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プロジェクトのコミュニケーション問題パターン

2018年に『予定通り進まないプロジェクト』を上梓して以降、業界も規模も異なる様々なプロジェクトに伴走してきました。
IoT製品開発。コミュニティマネジメントツール開発。店舗のバックヤード改革。業界メディアの電子版リリース。サブスクリプション型BtoBマーケティングツールの販促などがありましたが、こうしたプロジェクトに携わってきて、製品の開発方法や営業方法、販促、PRといったこと以前に問題になるのがコミュニケーションです。

新著『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』では、実際に伴走・支援してきたプロジェクトを例に取り、それぞれのコミュニケーションの問題を解決した事例と方法を解説しています。この記事では、具体的にどのような問題があったのかをパターンとして示し、紹介したいと思います。

メンバーが主体的に動いてくれない

プロジェクトのコミュニケーション問題1

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトメンバーに対して、プロジェクトに主体的に関わってほしいと望んでいます。やったことがなく、これまでの経験や知識が役立つかどうかわからず、事前にマニュアルも研修も用意できないプロジェクトにおいては、メンバー自らが学び実践していくといった主体的な関りが必要です。
しかし残念ながら、マネージャーがこのように思っている一方で、プロジェクトメンバーは「マネージャーから具体的な指示が下りてこない」と思っています。この問題が深刻化すると、プロジェクトメンバーから「言われたらやりますよ」という言葉を聞くことになります。

この問題はもう一階層追加すると、経営者側がマネージャーに対して、「マネージャーとして判断することができない」「判断能力がない」という問題にもなっています。

プロジェクトのコミュニケーション問題2

これらの問題は、以下のようなことが原因で起きています。

●プロジェクトという仕事への理解が足りていない
●主体的に関わるためのプロセスを経ていない
●自分で考えることをしていない/させていない

プロジェクトがそもそも通常業務とは異なる性質のものであることがメンバーに理解されていない。或いはプロジェクトマネージャー自身もわかっていないが故に起きています。
また、主体的に関わってもらうには、メンバー自身に自分でプロジェクトの進め方を考えてもらう必要がありますが、そうした場を設けていないことも原因です。

何をやりたいのかわからない

プロジェクトのコミュニケーション問題3

この問題は、経営者がビジネス誌などを読んだり、著名人の講演を聞いたり、競合企業の動向を知ったりして、「うちもやってみよう」と思い立ち、そのプロジェクトの企画立案を部下に丸投げすることから始まります。
部下はあれこれ忖度して企画書をつくって提出しますが、経営者はそれを見て「なんか違うな・・・」という感想とともに具体的な指示なく突き返します。それを受けて部下はまた考え、提出し、戻され・・・を繰り返すデスマーチで、いつまで経ってもプロジェクトが始まりません。

この問題は、以下のようなことが原因で起こります。

●「こうなりたい」というゴールを表現できていない
●「こうなったら進める」という基準を示せず、共有していない

言うことがコロコロ変わる

プロジェクトのコミュニケーション問題4

これはプロジェクトメンバーの立場からすればマネージャーの。マネージャーの立場からすれば経営者の言うことがコロコロ変わるという問題です。
変化の激しい世の中においては、朝令暮改は避けられないものです。変更する理由をことこまかに説明することも難しい場合もあります。
しかしせめてプロジェクトのプランをつくる段階で、メンバーにもプランづくりに関わってもらい、「こうなったら変更する可能性がある」、「こういうことも起こり得る」ということを共有しておけば、メンバーの「いうことがコロコロ変わってついていけない」感を低減させることができます。

この問題は、前述した何をやりたいのかわからない問題にも共通する下記のことが原因で起こります。

●プロジェクトの進め方を決定するための判断基準を設けていない
●同上を共有できていない

クライアントの言いなり

プロジェクトのコミュニケーション問題5

この問題はクライアント(経営者でも構いません)と営業・プロジェクトマネージャーとプロジェクトメンバーという3階層で起きるものです。
クライアントのやりたいこと、フワッとした要望を整理せず(できず)持ち帰り、それをメンバーに無茶ぶりしてしまう。もしくは、自分より経験豊富なメンバーには遠慮して指示を出せないといったことで、プロジェクトが炎上するパターンです。

この問題は下記のようなことが原因で起こります。

●クライアントの要望をきちんと整理できていない。
●クライアントと自社のリソースに基づいて要件定義できていない。
●メンバーに適切に指示を出せない
●メンバーに相談する環境ができていない

部門間の壁を超えられない

プロジェクトのコミュニケーション問題6

プロジェクトは部門横断型で行われるのが常ですが(でなければ、通常の組織で行える)、そこで苦労するのは部門間の利害調整です。あちらを立てればこちらが立たない問題は、以下のような形でも表れてきます。

プロジェクトのコミュニケーション問題7

部門Bの仕事を受けて部門Aが仕事をするような流れになっているとき、部門ごとの目標達成だけを気にして、その目標の達成のされ方(あり方)が、次にその仕事を受ける部門に悪い影響を与えてしまうようになっていると、当然部門間の連携・心情は悪くなります。

この問題は下記のようなことが原因で起こります。

●全体的な目標を設定・共有できていない
●全体的な目標設定、プランの立案に、関係する部門全員が関わっていない

プロジェクトの想い・経緯を引き継げない

プロジェクトのコミュニケーション問題8

会社でプロジェクトをしていると、プロジェクトマネージャーやメンバーに入れ替わりが起きることがあります。このとき、新任マネージャーや役員がこれまでのプロジェクトの経緯や、どういった想いでスタートしたのかを知らず(知ろうとせず)、自分の好むやり方で進めてしまうことで、これまで順調に進んでいたプロジェクトに問題が起きることがあります。

この問題はプロジェクトを進めるなかでつくってきたマニュアルや議事録、スケジュール表などでは、想いや経緯を伝えにくいことで起きてしまいます。

知識や経験を組織に落とし込めない

プロジェクトのコミュニケーション問題10

会社では様々なプロジェクトが行われ、成功・失敗しているのに、そうした経験や知識が残されず、似たようなプロジェクトで同じようなミスを起こして失敗してしまうというような問題があります。
この問題は、適切な形でプロジェクトの記録を残せていないこと。記録があったとしても、後進のために経験を残すという視点がないために置きます。

これは個人の知識や体験が個人に溜まったままで、継承・共有されていない問題も同様です。

プロジェクトのコミュニケーション問題9

以上、いくつかのパターンに分けてプロジェクトにおけるコミュニケーションの問題を紹介してきました。

こうした問題のほとんどは、プロジェクトのプラン立案時に、メンバーを巻き込んでプロジェクトの進め方を考え、合意形成していくことで解決することができます。
しかし、これまではプロジェクトの進め方を考え、合意形成していくために適切なツールがありませんでした。適切、というのは、プロジェクトの進め方を表現し、共有することが簡単でその作業コスト(負荷)が低いという意味です。
新著『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』では、実際のプロジェクトを例に取り、本書で提唱する「プ譜」というツールがいかに問題解決に役立ったかを解説しています。
上述のコミュニケーション問題に思い当たるフシがありましたら、ぜひお手に取ってご覧ください。

また、この「プ譜」についてさらに詳しい情報は下記のページを。

書き方の解説は下記の動画をご覧ください。


未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。