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ベネッセこども基金×ニューメディア開発協会による2022年共同プロジェクト発表会vol.2レポート(2022年12月2日オンライン開催)※当日の動画も公開中

 2022年12月2日、一般財団法人ニューメディア開発協会と公益財団法人ベネッセこども基金の第2回共同事業発表会をオンラインで開催いたしました。
 今回は「心温まる、子ども目線でのアバターロボット実践成功事例」として、学校イベントや授業参加、友だちづくり、進学支援など、特別支援学校7校による11の成功事例発表を行いました。

■ニューメディア開発協会×ベネッセこども基金 共同事業発表会について

 発表会では最初に、ニューメディア開発協会の永松荘一理事長が開会のあいさつを行い、「今後、アバターロボットの活用の理解がもっと深まり、病弱な子どもの支援をはじめとして、学校生活の様々なシーンで日常的に使われていくようになってほしい」という展望を語りました。

 次に、ニューメディア開発協会の林充宏から、改めてプロジェクトの概要を紹介しました。このプロジェクトは、「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」として、ニューメディア開発協会と公益財団法人ベネッセこども基金がそれぞれの特徴とノウハウを生かし、2022年度の共同プロジェクトとして推進しています。
 
 机の上に置ける卓上型、移動ができる自走式、持ち運びに長けた可搬型の3種類のアバターロボットを活用し、病気療養の子どもたちが学校生活に参画するための様々な実証実験を行っています。


 今回の発表会では、アバターロボット実践成功事例として、モニター校となった全国の特別支援学校7校から全部で11の事例が紹介されました。

北は秋田県、南は沖縄県までの7校が発表を行いました

 林は、「小学校から高校まで幅広く実験しているが、小学校低学年の子どもも食いつくように友だちと楽しく会話をしている」とプロジェクトの成果を語りつつ、「成功に行きつくまでのプロセスにおいて様々な課題があり、それらを解決しないといけなかった」ことを伝えました。
 そのうえで、「こうした事例を広めるには、結果としての事例だけでなく、どうやって解決したかというプロセスが大切」として、今回の事例発表では課題や、解決までのプロセスを含めて紹介していきます。

■アバターロボットを活用した学校イベント事例

【学校イベント】5事例

事例1「運動会へテレポーテーション」大阪府立刀根山支援学校

 病気療養中で外出ができない小学6年生が、アバターロボットで運動会に参加した事例です。会場の3か所にアバターロボットを設置し、テレポート機能で自由に運動会の参加場所を変えながら見学することができました。
 小学校最後の運動会に参加できたことで、子どももその保護者も大喜びは大きいものでした。特に、参加した児童への効果が大きく、笑顔になり、卒業に向けての気持ちを高め、学習や治療にも前向きに取り組めるようになったといいます。
 課題としては、天候に左右されることや、視界の確保、集団環境の中での音の聞き取りにくさ、地域校との連携などがありました。同校では、運動会以外の学校行事にも活用し、「子どもの笑顔を増やしていきたい」と話していました。

事例2「はちまき校長率先での地域愛溢れるテレロボ活用運動会」沖縄県立森川特別支援学校

 外泊許可の出た高校1年生の生徒がアバターロボットで運動会に参加し、沖縄の伝統芸能である「エイサー」を疑似体験しました。
 森川特別支援学校の校長が退職前に「院内の子どもが、本校の生徒と同じ空間で一体となりエイサーに参加できないか」という熱い想いで実現させた取り組みです。
 卓上型のアバターロボット「kubi」をカートに搭載して校長自ら手動で動かし、生徒はiPadを使い360度視界で操作することで、まるでその場にいるかのように参加することを可能にしました。参加した他の生徒からも「かっこいい」「一緒にエイサーをしている気分」と好評でした。
 こうしたイベントでの活用には、本番でのトラブルに備えて、ロボットの操作を研修や実践などで慣れるなどの準備が必要であること、学校を挙げてサポートし盛り上げる工夫が必須であることが課題として挙げられました。

