出生前検査(NIPT)に関して

 検査を受けてきたのでレポします。考えている方のお役に立てれば幸いです。

【どんな検査?/受けるべき?】

 原理としては、母体の cell free DNA を調べることで胎児の染色体の異常を予測するという検査です。妊娠 10 週以後に行う検査なのですが、

・10mL 程度の血液検査1回で済む。
・数日~1週間で結果が判明する。
・検査の精度もかなり高い(21 trisomy に関して感度・特異度ともに 98%以上)

 という特徴があり、お手軽に検査できてしまうため、自由診療で産婦人科医のいないような病院でも検査ができてしまいます。

 ですが、検査を受けるということは偽陽性や偽陰性に振り回される可能性があること、また結果が陽性と出たときに更に確定検査(羊水検査)に進み陽性となれば堕胎する覚悟があること、を受け入れる必要がありますので、安易な検査は禁物です。
 私はポケマム(レンタルエコー(1ヵ月20,000円)などで可愛らしくうごめく赤ちゃんを見てしまっていたため、かなり悩みました。妊娠は女性の身体の問題ですから、自分の身体の自己決定権を持つ妻の判断に任せましたが、妻は全く悩んでいない様子でした(自身に体力がないので育児は無理という判断、もちろんNIPT では判明しない疾患も多くありますが、分かる範囲で事前に対応できることはしたいという考えでした)。
 正直、命の選別ということに関して妻に判断を押し付けてしまったのではないかという罪悪感もありました。

【どこで受ける?/検査項目は?】

 いざ調べてみると、認可された施設では、検査前確率を上げるために検査を受ける条件を設けている(年齢制限など)ところが殆どで、初診ではカウンセリングを受けて検査は別日に敢えて設定しているところも多かったです。一方で認可外の施設では、特に制限は設けておらず、受診したらその日にカウンセリングも検査もできるところが多かったです。
 検査項目に関しても大きな違いがあります。認可施設では染色体の数の異常(トリソミー)をみています。特に検査前確率を高めるため、メジャーな 3つの染色体に絞っているところが多いようでした。
 また染色体の異常が分かるということは当然、性染色体についても分かるため、即ち NIPT では性別が分かるということになるのですが、これを公表すると恐らく産み分けをされる可能性もあることからか、倫理的な理由で公表していない施設しかありませんでした。

 一方で認可外の施設では、全てのトリソミーについて調べてみたり(検査前確率が下がるので偽陽性が増えそうですね)、性別も公表したり、更には染色体の数の異常ではなく微妙な異常(微細欠失など)についてオプション検査項目として謳っていたりしました。微細欠失などに関しては精度もそこまで高くないようであり、検査前確率の低さも考えると偽陽性に踊らされる可能性がグンと上がるでしょう。実際に米国産婦人科学会のガイドラインでは推奨されていませんでした。

 このような自由診療の行き過ぎた風潮に関して国も思うところがあるようで、今後は認可外の施設での検査には何らかの制限が課せられるように思います。

 我々は、性別による産み分けをするつもりはない意思を互いに確認し、かつ事前に性別が分かっていた方が色々と準備がしやすい点、また検査の性質などについては事前に調べていることからカウンセリングと検査日が別日に設定されるのでは非効率的だろうと判断したことなどより、認可外施設での検査を決定しました。
 検査を受ける時期に関しては、何となくあまり早すぎると cell free DNA 量が少なくて偽陰性に傾くのではないかという不安もあり、11週ぐらいにしてみました。逆に、検査が判明してから場合によっては確定検査(羊水検査)、そして堕胎の可能性もあるわけですから、あまり延ばしてもよいことはないだろうと判断しました。

【実際の流れ】

 妊娠11週、ヒロ NIPT クリニック(新宿)というところで、13万円のコース(メジャーなトリソミー3疾患+性染色体(性別の他、XO, XXY なども分かります))にしました。web 予約をして受診する流れなので待ち時間はありませんでした。
 自由診療は初めてなのでかなり不安でしたが、女性のドクターがとても丁寧に説明をしてくれました。オプショナルなコース(より検査前確率の低い、偽陽性の確率が上がってしまうだろう疾患も含めたよくばりセット)を基本的には推奨するようなスタンスではありましたが、こちらが医師であることもあってか、若しくは丁寧な感じのドクターだったためか、そこまでプッシュはありませんでした。
 思ったこととしては、どの検査コースにするかという点に関しては、インテリジェンスというかリテラシーが不足しているカップルが判断するのはかなり難しいだろうなということです。
 最後に、陽性と出た場合の確定検査のための費用(羊水検査の費用)に対して最大 20万円の補償を受けられる互助会入会費 3,000円を払い、合計 133,000円(税別)を支払いました。

【結果】

 検査の進捗はマイページで確認することができ、休日や夜間も随時更新されるのですが(恐らく 17時、21時、など決まった時刻に亢進されるように思いました)、正直、気が気ではありませんでした。普段患者さんはこういう思いをしているのですね・・・。

マイページで検査進捗を確認できる。

 結果は pdf でメールされます。3月16日に検査を受け、土日を挟みましたが4日で結果が返ってきました。大学入学試験などと違い、自分の努力が反映されるわけではないので、当然ながら手応えといったものもなく、本当に緊張しました。

大学入試の合格発表より緊張しました。

 私が先に結果を確認したので、気分が楽になった私は何を思ったのかシュークリームを2つ買って帰り、中身が🍓味なら女児、🍫味なら男児だよと妻にチョコ味のシュークリームを渡しました。妻は女児を希望していた(一姫二太郎派)ので、やや残念がっておりました。

 検査を受けるかどうか、いつ受けるか、どこで受けるか、認可外の場合どんな検査を受けるか、幾つかの高度な価値判断を求められます。少しでも参考になれば幸いです。
 私自身も正直、1人目が無事産まれていずれ2人目を妊娠するとなった場合、NIPT をまた受けるかどうかはかなり悩ましいところです。神様の領域ということで目を瞑り受け入れるのもありかもしれません。

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