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認定薬局制度の始まり

「2021年8月1日」薬局認定制度が始まる!

すでにご存じの方もっと言いたいところですが、なかなか行政関係の動き把握していない現場の方も多いのではないでしょうか。2021年1月22日に薬機法改正に伴う省令の公布がされましたが、業界紙等で自ら情報を取っている方でないと、その詳細を把握していないというのが現状ではないでしょうか。

新しい制度が始まる際には、決まって「パブリックコメント」と呼ばれる意見公募が行われます。「意見公募手続制度」というもので、私たち一般の人に開かれた唯一の主張の機会となります。薬機法改正に伴うパブリックコメントはいくつかありますが、「薬局認定制度」に関わる意見数は「84件」と非常に少ないというのが正直な感想です。なぜならば、そのうち6件は私が送った意見だからです。
コンプライアンス・ガバナンスに関するパブリックコメントは「304件」となり、こちらはチェーン薬局の方々だと思いますが、関心の高さを感じます。

省令の詳細については、セミナーなどを色々と控えているため、記載はしませんが、今回の内容について皆さんはどのように捉えましたでしょうか。今回はそのことについて書いてみたいと思います。

何のための制度改定なのでしょうか?

通知が出たことで弊社への問い合わせや、SNSなどを通して皆さんの意見を機会が増えました。薬機法改正は前回の薬機法制定時に定められた5年後の見直しという附帯事項に基づき、厚生労働省の医薬品制度等部会で1年近く議論されてきた項目です。その間には「患者のための薬局ビジョン」が発表され、2016年には健康サポート薬局という仕組みが出来ました。いま薬局業界に何が起きているのか、これらの一連の流れを読み込んでいくと、薬局の置かれている状況がわかります。

その中で、新たに法律として制定される「薬局認定制度」は、これまで法律上は1つであった薬局を新たに「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」という2つの認定制度を作り、患者自身が機能に合わせた薬局を選べるための仕組みと言われています。
※健康サポート薬局は厚生労働省令にて定められたものであり、法律とは別です。

よく、「調剤報酬はどうなるのか」という話も出ますが、厳密にはここで言われている薬局は「薬機法」における薬局を指しています。皆さんのいう「調剤報酬」は健康保険法に定める健康保険事業に関するルールであり、今回の薬局認定制度とは分けて考えなくてはいけません。
もちろん、国の示す「患者のための薬局ビジョン」の達成のために、現行の調剤報酬の算定要件をこれらの制度と結び付けていくことは考えれますが、一旦整理をするためには分けて考える必要があります。
そうしなくては、薬局はいわゆる「処方箋薬局」から脱却することはできません。

現在、約59,500軒の薬局、18万人の薬剤師が薬局で働いています。昨今の医薬分業に関する是非論はありますが、それらの外部からの意見に対して、皆さんはどうとらえていますでしょうか。昨年からは「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が何度も開かれ、これからの薬剤師のあるべき像、教育について議論がされています。なかなか興味深い内容で、私のパートナー先の企業では、みなさんに議事録を読んでもらっています。(お時間ある方は是非こちらを)

調剤報酬は『下りのエスカレーター』

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「調剤報酬は『下りのエスカレーター』」これは、もう5年以上前に知り合いのコンサルの方が言っていた言葉で、なんだか共感しよく使わせて頂いています。医療費が増えていること、診療報酬との兼ね合いから、調剤報酬引き下げに向けた圧力があることは皆さん既知のことだと思います。確かに毎回の改定では、「評価」(報酬が上がる)項目もありますが、「適正化」(報酬が下がる)項目の方が多いのではないでしょうか。また2年に1度薬価改定で必然的に売り上げは下がります。要はなにもしなくは、売上は落ちていくということです。
小さいころ、下りのエスカレータを駆け上がろうと試みた方も多いのではないでしょうか(危険なのでやめましょう)。下に下にと進む中、ゆっくりとしたペースでは、現状維持が精いっぱいです。上まで駆け上がるにはいつも以上の馬力と勢いが必要です。
多くの企業が地域連携薬局を目指していると思いますが、要件にあげられた「報告書の実績」「在宅業務の実績」などについて賛否がでている状況だと思います。在宅については、たしか2014年度改定から基準調剤加算の要件として組み込まれ、6年以上たちます。本当にこの要件数が、「在宅に取り組んでいる薬局」という担保になるのかどうかは、本気で取り組んでいる薬局からすると、どうなのでしょうか。。。
要件が厳しいなど、ハードルを引き下げたいような意見も多く聞こえてきますが、それになんの意味があるのかを改めて考えていく必要があると思っています。

出来ないを辞めないと、変わらない

当然ながらルールは変わらないので、環境や自分を変えなくてはいけません。苦手なことにもチャレンジをしなくてはいけません。今回の認定制度は「薬局」「地域連携」「専門医療機関連携」を明確にすることであり、通常の薬局よりも付加価値があることを定めたと言えます。対物から対人業務への移行が進められる中、調剤報酬もあるべき姿を作るための報酬へと変わってきます。企業の生き残り方はそれぞれではありますが、与えられた環境の中で模索をして行く必要があります。すべてがすべて今回の認定薬局になる必要もないと思います。ただ大事なことは、薬局の多機能化が求められる中、従来とは運営の仕方が変わってくるということです。「地域支援」には多職種連携、在宅医療は必須です。1人の人間には限界があり、出来ることが限られます。だからこそそれらに取り組む薬局に評価がつくのだと思います。
「こんなのは無理だ」と思うのか、「一人では無理だから人を増やそう」「増員は利益が減るならば、補填する為に売り上げを増やす何かをしよう」これがやっぱりビジネスの根幹なんだと思います。
制度や報酬とは別にすでに薬局機能は多角化しているのが現実だと思います。そのようなルールにどのように対応をするのか、またチャレンジをするのか。
古き良きは大事だけど、それだけでは生き残っていけません。大事にしながらも「いま」を生きる方法を探していく。認定薬局制度が今後どのようになるかはわかりません。
普及するかしないかは業界の取り組み次第。ただし、健サポ同様に形骸化するならば、国が目指す2025年地域包括ケアの図から薬局が消えるのかもしれないのではないでしょうか。

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