事例3「感激!Kubi で授業参観」京都市立桃陽総合支援学校

 保護者が教室にいると不安定になってしまう高等部の生徒の保護者に向けた、リモートでの事業参観事例です。教室内に2台のアバターロボット「kubi」を設置することで、教室内に保護者が入ることなく、リアルタイムで授業を参観することができました。
 これまで子どもが不安定になってしまうため、学校での様子を見ることができなかった保護者が、kubiを活用することで「子どもの近くから同じ目線で表情や頑張る姿を見ることができた」と、とても感激していたそうです。
 教室内に置かれたロボットは、最初は気にしていた生徒がいたものの、次第に慣れて授業に支障がなかったことも報告されています。学校からは「ICTは、少しのアイデアと小さな労力で大きな喜びを生み出すことができると再認識した」というメッセージが寄せられました。

事例4「手軽にできるレク、バスの中でのしりとり&宝探し」大阪府立刀根山支援学校

 校内や校外学習でアバターロボットを活用し、リモートで様々なレクリエーションに参加した事例です。
 ひとつめの事例は、校外学習のバスの中にロボットを設置し、友だちと一緒にしりとりに参加しました。ロボットのバッテリー機能を使うことで、電源のないバスの中でも利用することができ、クラスの中に「自分がもどる場所がある」ということを実感できたといいます。
 ふたつめの事例は、自走型ロボット「Temi」を使い、校内を探検しながら宝探しを楽しみました。病棟にいながらにして校内の様子が分かり、楽しむことができました。
 いずれの場合も、ロボットの視界などを考慮して見やすい位置にするといった細かい工夫をすることで、参加する生徒が楽しめる環境をつくりだしています。

事例5「テレロボで安心接客、文化祭で子どもがテレロボの手振りでリモート受付・消毒案内」埼玉県立けやき特別支援学校

 小学5年生の児童2人が、2台のアバターロボット「OriHime」を使い、それぞれ文化祭の係活動を担当しました。これまでの文化祭では児童生徒は係を担当していませんでしたが、「受付をやってみたい」「顔を見られるのは恥ずかしいけれど、保護者と関わる仕事がしたい」という2人の思いを聞いた先生が、児童の活躍の場を増やし、保護者にも見てもらう機会を設けました。
 コロナ禍で保護者と直接接することが難しい状況であっても、アバターロボットを経由することで、コミュニケーションをとることが可能になります。結果、「色々な人を案内で着て楽しかった」「案内ができてうれしかった。沢山話しかけてもらえた」と、達成感や充実感を得ることができました。

■アバターロボットで学びもつながりも諦めない!

【授業参加】2事例

事例6「ZOOM での授業参加がテレロボ利用により子どもが積極的になり先生の負荷も軽減」千葉県立四街道特別支援学校

 授業参加の成功事例のひとつが、遠隔授業をアバターロボットに替えた実証実験です。
 自宅でオンライン授業を受けていた中学3年生が、これまで利用していた「Zoom」から、卓上型ロボット「kubi」とテレポ―トアプリ「Telepotalk」を使っての参加に切り替えました。これにより、例えば理科の実験でも、黒板や実験の様子などのシーンに応じてアバターロボットの視点を操作することができ、「自分で見たい角度から見られるのが便利で、楽しい」という声とともに、先生に頼む必要がないという生徒の解放感も伝わってきたそうです。また、先生も授業に専念でき、生徒が主体的に取り組む様子が見られたことを語っています。同校では、アバターロボットの活用は双方にメリットが大きいとして、今後も有効な活用法を検討していきます。

事例7「家族・学校で支える自宅からの授業参加(肢体不自由部門)」大阪府立光陽支援学校

 アバターロボットの活用は、肢体不自由部門の子どもたちにも有用です。
 大阪府立光陽支援学校では、人工呼吸器を常時使用している小学部5年生の児童が、学習発表会の練習にリモート参加をしました。
 360度回転するロボット「Telepii」を使い、家族の協力のもと、体育館で行われていた劇の練習に参加することができました。普段は週1回、担任の先生との1対1の訪問学習のみでしたが、他の児童の生徒の声が聞こえることで臨場感のある学習になり、いつもより意欲的に活動に取り組むことができました。
 実証実験では通信環境による遅延や、画面の小ささが課題となりました。今後は、これらの環境を整えて、保護者のサポートがあれば、本人の操作が困難であってもアバターロボットを有効的に活用することができます。

