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「言葉と構造」で行う、プロジェクトのふりかえり

あなたが今年の1月もしくは4月に、一年の仕事を始めるときに立てたであろう未来の目標を、12月の時点で一度ふりかえってみましょう。1月から始めて12月に終わっているかもしれないし、4月に始めてまだ途中段階にいるかもしれません。終わっていても途中段階でも、いずれのケースでもここで紹介するふりかえりの方法は使えます。

キーワードは言葉と構造

このふりかえりの方法のキーワードは「言葉と構造」です。未来の目標と行う(行った)作業や行動は一直線につながっていません。目標と行動の間には、目標達成するための「要素」があります。要素は形のあるものもあればないものもあります。既にあるものもあればまだないものもあります。
「言葉」はこれらの要素に名を与え、要素の「状態」を表現することに使います。「構造」は目標と要素と行動の関係性を可視化します。

言葉と構造のふり返りでは、まだ進行中のプロジェクトであれば、「目標を達成するための構造が、今どんな状態になっているか?」を可視化します。
もう目標を達成していたり期限が来てプロジェクトが終わったりしていたら、終了時点の構造と、どういう状態になっていたから成功・失敗していたか?を可視化します。

構造と状態を可視化できると、目標達成のための行動や作業が、本当に目標達成に効果的なのか(だったのか)を評価・判断できます。目標達成のために、どの要素が重要なのか?どの要素をどんな状態にすれば良いのか?がわかります。
形のない、或いはまだない(開始当初はなかった)状態を言葉で表現することは、自分の行うことに意味を与えたり、行ったことの意味を発見したりすることにつながります。こうしたことができるようになると、自分の成功・失敗体験を論理的に自覚し、他者に説明することができるようになります。

ふりかえりに使用するフォーマットと手順

紹介するふりかえりの方法には「プ譜」を使います。プ譜についてはこちらがページが詳しいですが、ふりかえりを始める上では詳しく知っている必要はないので、このまま続けます。

紹介するふりかえりの方法には「プ譜」を使います。プ譜についてはこちらの記事に詳しいですが、ふりかえりを始める上では詳しく知っている必要はないので、このまま続けます。
ふりかえり用のプ譜のパワーポイントのファイルはこちらからダウンロード頂けます。
実際に書くうえで、こちらの記事に記入例が載っているので、こちらも参考にして下さい。

最初に書き出す獲得目標から施策までは、自分が認識していること・覚えていることだけを書けばいいのでラクチンです。まずはこの3つの書き方を説明します。

目標と所与の条件、してきたことを記入する

獲得目標には、あなたが自主的に取り組んだり、組織から与えられた目標はミッションを書きます。営業職の方なら売上金額、カスタマーサポートやカスタマーサクセスなら解約率。婚活中なら結婚、就活中なら内定。自主ゲーム制作、ダイエットなどなど、目標の種類は問いません。

廟算八要素には、プロジェクトに取り組むうえでの条件や環境を書きます。ダウンロードしたフォーマットには8つの項目が予め記載されていますが、すべてを埋める必要はなく、足りない項目があれば自由に追加してください。ここでは必ず書いておいてほしい項目だけ説明します。
人には、あなたの名前を最初に書き、次に関係者の名前を書きます。関係者はプロジェクトメンバーやあなたを助けてくれる人、上司やキーマンなど重要と思う人などです。
時間には、プロジェクトの開始から終了(予定)日を書きます。
クオリティには目標を達成するうえで大事にしなければならない、考慮しなければならない振る舞い・機能・性能・見た目などの品質を書きます。また、あなたが大事にしている倫理(プリンシプル)や価値観があればそれも書いておきます。
資産には、あなたが持っている資産(知識・技術・道具・設備など)も書きます。
環境には、あなたの職場や暮らす地域、より大きな規模での社会など、自分の目標に関わりのある大小の環境が今どのようになっているのかを書きます。
外敵には、目標に取り組む際に障害となる人物、組織、ルール、自分の(認識できる限りの)思い込みなどを書いておきます。

