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粗利が出ているのなら、組織を強化して「正比例の成長」を目指しなさい

粗利が期待値を超えているなら「採用」一択

あるスタートアップの社長がこんなことを言っていました。

「いまのビジネスモデルでも粗利は出ているのですが、もっといいモデルがありそうなんです。新規事業を模索しています」

私は彼にこんなアドバイスをしました。

1人あたりの粗利が期待値を超えているなら、どんどん採用して会社を成長させるべきです。新規事業など模索している場合じゃありません

シンプルな話です。

期待する粗利を超えるビジネスをすでにつくれているのであれば、あとは深く掘っていけばいいだけ。なのに、なぜ新しいビジネスを探しにいこうとしてしまうのでしょうか?

私には不思議に思えます。

組織づくりから逃げてはいけない

粗利が出ているのであれば、そこをとことん深く掘っていくことです。まずはひとつのビジネスで「勝ち切る」。そこが重要です。

ひとつのビジネスですら勝てていないのに、別の道を探ろうとするのは逃げているようにも思えます。

ビジネスを深く掘っていくためには「組織づくり」が必要になります。人を採用してコツコツやっていくのはけっこうめんどくさいことです。

だからつい「打ち手を増やす」方向にいってしまうのかもしれません。

事業を増やす。新たな施策をする。それは楽しいことですし、なにかやった気になります。そっちにいきたくなる。

でも、どう考えてもそのタイミングではありません。すでに儲かるビジネスができているのなら、思いっきり深く掘るべきです。

私たちは、上場するまで「研修だけ」を掘り進めていきました。そこで行けるところまで行ってから、クラウドや人材紹介など別の事業を始めました。

「指数関数的に伸びていく」という幻想

冒頭の社長は「いまやっているビジネスの完成度がそこまで高くない」と思っているのかもしれません。「成功するビジネスなら指数関数的に伸びていくはずだ」「思ったよりも市場の反応が悪いから、別の道があるはずだ」と思っているのかもしれません。

たしかに会社の成功ストーリーのなかには「ある日突然うまくいって、電話が鳴り止まない」といったインパクトあるエピソードがあったりします。もちろんそういうことも世の中にはあるのかもしれません。

しかし、そんなことは稀です。

多くのビジネスは少しずつ需要が生まれていって、ジワジワと広がっていく。どこかのタイミングで急に反応がよくなることはあるかもしれませんが、もしあったとしてもかなり先の話です。

粗利が出ている、すでに儲かっている、ということは、ビジネスモデルとしてはもう勝てる状態になっています。

それをまず「正比例」で伸ばしていくことを目指すべきです。

世の中に需要があるのに、なぜわざわざ他を掘ろうとするのでしょうか?

計算上「勝てる」とわかっているのなら、ごちゃごちゃ考えずにまっすぐ走ればいいのです。いったいなにをこねくり回しているのか。

「シンプルに考えなさい」という話なのです。

ひとつの武器で、圧倒的に勝て

たしかに「ひとつの事業に偏りすぎるな」という教えもあります。

ひとつがダメになっても大丈夫なように、いくつか事業を走らせておくべきだということです。

ただそれはもう少し大きな会社になってからの話です。まだまだ先の話。

まずは一点突破で深く深く掘る。狭い領域において圧倒的に勝つ。事業を増やすのは、それをやってからです。

ひとつの武器でとことん戦って、圧倒的に勝ってから、武器は増やしたほうがいい。きちんと勝てないうちに武器を増やすと、組織も育たないし、武器の質も低くなります。

この「ひとつの武器でとことん戦って、圧倒的に勝つ」という感覚が、みんなすごく乏しいと感じます。組織も弱いのに横に手を広げてリソースだけ食ってしまう。

この罠にハマっている人はけっこう多いのです。

目の前に何の障害物もない道路があって、いつでも全力でアクセルを踏み込める状況なのに「あっち行こうか、こっち行こうか」と迷っている場合ではないのです。

「労働集約で勝てる組織」は最強である

組織を強くするよりも、「戦術」で勝とうとする経営者もいます。

しかし組織づくりから逃げるとチャンスを逃がすことになります。組織を大きくすることから逃げてはいけないのです。

「なるべく労働集約にしたくない」と言う経営者もいます。

しかし「労働集約で強い部隊を作って勝てている状態」は模倣不可能です。

最近は特に「労働集約」という言葉があまりいい文脈で使われません。仕組みによって一発でうまくいくほうが偉い、といった風潮がある。

でもそれは大手資本が来たら一瞬で負けてしまいます。

アイデアだけで勝っている状態だと、大手資本に一気に飲み込まれる可能性があります。よっぽどマーケットシェアを取り切らないと、大手資本に一気に食われてしまう。

でも組織との掛け合わせで勝ってきた状態には、大手資本は入って来られないのです。

これから私たちの「識学」によく似たビジネスをやろうと思っても、なかなか難しいはずです。1人とか2人で1億2億の売上をつくることはできるかもしれません。

でも、私たちのように「部隊化」してやっていくのは不可能です。組織は一朝一夕ではマネできないし、追いつけないのです。

この「労働集約」のめんどくさい作業を、しっかり積み上げていくこと。それが競争優位性を高め、参入障壁を高めることにもつながります。

そこから目を背けてはいけないのです。


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