から自由進度学習は好き。
この声が多数あった事に驚いた。頭を石で殴られたような衝撃であった。「分からないことは分からないって言っていいんだよ。」と担任した当初から言い続けてきた。
もちろん「先生、今の箇所、分かりません!」って発言してくれる子もいたし、授業後に「先生、質問なんですけど…」と聞きに来る子もいた。
でも、一斉授業の形式だけでは、”とある層”を逃していたのだ。
「授業中に質問したいけど、みんなの前では質問したくない層」である。
この層がめちゃくちゃ多い事に気が付けたのが『自由進度学習』を取り入れた最大の成果だ。

黒板の前で、みんなに向けて喋りつづけている先生には質問しにくい。でも、教室をウロウロと歩き回り、自分の学習を見ている先生には質問したいのだ。

ごめんよみんな…

気付くのにだいぶかかってしまった…

一斉授業のみでは「先生に質問し放題で学んでいる」とは言い難い。


このように、平均点も満足度も上がった「自由進度学習」

Twitterでツイートした際、関連ツイートへの反応が合計「853いいね」をいただき、コメントやDMでも「どのように進めているんですか?」と若い先生方を中心にお話しをいただいた。

ありがとうございます。

本noteでは、どのように「自由進度学習」を進めてきたかを、まとめていきたいと思います。

もし誰かの役に1ミリでもなれたのであれば嬉しいです。


【超具体】自由進度学習型、社会科の授業

では具体的な場面をイメージして、話を進めていきます。手元に、社会の教科書がある場合は、横に置きながら見ていただけるとイメージしやすいかと思います。

<小学校6年生、7時間単元>

明治の国づくりを進めた人々

<身に付けさせたい力>

黒船来航、廃藩置県や四民平等などの改革、文明開化などを手掛かりに、我が国が明治維新を機に応じて欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことを理解している。<①知識.技能>

黒船来航、廃藩置県や四民平等などの改革、文明開化などを関連付けたり統合したりして、この頃の世の中の様子を考え、適切に表現している<②思考力.判断力.表現力>

黒船来航、廃藩置県や四民平等などの改革、文明開化などについて、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。<③主体的に取り組む態度>

<7時間の活動概要>

❶ 導入keynote(10分)+学習計画(約15分)+学習活動(約20分)
❷ 前半部keynote(10分)+学習計画(2分)+学習活動(28分)+振り返り(5分)
❸ 学習計画(2分)+学習活動(38分)+振り返り(5分)
❹ 後半部keynote(10分)+学習計画(2分)+学習活動(28分)+振り返り(5分)
❺ 学習計画(2分)+学習活動(38分)+振り返り(5分)
❻ 学習計画(2分)+学習活動(38分)+振り返り(5分)
❼ 単元末テスト(30分)+学び直し/振り返り(15分)

活動を細かく分けてみる。活動は主に5つのパートの組み合わせから、出来ている。

① keynoteによるプレゼンテーション
② 子どもが学習計画を立てる
③ 学習活動
④ 振り返り
⑤ 単元末テスト/学び直し

以上の5つのパーツである。

それぞれの活動の際に、意識/準備していることをできる限り詳しく書いていきます。

※今回のnoteで①.次回に②と③(ここがキモ!).最後に④と⑤の全3回に分けて書きたいと思います。


① keynoteによるプレゼンテーション

時間は長くても10分に設定します。
教師によるミニレッスン的な役割です。
子ども達が見ているYouTubeは基本15分以内のものが多いです。
(とある調査によるとYouTubeは視聴時間5分~8分の動画を最も望んでいるという報告もあるほどです…)
子ども達が「自分から見たい!」と思ってクリックしたYouTubeの動画の限界が15分な訳です。つまり社会科の話(興味ない層も多数)を10分聞いてもらうには、それなりの工夫を凝らさないといけません。
「教室にみんながいる良さ」を最大限活用しながら、家で一人では無理な要素を取り入れながら、10分間のプレゼンを行います。以下のような要素を取り入れて、子ども達を飽きさせない配慮をしながら10分間のプレゼンを行います。

クイズ化
細かいクイズ化を何度も何度も行います。子どもはクイズが大好きです。
日米和親条約と日米修好通商条約の話題を出したのであれば、3つ後のスライド画面に「さっきの2つの条約の名前は何だったかな?」と即座にクイズを挟みます。楽しみながら単元末テスト対策も実はしています。
ミニテスト化
科学的にテストは最強の勉強法の一つだとも言われています。なかなか定着しない原因の一つには「テストが少なすぎる/且つ量が膨大過ぎる」のが問題の一つかもしれません。「解くのは自由だよ」としていますが、スライドの一番最後には必ずミニテストを付けています。
そして、そのスライドは学習活動時間中、テレビ画面に映したままにしています。先生にミニテストを出された時は分からなかったけど、学習活動を通して、分かるようになったという子も生まれます。
自分の力で分からないことが分かるようになったという経験を積ませてあげたいです。
↓ミニテスト化用スライド

あミニテストプレゼン

チームティーチング

プレゼンの最後を締めるのは10分間の内容を、再言語化することです。
ここではチームティーチングを活用します。だいたい10分間のスライドを前半部と後半部の半分半分にしています。

「隣の人とじゃんけんをしてね。じゃあ勝った人から、前半部のハイライトをしてごらん。隣の人は全く聞いていなかった人だと思って、丁寧に話すんだよ」

と問いかけます。ここで「忘れた~」って子もいます。そんな人は残りの時間、たっぷりと学習活動が取られてので、学び直すチャンスが生まれます。

以上の3つを意識しながらkeynoteのプレゼンテーションを進めていくと、子ども達も飽きずに10分間を聞いてくれます。

もっと色々なテクニックを知りたい方は以下の本がお薦めです。

📕最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法📕


また、本noteでは詳しくは述べませんが…
この10分間で最も力を注がなくてはいけない事があります。それは

子ども達を「早く学習活動に向かいたい!!」と思わせることです。

その為には「話し方」などの根本も大事ですが、もう一つ大事なことがあります。

それは

「関係性作り」

です。

人間は興味のないことに、主体的になりません。

当然です。じゃあ、
どうやって話したら興味をもってくれるか?
どんな例え話をしたら、イメージしやすか?

これはkeynoteを作る前にイメージしておくといいと思います。ボクは子ども達に「分かりやすい例え話」をするのを大きな目的として休み時間は、なるべく子ども達と会話をするように心がけています。

何のアニメが人気なのか?
何が流行っているのか?
好きなアーティストさんは誰なのか?

今の子ども達に合った「例え話」を収集していくと食い付きも良くなります。(昔は必ず野球の例え話をしていましたが、ホントいまいちでした…)関係性の作り方の練習は以下の本が役に立ちます。

📕メモの魔力📕


4000文字を超えてしましましたので、今回はここまで。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

もし「なんか面白そうだな。」とちょっぴりでも思ってくださったのであれば、次回も楽しみにしてください。

今後は社会科の自由進度学習における…

②学習計画時の子どもの活動、教師の関わり

③学習活動の子どもの活動、教師の関わり

この最重要パートについて、意識/準備していることを詳しく書いていきます。

① keynoteによるプレゼンテーション
② 子どもが学習計画を立てる→次回はここ
③ 学習活動→次回はここ
④ 振り返り
⑤ 単元末テスト/学び直し

ありがとうございました。


追伸…社会科の自由進度学習にて…「先生に質問し放題」の際に、事前に読んでおくと、重宝するのが下の本です。ストーリー系列で分かりやすくまとまっています。

📕一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書 公立高校教師ユーチューバ―📕

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?