施策には、目標を達成するためにあなたが行ってきたこと・行おうとしていること・行おうと思ったけどしなかったことを書きます。何かを調べたり書いたり、作ったり動かしたり、様々な行動・作業を行ってきたはずです。自主的に行ったこともあれば、会社の研修や上司・コーチの指示で行ったこともあるでしょう。時系列で上下どちらからでも並べて書いてもいいですし、行った(行う予定の)ことをカテゴリーでまとめて書いてもいいです。

状態を自分の言葉で表現する

ここからがこのふりかえりの醍醐味です。
書き出した施策が、目標を実現するための要素を「どんな状態にしていたか?」を自分の言葉で表現します。これがプ譜の中間目的です。
中間目的になる要素は取り組むプロジェクトによって異なります。営業職の方であれば、以下のようなものが考えられるでしょう。
・商談に臨むときの見込客や顧客担当者の自社製品に対する理解の状態
・製品の機能や仕様と、見込客や顧客の課題の適合の度合い
・自分自身の見込客や顧客企業の状況に対する理解の状態
・自分自身の一日、一週間、一カ月の時間の使い方の状態
カスタマーサポートやカスタマーサクセスなら、顧客の質問への回答の速度や的確さの度合い、質問に回答する際の参照物の品質の状態、顧客との関係性など。ダイエットなら運動のあるべき状態、食事のあるべき状態、生活リズムのあるべき状態などがあると思います。
書き出した要素の順番も整理します。この要素の状態が実現しないと次の状態が実現できない、という場合はその順に並べていきます。
中間目的を整理し、中間目的と施策を線でつないでいくことで、だんだん構造ができていきます。

状態をうまく表現するには、二つの段階に分けて行うことをお勧めします。一つ目の段階では、施策がつながる要素に名前を与えます。先に挙げた「商談に臨むときの見込客や顧客担当者の自社製品に対する理解」「顧客との関係性」「生活リズム」などが名前にあたります。これはカテゴリーの名称のようなものです。
二つ目の段階で、名前を与えた要素が「どんな状態になっていたか?」を表現します。「顧客の質問への回答の速度や的確さの度合い」という要素であれば、「顧客の質問内容に脊髄反射していない」とか、「質問した背景や理由がわかっている」といったように表現します。「顧客との関係性」という要素であれば、「顧客がカスタマーサポート担当者に安心して相談できている」という具合です。

状態の実現度合いはどのくらい?

状態は常に自分が満足するもの・理想と考えるものになっているとは限りません。不十分な状態もあります。あなたが行ってきたことが不十分な状態だと感じていたら、中間目的の枠の脇に「●●%」と、その状態の達成度合いを書き加えます。
度合いは主観的なものもあれば、体脂肪率や月のサポート対応件数など客観的に測れるものもあります。ある状態が80%であれば、残り20%分の施策を新たに行ったり、施策の行い方を変えたりします。また、残り時間など所与の条件や環境から80%のままでもよい(80%なら十分)という判断もあり得ます。目標達成には100%の状態をつくらなくてもよさそうなら、残り20%は追わないということもあるでしょう。状態は100%になっているけど、まだ行っていない施策があるなら、もうその施策は行わないという判断ができます。もちろん、行っていない施策を行うことで、100%よりもさらに良い状態を実現できるかもしれません。

便利であいまいな言葉から逃げずに格闘する

状態は自分が書いて「たしかにそうだ」と実感できる、手応え・手触りを感じる言葉で表現してください。例えば「顧客との関係性」の状態を、「顧客といいコミュニケーションがとれている」と表現するとします。
「コミュニケーション」という言葉は、広く世の中に流通していて、自分もみんなもなんとなくわかっています。だからその便利な言葉を違和感なくそのまま使ってしまうのですが、どこかしっくりこない、十分に言い表せていないと感じたら、それをやり過ごさないでください。
「コミュニケーションがとれている」という言葉では、フワフワかグニャグニャかツルツルして捉えられていないものを、つかんで抱えて、なでたりつっついたり、くんずほぐれつして、自分のプロジェクトに合う言葉にしていくのです。
どのような状態になっていたか?を表現することは、借り物の言葉を自分の言葉にする行為ともいえます。
自分の言葉で表現できたとき、あなたは自分がしたことの意味と価値を発見し、確かな手応えを感じているはずです。そして、自分が行ったことと状態の関係がよくわかるようになります。自分が取り組む(んだ)プロジェクトが、なぜ成功または失敗したのかがわかるようになってきます。(これについては下記の成蹊大学ひらのゼミでの実践記事が参考になると思います)