【交流】1事例

事例8「分教室でつながる同世代(前籍校以外)との友だちづくり(病弱部門)」大阪府立光陽支援学校

 アバターロボットを使えば、病気療養中の子どもでも、時間や距離を越えた交流を気軽に楽しむことができます。
 大阪府立光陽支援学校では、同世代との交流が少ない入院中の小学5年生の児童が、他の病院に設置された分教室の児童と交流し、アバターロボットを通じて、話したりゲームをしたりするといった体験を行いました。児童はすぐにアプリを使いこなし、「入院して初めて、友だちと一緒に勉強できた」と喜んでいました。
 一方、分教室の児童は初めて見るアバターロボットに興味津々で、普段は自己主張が苦手な子も積極的に発言するなど、いつもとは違う一面を見せていました。同校では、今後も「子どもたちの思いや願いを汲み取り、最適な支援方法を考えてきたい」としています。

【先生利用】1事例

事例9「日常利用、朝の登校時にテレロボの先生と元気に挨拶」秋田県立秋田きらり支援学校

 「日常で使って慣れること」を、児童生徒と先生側の両方に行ったのが、秋田県立秋田きらり支援学校の取り組みです。アバターロボットに親しみ、会話を楽しんでもらう目的で、「OriHime」と「kubi」を使って朝の挨拶を行いました。
 その際、児童から「無機質な見た目が怖い」という意見があったため、季節やイベントの装いなどで飾り付けをし、外観を親しみやすく見えるよう工夫を行いました。一方、先生側では、まず多くの先生に使ってもらうことから始めました。
 この時の工夫としては、詳しい先生に接続の設定からアプリの立ち上げまでを行ってもらい、「あとは話すだけ」の状態で、他の先生に手渡していったことです。「アバターロボットは日常的に使っていくことで、子どもたちの活動や新しい体験を広げるための便利なツールになる」と話しています。

【進学支援】2事例

事例10「進学希望校説明会を先生サポートにより病室からのテレロボでの参加」沖縄県立森川特別支援学校

 長期入院をしている中学3年生が、進学に向けた学校説明会を遠隔で参加した事例です。先生が希望先の学校へ「kubi」を持参し、生徒は病室からiPadで説明会に参加しました。
 その結果、他の生徒と同じように学校説明会を聞くことができ、気になっていた部活の様子も確認できました。
 こうした学校間の連携を行う際は、「相手の学校に迷惑をかけず、信頼を得ることが重要」です。今回は、アバターロボットを持ち込む学校に対して事前に申請を行い、撮影の際の注意事項等の確認を行いつつ手続きを進めていきました。また、生徒にも、事前に見たい内容を詳しく聞いておくことで、興味のある部活を見学でき、生徒の満足度も高かったとのことです。

事例11「通信制高校スクーリングでの遠隔授業単位取得を実現(地元教育委員会との連携事例)」京都市立桃陽総合支援学校

 長期入院する高校生の大きな課題として、「入院中に学習支援を受けられない生徒が全国に7割いる」という問題があります。そうした入院高校生の教育相談窓口としてのセンター的機能を担っている同校では、生徒と保護者、学校、病院をつなぐ「医教連携コーディネーター」を配置しています。

 今回の事例となった通信制高校に在籍する2年生の生徒は、京都市内の病院、退院後の自宅療養、再発での京都市外の病院と、3つの治療期間がありました。しかし、通信制高校での単位取得には、対面での指導となる面接指導(スクーリング)が必須でした。この生徒の場合は、対面で行うことが困難だったため、教育委員会が文部科学省に同時双方向型の配信授業形式で行うことを交渉し、コロナ禍という背景で特例が認められました。将来の夢として医師を志す生徒は、単位取得を励みに、勉強を続けています。

