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100回唱えれば「東西南北を覚えた」と言えるか?~目標と手段は合致しているか

4月8日の始業式。小学3年生の娘が通う埼玉県の小学校は5月6日まで休校することになりました。その後、4月17日に学校から以下のメールが来ました。

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色々思ったことはあるのですが、このnoteで書きたいことの対象は、社会の「教科書P8~17を読んで、4方位と8方位を覚える」という一文です。

考えたいのは、「4方位と8方位を覚える」という目標を実現する方法・過程と、そこで得る体験についてです。目標を実現するだけなら、4方位と8方位の関係図を目に入れながら、「東西南北、北東北西南東南西」と口で100回唱えるとか、ノートに100回書くとかすれば、嫌でも覚えることでしょう。でも、「4方位と8方位を覚える」という目標の先には、その後に続く学習内容があったり、世の中に出たときに役に立ったり身を助けたりといった、フェーズごとの目標や真の目標があるはずです。それは、100回唱えたり、100回書くという手段、すなわち、その手段から得る体験・プロセスで実現されたものでは叶わないのだと思います。社会という科目で、「4方位と8方位を覚える」ことで、実現したい何かがあるはずです。目標と手段は合致していなければ意味がありません
「4方位と8方位を覚える」ことで、どういう状態に子どもがなっていれば、「覚えた」と言えるのか?どのように覚えたら成功と言えるのか?という望ましい姿、ありたい姿があるはずです。
そして、その「ありたい姿」には、「ありたい姿になった」と言える状態があるはずです。
状態があれば、その状態を実現するための活動・練習があるはずです。

これらの関係を図で表現するとこうなります。

プ譜とルーブリック2

私はこの図を書きながらワクワクしました。子どもたちが何かをできるようになった状態を定義し、それを習得・実現するための手段を考案することは、実に面白く、楽しいことです。世の中の優れた教師、コーチというのは、こうしたことに長けているのだと思います。ここに教師の教えることの創意工夫が現れるといっても過言ではないとも思いました。

この構造を、「4方位と8方位を覚える」に当てはめて、私はプロジェクトの関係・諸要素を構造化するフレームワーク『プ譜』を使用して、以下のような図を描きました。

プ譜とルーブリック

「4方位と8方位を覚える」という目標を果たすことで、こうなっていてほしいというありたい姿を、「自分がどんな環境にいても、4方位・8方位で目指す方向や事物の位置関係を把握できるようになっている」としました。(※これが正しいものかは知りません)

そして、このありたい姿になっていると言える状態として、Ⓑ群があります。このⒷは教育の世界で言われている「ルーブリック(生徒の学習到達状況を評価するための評価基準のこと)」に該当するのではないかと思います。また、この状態を測るために、テストがあるのかなぁと思いました。

評価基準としてのⒷ群を実現するためにの活動・練習がⒸ群になります。Ⓒを考案する材料、あるいは活動・練習そのものにあたるのが、メールの一文にあった「「教科書P8~17を読む」になります。ただ、設定したⒷの状態によっては、教科書に書かれている内容では足りないかも知れません。
教科書(東京書籍『新しい社会3』)のP8~17を読みますと、以下のような内容でした。

●大項目
学校の東西南北になにがあるかを観察しよう
●小項目
・絵地図で表現してみよう
・詳しい市内の地図を見てみる
・地図記号の説明
・学校のまわりの建物や交通について調べる
・市の全体図を見て、市内のどこに、どのようなものがあるかをつかむ

この内容だとⒷ-3で設定した、「距離、規模、時代」が変わっても、正しい位置・方角を言い当てることができる」という状態を十分に練習できません。そのため、アーネが好きな『麒麟がくる』を題材に、戦国時代の日本で東西南北を言い当てる問題をつくったり、私の弟が暮らすインドネシアとアーネが暮らす日本の関係で言い当てる問題をつくったりします。

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われながらひどい絵と地図だと恥ずかしいです。

教科書はとてもよくできていて、本当にしっかりと読むことができれば、「4方位と8方位を覚え」てありたい姿になるための知識を獲得し、体験を導いてくれるものだと思いました。しかし、残念ながら私はものを教えるプロではなく、教師としての訓練を受けていないため、このように不自由に考えてしまいましたが、学ぶことの意味や方法について考えるよいキッカケになりました。

この休校期間中、娘の学習について本当に悩まされています。上述してきたようなことをいちいち考えて、家庭で学習を支援するのはかなりシンドイことです。そうした悩みや不安、試行錯誤をこちらにまとめていますので、よろしければご覧ください。

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ちなみに写真のように目標とありたい姿の二重構造を整理し、ありたい姿の評価基準とその実現のための手段を考えるフレームワークが「プ譜」というものです。プ譜についてはわかりやすく解説した良書がありますので、よろしければご覧ください。


未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。