プロジェクトの勝利条件は何だったか?

施策中間目的をつなぎ、中間目的の状態を表現しました。状態の達成度合いや要素間の関係性がわかれば、ここから先、何をすればいいか?新たに行うことはないか?今のやり方は変えなくていいか?何はしなくていいか?どの程度までやればいいか?も考えられるようになります。ここまでくればふりかえりはほぼ終了です。ここで終わってもよいですが、余裕があればチャレンジしていただきたいことがあります。それは、あなたのプロジェクトの勝利条件を表現することです。

勝利条件とは、プロジェクトの目標が「どうなっていたら成功か?」という判断基準・評価指標です。獲得目標と勝利条件の表現の違いを「ウォーゲーム」を例にとって説明するとこうなります。
獲得目標:戦争に勝つ
勝利条件:敵本拠地の占領/敵の特定部隊を倒す/一定時間敵の攻撃に耐える/敵を全滅させる

このように一つの目標に対して、いくつかの勝利条件があります。売上目標の金額や●●kg減というダイエットの目標は「同じ」でも、達成のし方やあり方は異なっています。売上目標なら高額商品を少数売って目標達成する人もいれば、少額商品を多数売って達成する人もいるでしょう。勝利条件は所与の条件や環境、採用した施策、要素の状態の影響を受けます。時間に余裕があれば、好きなものをときどき楽しみながら減量する人もいれば、時間に余裕がないので過酷な手段をとって減量する人もいます。また、人によっては、減量するなかで、甘えがちな自分の性格もダイエットを機に変えたいとい、減量という目標とは別の意味を付与することもあります。

あなたが目標を達成しているなら、「自分はこうやっていたから・こうなっていたから・こうありたいと願っていたから達成できていたんだ」ということを、書き出した中間目的の状態を材料に、ひとことで表現してみてください。まだ途中段階であれば、「こうやって目標達成したい」という願いや期待、或いは残り時間や各種条件を鑑みて、現実的な落としどころを書いてください。失敗していたとしたら、その目標のなかで得たものごとを書いてください。

「自分はこうやって目標を達成したい」と最初から考えている人は、実はあまり多くありません。目の前の目標をそっくりそのまま問題として受け入れて、自分の目が及ぶ範囲内でそれを実現するための方法を探して実行しています。こういう状態を「無限定のまま行動する」と言うのですが、これは失敗するリスクの高いやり方です。無限定のまま取り組むのではなく、限定して取り組む方法は話すと長いので、また別の機会に書きたいと思います。(※こちらの記事が参考になるかもしれません)

勝利条件を表現する作業を行うことで、次に新しいプロジェクトを行うとき、より筋のいいプランを立てる練習になります。

年末年始に一緒にふりかえってみませんか?

プ譜をつかったふりかえりは一人でできますが、ペアを組んで行うこともできます。相手に話を聞いてもらい、自分が答えて、その内容を相手がプ譜に書いていくというやり方を交互に行います。将棋の感想戦のような感じで行います。

年末年始の心落ち着く時間に私が聞き役・書き役になって、あなたのプロジェクトのふりかえりをするお手伝いをしてみようと思います。私の仕事の都合上、朝8:00~10:00の間しか対応できないのですが、もし興味のある方がいたら、下記フォームよりメッセージください。(応募者多数の場合は、抽選させて頂いて、当選された方にだけご連絡します)

それではみなさん、よいお年をお迎えください!

この記事が参加している募集

振り返りnote

未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。