 今回の事例は、コロナ禍という状況と、教育委員会が弾力的対応を行ったことで認められた特例です。全国通信制高校での遠隔授業におけるスクーリングが認められたわけではありませんが、今後の展開が期待されます。生徒の保護者からは、「皆さんのおかげで、娘は闘病中でも進学・進級できることを励みに頑張っています。厳しい病気と闘う生徒が、娘と同じように学べるように切に願います」という感謝のメッセージが寄せられました。

■次回の成果発表会は2023年3月に開催します

 事例紹介後、参加者からの質問に答える質疑応答では、「アバターロボットごとのメリットとデメリットを知りたい」といった質問も飛び出し、教育現場におけるアバターロボッとの活用について、大きな関心が寄せられていることが感じられました。
 さらに、モデル校の11事例を受けて、京都女子大学教授の滝川国芳氏からの総評では「発表会には全国の特別支援学校の先生だけでなく、医療関係者、企業など多職種の方が多数参加してくれ、これもひとつの大きな成果」としたうえで、「子どものニーズに答えたいという教員の気持ちと専門性が相まって、今回の成功事例になっている」と話しました。

 また、事例のなかで「一緒に」という言葉が多く使われていたことを挙げ、「まさに、今日参加している先生も参加していない方々も一緒に考えてほしい。ICTを使えば、まさに新しい仕組みも活用できる。各地で行った色々な事例を積み上げていって、病気療養中の子どもたちの教育のサポートを制度化できるよう、一緒にやっていきたい」と、参加者に伝えました。

 今後の活動として、ニューメディア開発協会の林から、プロジェクトのもうひとつの柱であるメタバースの活用研究についての報告がありました。
 「ただ漠然とメタバースの空間をつくるのではなく、子どもたちや先生が、電子上のアバターを通して、学校自慢や宝物自慢を行える世界をつくり、そこで色々なコミュニケーションができる実証実験」の準備を進めています。
 12月以降、メタバースによる学校空間「学校島メタバース」をつくり、まずは学校自慢から始め、今後は、児童生徒の絵画や書道、工作物、音楽などをバーチャル上に展示する「宝物自慢」を行う予定です。さらに、リアルの展示会と連動し、アバターロボットを設置してロボット越しに見学できるようなメタバースの調査研究を行っていきます。これらの成果は、来年開催の発表会でご報告いたします。

学校島メタバースのイメージ

 最後に、ベネッセこども基金 事務局長の青木智宏が、「今回発表された事例は、先生方の工夫によって、プロジェクトの目的である“日常使い”として大変参考になる素晴らしい事例になった。こうした取り組みを、結果だけでなくプロセスから発信していきたい」と話しました。
 さらに、「子どもたち一人ひとりの特性をいかせる教育の土台をつくるための取り組みを、こうした成功事例を増やしながら皆さんと一緒につくっていきたい」と語り、発表会を締めくくりました。

 次回のオンライン活動発表会は、2023年3月を予定しています。病気や障がいを抱える子どもに日常的に関わられる方々、アバターロボットの教育現場での活用方法について学びを深めたい方など、子どもを取り巻く社会課題に関心をお持ちの方は、ぜひご参加ください。

 なお、今回の共同事業発表会のアーカイブ動画は、以下でご覧いただけます。

■アーカイブ動画 

2022年12月2日開催 ニューメディア開発協会×ベネッセこども基金 共同事業発表会vol2特別支援学校発表「心温まる、子ども目線でのアバターロボット実践成功事例」



■共同事業に関するお問い合わせ

一般財団法人ニューメディア開発協会 新情報技術企画グループ
担当 平出、林 NMDA-SJG@nmda.or.jp

※共同事業や今回の事例に関するご意見・ご質問等は、上記のニューメディア開発協会までお願いいたします。各学校へのお問い合わせはご遠慮ください。


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