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スタンダード(基準)の設定

先日、じほう社「Pharmacy news break」に取材をして頂いた記事が色々とご好評だったので少しその内容について触れたいと思います。

登録していない方は内容はわからないと思いますが、薬局薬剤師の人事評価について取材を受け、色々とお話をさせて頂きました。
数年前から人事評価制度の構築は相談の多い項目であり、薬剤師が充足してきたと言われる最近、また相談が増えたように感じます。
また2020年4月(中小企業は2021年4月)からの「同一労働・同一賃金」の始まりに対し、説明・納得のいく環境整備というところからも重要性が増しているように感じます。

薬局薬剤師の働き方に関する記事は、2020年8月号の日経ドラッグインフォメーション「コロナで派遣切り、薬剤師の仕事以外でバイトも」にも取材を頂きご協力をさせて頂きましたが、不思議と知り合いの経営者からは評判がよく、その反面現場の方からは非難が出ていたのではないのかなっと嬉しくも悲しくもというところです。

私からお伝えしたいことは、働き方もそうですが、薬局作りも大きく時代の流れと共に変化が求められています。その中で重要になるのが「スタンダード(基準)」がどこにあるかだということだと思っています。今回は「給与の視点」から見てみたいと思います。

「空白の2年間」という薬剤師バブル

薬学部の6年制移行に伴い、卒業生がほとんど出ない2年間を「空白の2年」と表現することがあります。2010年~2011年の話です。時を同じくして、薬局の店舗数は急激な伸びを記録します。理由としては、医療機関の新規開局や分業が進んだこともそうですが、ドラッグストアが調剤に取り組み始めたことも挙げられるのではないでしょうか。

空白の2年

薬局数の推移

このパラドックスな関係が、その後数年間続く「薬剤師不足」そして「薬剤師バブル」の要因となります。ドラッグストアでは出店と薬剤師の確保のアンバランスから「新卒の高額採用」という戦略をとったことを記憶しています。空白の2年を超え、安定的に新薬剤師が市場に登場すると共に、薬局数の伸びは徐々に鈍化、数年前から約59,000軒という数値を維持しています。

それに対して薬剤師数はどうなのかというと

薬剤師数の推移

あくまでも届け出上で正確な人数がどれだけ追うことができているのか、わかりませんが、出店数が鈍化する中でも薬局勤務薬剤師は増加を維持しています。これは単純に薬剤師の供給過多の時代に向かっているといえるのではないでしょうか。

「需要」と「供給」から見る標準(スタンダード)とは

すこし給与について話をしますが、薬剤師という仕事に対する給与スタンダードはどこにあるのでしょうか。一般的には業種・業態によって大体の相場が決まっています。伸び率なんかも同様だと思います。
給与が高いところは人気もあり、倍率が上がるというのは世の中の相場です。
「薬局薬剤師」は私が見てきた10数年でも、これほど給与相場が変動する非常に稀有な業態だと思います。
あくまでも実際の採用支援などを通してきた肌感覚ですが、「空白の2年」以降の数年は

・新卒薬剤師の初任給は480~520万円 (ドラッグストアは+α)
・30歳前後の管理薬剤師は550~600万円
・薬剤師不足のエリアでは、700万円~800万円
 (よく、役員待遇という広告を見たものです)

薬局数の鈍化に伴い、M&Aがちょっとしたブームになったころ(2017年)くらいから大手企業を中心に新卒薬剤師の給与提示が大きく下がったイメージがあります。同様に、人材の確保・充足化に伴い転職に伴う給与提示も下がりました。そのころのイメージは

・新卒薬剤師の初任給は420~450万円 (ドラッグストアは+α)
・30歳前後の管理薬剤師は500~520万円
・薬剤師不足のエリアでは、600万円~650万円
 ※ただし、奨学金返済支援制度が一般的となる

こんな感じでしょうか。このころはよく2016~2018年ごろまでは大学周りをしていても「給料が安い」、「奨学金返済をしない所は必要ない」など、かなり強気の対応をされていたのを記憶しています。何よりも学生が「奨学金返済制度」「家賃補助」というキーワードをよく口にしていていました。

薬局数が停滞に入り、大手企業を中心に新卒確保の充足、主要都市の中核薬局でも採用が回り始めた2019年~2020年そしてコロナ期の今ですが、

・新卒薬剤師の初任給390万円~420万円 
・30歳前後の薬剤師480万円~500万円
 (地域支援体制加算の要件のため、転職相場として管理はなし)
・薬剤師不足エリアでは530万円~560万円
※大手企業では返済支援制度を辞めるとこもあり

となります。全ての提示に対して言えますが30歳前後の薬剤師は、「生え抜き」「転職」で給与が変わります。これまでは、転職組と生え抜き組で給与が大きく違うという問題も多くありました。また大体の相場を動かしているのは、紹介会社による給与のつり上げも要因となっています。

また、採用力が「ある」「ない」が大きく給与相場を決定する要因であるのも事実です。「魅力があれば人が取れる」「魅力がなければお金で取る」これも事実だと思います。
お伝えしたいのは、薬剤師の需給に合わせて大きく給与相場が変わっているということです。

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需給バランスは給与を決めるのに大きな影響を与えます。特に独占業務を保持している「薬剤師」という資格であればなおさらです。これまで医薬分業の進展により市場の拡大がしてきましたが、飽和期を迎えた中、「需要」と「供給」が一致、それでも新卒薬剤師は毎年1万人近く誕生します。今後、供給過多になるという懸念は否めません。

大きく給与相場が変動する要因は「需給バランス」です。ではどこが適正なのか、これに正解はないと思いますが。この設定を間違うと、これからレベルアップしかない、若い世代の下克上時代が始まります。各々でそんなことを少しでもイメージしてもらえると良いかなと思います。

厚生労働省では文部科学省と連携し「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を現在開催していることをご存じでしょうか。その中で、薬剤師の需給調査も行われる予定です。そもそも論として、いまこの検討会を開く意味を考える必要があると思います。

まとめ

長くなってしまったので、本来の「じゃあどうしたら良いのか」までいつも通り辿りつけませんでしたが、何においても「いい時代」「安定の時代」「落ち着きの時代」があるのは事実です。日々時代が流れる中、「過去のよい時代」に問われることは未来を生きていく上で非常に重い足かせとなります。

時代の流れを知ることはこの業界においては非常に重要だと思います。もちろん、時代を強行突破できる猛者もいます。でも、全員が全員そうではないのですよね。これから来る時代にどう向かっていくのか、どう対応していくのか考え方も働き方も重要になります。

ではこんな時代のスタンダード(標準)はどこにあるのか。
ということを、また次回書いてみたいと思います。
長文にお付き合い頂き有難うございます。

※今回の使用したデータ等はあくまでも実際に活動をしている中での感覚であり、正確な統計ではありません。

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