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10: 逃げられない国の住人たち A


加藤隆弘(かとう・ たかひろ)
九州大学大学院医学研究院精神病態医学 准教授
(分子細胞研究室・グループ長)
九州大学病院 気分障害ひきこもり外来・主宰
医学博士・精神分析家

『みんなのひきこもり』(木立の文庫, 2020年)
『メンタルヘルスファーストエイド』(編著: 創元社, 2021年)
『北山理論の発見』(共著: 創元社, 2015年)

いま私は、木立の文庫で刊行予定の原稿を執筆中です。
このnote連載が土台となっています。
題して『逃げるが勝ちの心理学――ポジティブにひきこもるための処方箋』

前著『みんなのひきこもり』で試みた趣向を踏襲して、
巻頭で「にげられない」シーンのバリエーションをお示しします。

今回はそのスタート回となります!

☆『みんなのひきこもり』に引き続いて
 おがわさとしさん〔京都精華大学マンガ学部教授〕が
 私の原稿を読み込んで「ひとコマ漫画」として描いて下さっています!!

A君は中学三年生になったところ

〇A君は元来、運動が苦手でしたが、小学時代の友人に誘われ、しぶしぶ野球部に入部しました。一年生の時のクラス担任が野球部の顧問を担当していたことも、入部の決め手になりました。

〇練習してもいつまでも腕が上がらないA君に対して、顧問教師は厳しくも暖かさを感じさせる言葉を、折に触れかけてくれました。A君は、そのまま腕は上がらず、万年補欠で中三の春を迎えました。途中逃げたくなることもありましたが、いまだに球拾い係です。それでも、A君は『努力は必ず報われる』という顧問教師の言葉を信じて、辞めずにいます。

――どうしてA君は3年間、逃げずに、
  万年補欠として部活を続けたのでしょう?


みなさんの想像の羽を羽ばたかせて、
逃げられないA君の“こころの事情”を考えてみてください!


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