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<児童福祉施設>社会的養護を担う施設とは

 社会的養護とは、さまざま事情があり、保護者の適切な養育を受けられないこどもを、公の責任の下で社会的に保護・養育し、困難を抱える家庭への支援を行う仕組みです。支援にあたっては、「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」を柱としています。
 社会的養護を担う施設は主に以下があります。

主な施設

乳児院

 家庭の様々な事情で家族と一緒に暮らすことができない主に1歳未満の乳児(必要に応じて小学校入学前まで)を養育する施設で、令和4年3月末時点で、全国に145か所あります。さまざまなケアが必要なこどもたちや保護者の支援とともに、今後は地域における保護が必要なこどもや家庭へのアプローチにも取り組む機能を担うことも求められています。

児童養護施設

 虐待を受けている児童などさまざまな理由で保護者と暮らすことに支障がある、もしくは保護者がいないなどの理由がある概ね1歳~18歳までの幼児・児童を養育する施設で、令和4年3月末時点で、全国に145か所あります。特に近年は虐待を受けた経験のある児童の割合が増えており、約7割にのぼると報告されています。また、退所後の家族も含めた支援、本人の将来に向けた自立の支援も重要です。

母子生活支援施設

 主に18歳未満の子どもを養育している母子家庭、または何らかの事情で離婚の届出ができないなど、母子家庭に準じる家庭の女性が、こどもと一緒に利用できる施設で、令和4年3月末時点で、全国に145か所あります。心身と生活を安定するための相談・援助を進めながら、自立を支援しています。なお、元夫や夫のDVなどから守るために、ホームページでは所在地を公開していない場合もあります。

心理治療施設

 家庭環境や学校における交友関係、その他環境上の理由により社会生活への適応が困難となるなどにより、心理的な問題を抱えるこどもの短期入所や通所を担う施設で、全国に53か所あります。以前は、情緒障害児短期治療施設という名称でした。

児童自立支援施設

 いわゆる不良行為を行う、もしくは行うおそれのある児童や、家庭環境などが理由で生活指導が必要な児童を養育する施設です。各都道府県に1か所以上設置されており、全国で58か所あります。

働くために必要な資格や資質

 「施設で暮らす」というと、寮のような集団生活をイメージするかもしれません。しかし、家庭以外で生活するこどもたちであっても、心身ともに健やかに成長するために、より家庭に近い養育環境(家庭的環境)で暮らす環境をつくることが求められています。特に児童養護施設では、地域小規模児童養護施設(グループホーム)や小規模グループケア(分園型)と呼ばれる地域の一軒家などを活用して4~6名で暮らす形態が増えてきています。
 そのため、まずは衣食住の支援や家事、保育園や学校への送り出し、近所の方との関わりなど、当たり前の日常生活を送れるようにするための支援を通して、こどもたちの気持ちによりそっていくことが必要とされます。
 また、このようなこどもたちの生活に関わる経験を経て、個別対応職員や家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員といった役割を担う専門職もいます。
 なお、社会的養護の施設の職員というと「住み込み」をイメージする方もいますが、一部の児童自立支援施設を除き、基本は交代制の仕事です。 
 働いている人の資格は、保育士や児童指導員、社会福祉士、精神保健福祉士、教員免許取得者などさまざまです。しかし、こどもたちにとっては、「何の資格を所持しているか」が重要なことではありません。むしろ資格取得のプロセスのなかで、常にこどもの最善の利益を考えこどもの権利をまもることができる倫理観、こどもたちの多様な状況を受けとめ共感的に接する姿勢、さまざま未来に開かれるこどもたちの可能性と選択肢を保障することができる視野の広さや柔軟性、働く自分自身の心身を健康な状態に保つことができるセルフコントロール力など、こどもたちの生活を支えるプロとしての基盤を身につけることが大切です。

採用試験について

 乳児院・児童養護施設・母子生活支援施設・心理治療施設は、多くは、社会福祉法人などが直接運営、もしくは自治体から委託を受け運営する民間施設です。児童自立支援施設は国や都道府県が運営するため、正規職員として働く場合は公務員採用試験の受験が必要になります。

就職に向けた3ステップ

<1>さまざまな施設を知る

 社会的養護に関する施設は、生活しているこどもたちのプライバシーを守る側面から、ホームページやSNSなどからの情報が得にくい場合もあります。そのため、まずは、合同説明会などを活用してまずはさまざまな施設について知ることがおすすめです。
 まずは、自治体が行う福祉施設の合同説明会などにも社会的養護関係の施設が出展している場合もありますので、こまめにチェックが必要です。社会的養護に特化した説明会としては、「NPO法人チャイボラ」が行っているオンライン見学フェアがおすすめです。

<2>施設の特徴や働き方をチェック

 社会的養護に関する多様な課題があるなか、地域において施設が担う役割や入所するこどもたちの状況によって、施設が力を入れていることは様々です。たとえば、児童養護施設の運営とともに里親支援を自治体の委託を受けて担っている法人、児童養護施設における措置延長や自立援助ホームの運営など18歳以降の支援にも力を入れている法人、大学や専門学校の進学に向けた学習支援やキャリア支援に力を入れている法人など、さまざな特徴があります。このような施設や法人の特徴をふまえ、自身が取り組みたい関心領域との重なりを確認していくことも大切です。
 合わせて、勤務体系やケアの形態などについてしっかり調べることが重要です。家庭と離れて暮らすこどもたちを支えていくので、交代制で宿直や夜勤などの勤務があることが基本ですが、断続勤務(朝勤務して昼間長い休憩があって夕方から勤務)などの特殊な勤務形態が存在する場合がありますので、確認が必要です。
 また、こどもたちが生活する人数の単位(小舎制・中舎制・大舎制と表現されます)や、就職して最初の勤務先が本園になるのか、本園から離れ地域の中の一軒家等になるのかなどについてもチェックが必要です。

<3>生活の場を実際に体感する

 最後に大事なのは、体験やボランティアなどで、実際に生活するこどもたちや働く職員さんと直接関わることです。施設によっては、採用試験のプロセスで1日~数日間の体験が組まれている場合があります。こどもたちの生活単位が小規模化することで、支援する職員のチームも小さくなりますので、施設や法人としてのフォロー体制などは、体験のなかでそれとなく現場で働く職員に確認をしてみるとよいかもしれません。
 またいわゆる「こどもやスタッフの雰囲気」と言ってしまうとそれまでのことではありますが、「雰囲気が良い」「雰囲気が悪い」と感じた場合に、その要因を紐解いてみることも大切です。たとえば、対応が難しいこどもに対してどのような体制でアプローチしているか、こどもの想いや意見を尊重するしくみや取り組みをどのように行っているか、などにその答えがあるかもしれません。

職員募集していなくてもあきらめない

社会的養護の施設については、定期的な職員募集を行っていない場合もあります。その場合もあきらめずにコンタクトをとってみることをお勧めします。まずはボランティアに参加するなかで自身を知ってもらい、採用枠ができたときに声をかけてもらったというケースもあります。職員採用の情報が少ない=離職する人が少ない隠れた「働きやすい施設」の場合もあります。


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