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オンライン資格確認を考える②

前回に引き続きオンライン資格確認についてまとめてみたいと思います。振り返りは「オンライン資格確認を考える①」をご参照ください。

事務作業の効率化は「受付」のことではない!?

オンライン資格確認によってどんなメリットがあるでしょうか。ポータルサイトや厚生労働省による説明のビデオを見ていると「受付事務作業」の軽減がピックアップされています。また資格違いによる返戻などの作業の軽減です。前回の記事では「オンライン資格確認」という名のもとにPHRの構築という大きな絵が描かれていることをご説明しました。「受付業務」を簡易にするためだけに、国家プロジェクトとしてオンライン化を進めるわけではありません。その背景には「レセプト請求業務」すなわち支払基金における事務作業の効率化が潜んでいます。

支払基金改革とは

少し背景を説明すると、1991年からレセプトの電子化に取組み、2001年以降医療機関が希望すれば電子レセプト請求ができるようになりました。2002年からはコンピュータ画面による審査が始まりました。2006年からはオンライン請求が始まり2011年度にはオンライン請求が原則義務化され、今日では98.5%が電子化されており、全国統一的なコンピュータチェックが掛けられています。

しかしながら、コンピュータチェックが可能になったことが各都道府県支部において独自にそれまでの審査結果を踏まえたチェックルールを設定することにつながり、支部間の審査結果の不合理な差異の一因になってしまいました。2017年7月には規制改革会議での議論を踏まえ、厚生労働省とともに「支払基金業務効率化・高度化計画」、2018年3月には「審査支払機関改革における支払基金での今後の取組」を策定し、支払基金改革に取り組んでいます。

①審査プロセスの効率化・高度化のための新しい審査支払システムの開発
② 審査基準の統一化に向けたコンピュータチェックルールの整備等
③ 支部の廃止等組織の見直し

詳しくは社会保険診療報酬支払基金のHPを見て頂くと良いと思います。

色々と改革が行われているようですが、議論の資料等々を見ていると、一番大きな問題は「人件費」「物件費」などの高コスト体制に問題があり、改善を求められているということのようです。

(2017年当時)年間約800億円の経費が支払基金運営にかかっています。元を正せば出元は社会保険料です。こうした高コスト体制の改善の効率化が求められています。

無題1

オンライン資格確認で審査業務にもICT化

上記の通り、審査請求業務には膨大なお金が費やされています。医療情報を集約化することでアナログゆえにかかっていた人件費も節減できます。色々なものがAI化されている時代です。突合や縦覧審査への導入も今後検討されてくると考えられます。薬剤情報の閲覧は処方する医療機関でも行われますので、重複投薬も未然に回避することができ、大きな医療費の削減にもつながるのではないでしょうか。

一見すると薬局にはあまりメリット・デメリットが無いように感じるオンライン資格確認制度ですが、第1回で記載したような背景、そして社会保険制度を維持する為に必要な審査業務などの効率化に大きく関係のする制度が始まると言えます。

今回のまとめ

前回はオンライン資格確認の概要、そしてその背景にある大きなビジョンについて記載をしました。今回は、内面的な審査請求業務である支払基金改革について記載をしてみました。厚労省や業界で行われているオンライン資格確認の説明は表面的な制度しか行われていないように感じます。その背景にはマイナンバーによる個人情報の統一・把握というナイーブな一面、そしてこの後③で説明をする予定ですが、この資格確認制度のビジョンに対する医療業界の抵抗があるからゆえに、そうせざるを得ないという印象を受けます。医療・薬局業界が大きな変化を求められていますが、薬局以外にも変革が求められています。その多くは制度的なもの、アナログからデジタルへの転換です。すでに一般社会では色々なことがデジタル化へ動いています。そんな背景から、これからの医療がどのように変わっていくのかを次の記事ではまとめてみたいと思います。

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